「商標」って何?

LDL4月の定例会で
「起業の様々な形を考えドリブンする」辻榮パートナーから「商標」の話が出ました。
地名入りの商標は個人では取得できないが自治体ならば取得できるとか、若者が頑張って商品を作ったが農協に商標を抑えられて不幸になった話など、木下所長と色々とやりとりされていました。
言葉としてぼんやりとは知っているものの、ぼんやりではプロジェクトに絡むのは難しくなるので、いいきっかけだと思い調べてみました。
わたしは自分の事業でダリアに関わっているので、ダリアと商標についても調べてみました。

1、「商標」とは

まずは特許庁のホームページから見ていきます。

商標とは
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。

私たちは、商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」を一つの目印として選んでいます。そして、事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。商標は、「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っています。

このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。(知的財産権の中のひとつ!)
商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。
また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができるようになりました。

商標制度はこの商標を保護することを定めて、その商標に対し、
・それが付された商品やサービスの出所を表示する機能
・品質を保証する機能
・広告機能

を持たせることにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、
・産業の発達への寄与
・需要者の利益を保護

を目的とした制度とのこと。

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ダリアの関連は後の項目で書きますが、「NAMAHAGEダリア」(秋田県)「はなわのダリア」(福島県塙町)はダリアの出所品質の保証が示されている分かりやすい例だと思います。

2、登録できない商標がある

この商標を保護するためにはまず商標登録が必要になりますが、登録できない事項が存在します。
所長とパートナーのやり取りで出た地名入りの商標登録がNGだという話は、以下の項目に該当するものと思います。
商標法 
第二章 商標登録及び商標登録出願
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
か、
六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標
※ちなみに「地方公共団体」とは都道府県、市町村のことを指します。

ただこの第三条には例外があり、
第二項 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。
とあります。
先に記載した福島県塙町の「はなわのダリア」は地方公共団体である塙町が出願して認められています。
メジャーな名称で知名度を高めたり、特産品として保護を目的とする場合には地方公共団体である都道府県や市町村に協力してもらうのはひとつの方法のようです。

3、地域団体商標制度とは

では地方公共団体以外は利用できないのか。
実は地域の産品等について事業者の信用の維持を図り、「地域ブランド」の保護による地域経済の活性化を目的として、
「地域団体商標制度」という制度が2006年4月1日に導入されました。
「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品(サービス)の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和する制度です。
ちなみに地域団体商標として登録できるのは、以下の構成からなるものです。

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次に該当の地域団体ですが、「地域に根ざした団体の出願であること」が条件で
1)事業協同組合等の特別の法律により設立された組合
 ア)法人格を有する
 イ)当該特別の法律に構成員資格者の加入の自由が担保されている 例) 農業協同組合、漁業協同組合 等
2)商工会
3)商工会議所 ※商工会と商工会議所の違いについてはこちらを参照
4)NPO法人
5)これらに相当する外国の法人
6)地域未来投資促進法において定める要件を満たす一般社団法人

となっております。

そして、
・その団体構成員に使用させる商標であること。
・地域の名称と商品(サービス)に関連性があること。
・出願団体又はその構成員の使用により、一定の地理的範囲の需要者(最終消費者又は取引事業者)に知られていることが客観的事実(販売数量、新聞報道など)によって証明できること。
(ざっくりと「ある程度有名」ということ)
が登録の条件です。
「鬼怒川温泉」鬼怒川・川治温泉旅館協同組合
「嬬恋高原キャベツ」嬬恋村農業協同組合

などが全国的にも分かりやすい例です。

ということは私が個人で「小鹿野ダリア」や「両神ダリア」「秩父ダリア」とかの登録はできないってことですね。
また、小鹿野町で行政や飲食店や農協や生産者や地域おこし協力隊が一丸となって取り組んでいる「秩父黄金かぼす」は、誰か一人が抜け駆けして商標登録申請してもダメってことだ。
ちなみに「黄金かぼす」で商標登録検索をすると、「竹田黄金かぼす」を「一般社団法人農村商社わかば」が「竹田市産のかぼす・かぼすの苗木」に対して取得していますね。
さらに余談ですが、「小鹿野こいし」(オガノコイシ)というお菓子は、八宮松雪堂の事業主である八宮さん個人が「埼玉県小鹿野町で生産された菓子・パン」「埼玉県小鹿野町で販売される菓子・パン」に対して取得されています。
詳細のデータはありませんが「こいし」という言葉自体に、他の権利を阻害する要因が無いとの判断ではないかと思います。
※「はなわのダリア」は「花輪のダリア」と誤認されるのではないかという理由で登録時にアクシデントがあったみたいです。

4、料金や商標登録手続きは?

料金は
出願料:3,400円+(8,600円✖︎区分数)
登録料:28,200円✖︎区分数(10年分一括納付)
※書面で提出した場合の電子化手数料:1,200円+(700円×書面のページ数)
となっており、区分はこちらのサイトの1類〜45類のどれに該当するのか確認します。
オンライン手続きしないと電子化の手数料がかかるというのは、さすが特許庁といったところでしょうか。
すぐに検索できないと商標登録のバッティングしたりとかで、不便でしょうがないでしょうから。

仮に私が自分の商標でダリアの球根や切り花を販売するなら31類の1区分
出願料12,000円+登録料28,200円=40,200円
ダリアの球根をミキサーにかけて飲料にして販売する場合32類
ダリアの球根を粉末にして食用パウダーとして販売すると30類
の合計3区分となり
出願料29,200円+登録料84,600円=113,800円
という計算になります。(球根飲料は美味しくなさそうですがw)

ちなみに「はなわのダリア」は31類の1区分
「鬼怒川温泉」は43類、44類の2区分
での登録になっています。
手続きの流れはこちらのサイトをご参照ください。

5、ダリアと商標

ではダリアに絡む商標を見ていきます。
商標検索は以下のサイトから検索できます。
簡易検索の検索項目の「商標」にチャックを入れてからキーワードなどを入れて下さい。

キーワード「ダリア」で検索すると、株式会社の登録が多い中、個人や自治体の登録がちらほら見つけられます。
あと、秋田のNAMAHAGEダリアはダリアではなく「NAMAHAGE」で商標を取得されています。
はなわのダリア:塙町
31類 ダリアの苗,ダリアの苗木,ダリアの花,ダリアのドライフラワー,ダリアの種子,ダリアの球根

ダリアコーヒー:中村 梓
30類 茶,コーヒー,コーヒー飲料,代用コーヒー,ココア,焙煎したコーヒー豆,ミルクコーヒー,ココア飲料,ミルク入りココア,菓子,コーヒーを使用した菓子,パン,コーヒーを使用したパン,コーヒー豆

花火ダリア:大仙市
31類 ダリアの花,ダリアの園芸用球根,ダリアの園芸用種子,ダリアの農産用球根,ダリアの農産用種子,ダリアの苗,ダリアのドライフラワー

ダリア物語:林 真理
30類 食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),ぜんざい,ぜんざいのもと,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,果糖,麦芽糖,はちみつ,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類

ダリアジェンヌ:中村 梓
3類 せっけん類,化粧せっけん,シャンプー,ハンドソープ,ボディーソープ,歯磨き,練り歯磨き,化粧品,香水類,バスオイル,バスソルト,入浴剤(医療用のものを除く。),香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛
30類 茶,コーヒー,代用コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ごま塩,食塩,すりごま,香辛料,コーヒー豆
31類 生花の花輪,野菜(「茶の葉」を除く。),食用生花,茶の葉,果実,種子類,園芸用球根,農産用球根,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽

おひさまダリア:雪印種苗株式会社
31類 ダリアの種子,ダリアの球根,ダリアを使用したドライフラワー,ダリアの苗,ダリアの花

NAMAHAGE:秋田県
31類 ダリアの花,ダリアの苗,ダリアの球根,ダリアのドライフラワー

「おひさまダリア」「ダリアジェンヌ」は株式会社が商標登録されていますが、
「花火ダリア」「はなわのダリア」「NAMAHAGE」は地方公共団体で商標登録しており、ブランド化のいち手段として用いられています。

少し掘り下げると、秋田県と秋田県花きイノベーション推進協議会が平成27年3月に出した「秋田県花き振興方針」を見てみると、「JA全農あきた」の伸びている品目にダリアが入っており、需要の多い品目を伸ばす取り組みの重点5品目の中にも入っています。
また、話題性の高いオリジナル品種開発と迅速な普及拡大を行うために、
「NAMAHAGEダリア」のラインナップ拡大
NAMAHAGEダリアの大田市場における総選挙、実需者による選考会の開催の実施により、選考・評価・認定の迅速化
生産者へのNAMAHAGEダリアの無償苗の提供
を行っています。
この無償苗の提供秋田県花き種苗センターが行っており、注文するには最寄りのJAを通じて、さらに供給前に花き種苗センター・JAと「栽培に関する覚書」の締結が必要になります。
※この「栽培に関する覚書」に書かれている内容が、農協にのみ有利な事例があ り、良い品種を作った若い生産者の不幸話になります。(ダリアではありません)
書かれている内容をちゃんと読める力も生産者には必要となりますね。


県という規模になると、普及拡大のために多くの利権者が絡む訳ですね。
(NAMAHAGEダリアの事例だと県、JA全農・農協、生産者団体、大田花き)
大規模生産による低コスト化。
ここが所長が言っていた「過去のブランド形成の話から、県でやるなら多くの人にやってもらった方がいいじゃん。」となりやすいところだと思います。
地名を使った商標を使うビジネスは地名による認知度は高いかもしれませんが、地方公共団体や地域団体を絡めるメリットがあるのかどうかは考える必要がありますね。

その他にも「ダリア名人(29類)」や「ダリア美人(29類)」の登録もありますが、WEBで関連記事を見つけられなかったので、記載しませんでした。
31類の申請・登録が多いですが、30類の食品関係もありますね。
ダリアコーヒーは「ダリアの球根100%のハーブティー」だそうで、ダリアの球根に含まれるイヌリンが摂取できるそうです。
焼き芋ならぬ焼きダリアを試しに作って食べ、その強烈な香りに悶絶した経験がある身としては、ダリアコーヒーを試すには勇気が入りますが・・・(汗)
このイヌリンのおかげで戦時中にダリアの生産が継続できた経緯もあるのですが、詳しくは「ダリア百科」の中に記事がありますので、最寄りの図書館にあれば読んでみて下さい。

ちなみにダリアの場合は商標法第4条(商標登録を受けることができない商標)
十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
が絡んできますが、商標の話から少し離れるので今回はこの辺で。
気になる方は品種登録も検索できますので↓をチェック。


LDLでは様々なプロジェクトが動いてます。
プロジェクトを動かしていくパートナーだけでなく
リサーチ・アソシエイトも随時募集しています。
5月の定例会は29日です。


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