NOPEを観て。

今年映画館で観た映画で1、2を争う面白さだった。

ピール作品、前作までも勿論観てきたけど、
今作で一生ついて行こうと決めた。

多弁にインタビュー等で制作意図や描きたいものを語る監督だから、自分の感想は多分正解じゃないけど、確かに心にくる映画だった。若造なりの備忘録です。

映画館で席を立ととうとした時に、意味が分からなかったていう声がそちらこちらで聴こえて、少し驚いた。

自分にはゴーディのシーンやプロカメラマン(名前忘れた)の行動意図が何となく解釈出来たから。

とにかく冒頭で
「わたしはあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見せ物にする」
という一節が流れる。

これは傲慢な人には罰が下るという意味らしいけど、
様々な場面でその傲慢な人間、つまり全てを手中で操れると過信していたり、権力による傲慢さを体現する人物が多く描写される。

無限に語れるので3つに分けて備忘録を残させて。

ゴーディとジュープ
ノープ
黒人騎手

①ゴーディとジュープ
前説に沿って、ジュープは全てを自分の思い通りに操れる傲慢な人間として描かれる。が故にの結果なのだけど。

同時に子役時代の栄光からの転落、トラウマを乗り越え、必死に今を生きようとするひたむきさも感じるため決して憎めない。

ここで単に傲慢という風にジュープを割り切れない自分もいたのは、子役時代のゴーディ事件のトラウマ(想い出?)かなと。

暴れ回るゴーディ(他者にとっての恐怖の対象)と目を合わせ心を通わせられたと感じたあの体験が彼を現代であの行動に駆り立てたと思えば、何も理解不能であったり、ただの傲慢とは切り捨てられない気がする。

アイコンタクトという点でOJとの対比がしっかりしていて、映画の結末が傲慢な人間と敬意を持った人間のどちらが作者にとって正なのかを明示している様に感じた。

②ノープ
タイトルがノープな所からもう面白くて、ピール作品特有の皮肉が見事に自分に刺さる。

登場人物の台詞の各所にnope(ありえない)が入っていて、あり得ない事を題材にそこにリアリティと緊張感、風刺を交えた様が最高だった。

何より大味な終盤からのラストカットからの
Nopeが結局上手くことが収まる古き良き映画自体のご都合主義を大弄りしているように思えて、最後までにんまり。

③黒人騎手
世界初めての映画は、たった2秒の黒人騎手が駆ける姿を写した動画らしい。

序盤所々で振りまかれるこの内容から見て、この映画ってその最初の映画のリメイクなのでは?と思ったり。

何としても動画を撮って、成り上がろうとする兄弟や仲間の執念。

同時に、OJの父親から教わったルールに沿った行動原理、また種が明けてからは父の復讐と言っても良い様な痛快な立ち向かい方。

一家の誇りともいえるひいひいおじいちゃんを彷彿とさせる様なラストシーンが心に刺さった。

序盤やんわり聞こえる渓谷の間の風音等、タネが明けてから理解するギミックは凄く興味深く、メッセージ性とエンタメ性が共存する良い映画だった。

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