サージェント・ペッパーズに教えてもらったアルバムというもの
さて、そんなわけで中学1年の秋(昭和47年、1972年)から、一気にビートルズにのめり込み始め、レコードを買い始めたのでした。
このとき、最初にどのアルバムを買うのかは、かなり悩みました。中学生なりにいろいろ調べた挙げ句、最終的にサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド、マジカル・ミステリー・ツアー、アビー・ロードあたりで悩んだのですが、結局レコード店の店頭でジャケットを眺めて、最初に選んだのはサージェント・ペパーズだったのです。
まあいずれ全部買ってやるとは意気込んでいたのですが、最初にこれを選んだのは、結局ジャケットのアートワークが一番気に入ったというか、ちょっと不思議なものを感じたというだけの理由だったと思います。
こうしてビートルズ最初の1枚にこれを選んでしまったのですよね。言わずと知れた、「コンセプトアルバムの金字塔」と言われるLPレコードだったのです。
つまり、わたしは最初の最初から、ビートルズのコンセプトアルバムの洗礼を受けてしまったのです。初めて聞いたときは、ラジオでほとんどかからない曲にも良い曲がいっぱいあるんだなあという感想くらいだったのですが、何回も繰り返し聞いているうちに、アルバム全体を通した流れみたいなものを感じるようになりました。曲がつながって流れていったり、最初のメロディがちょっと変わってリプライズとして繰り返して(これも結構新鮮な構成でした)、そこでどーんと終わるのかと思ったら、最後にア・デイ・イン・ザ・ライフみたいな摩訶不思議な曲で余韻を残して、全部終わったと思ったら、いたずらみたいな音が飛びだしてきて、なんか鼻をつままれたような感じで終わるとか、アルバムを通して聴くということの面白さに気づいてしまったというか、すり込まれた感じがあるのです。
今のようにストリーミング全盛となった時代にあっても、何だか「アルバム」という単位にこだわってしまうことの原点が、まさにこのサージェント・ペパーズなのだと思うのです。
そしてこれ以降、熱に浮かされたようにビートルズのLPを買い続けるのですが、 その間全く他の音楽を聴かなかったわけではありません。ラジオなどで洋楽ヒットチャートとか聞きながら、シカゴ、エルトン・ジョン、カーペンターズ、それにビートルズメンバーのソロ曲は結構耳に入っていたんです。でも、それらのレコード買うのは、ビートルズを揃えてから…と頑なにビートルズだけを買い続けていたのでした。
こうして、ビートルズのオフィシャルアルバム13作のうち、11作まで買いそろえ、コンプリートまであと2枚、残すは、フォー・セールと、イエロー・サブマリンだけという状態になったときのことです。確か中学3年の夏前くらいの事だったと思います。同級生が貸してくれたあるアルバムに激しいショックを受けてしまったのでした。このアルバムを聴いたときの衝撃は、ひょっとするとあの「ヘイ柔道」のときよりさらに激しかったのかもしれません。何せ、そのとたんに、あれだけ心血注いだビートルズのアルバムをコンプリートすることがどうでも良くなってしまったのですから。
ここまでわたしの音楽趣味をねじ曲げてしまったそのアルバムとは、これまたイギリスのバンドのものでした。これがプログレとの最初のコンタクトだったのです。
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