近年(令和以降)の難民認定訴訟一覧
近年(令和元年以降)の難民認定・不認定をめぐる訴訟の主な裁判例を認定・不認定に分けて整理しました。主に裁判所Website及び判例データベースに載っているものをまとめましたが、不足分あればコメント等で教えていただけると大変助かります。
認定
名古屋地判令和6年5月9日
シリア人男性を難民として認定した。「シリア人について国に難民認定を命じた判決は全国で初めてとみられる」(NHKニュース)。
難民の定義や立証責任については、東京地裁などで用いられてきた裁判例と同様の立場。
判決文(PDF)
裁判官:剱持亮(裁判長)、佐久間隆、新田浩志
名古屋高判令和6年1月25日
ロヒンギャの男性を難民として認定した。
事実の判断の基準として、「難民認定申請者がこれらの客観的資料を提出しない、又は提出するまでに一定の期間を要したからといって、直ちに難民であることを否定すべきではなく、本人の供述するところを主たる資料として、恐怖や国家機関ないし公務員に対する不信感等による供述への逡巡、時間の経過に伴う記憶の変容、希薄化の可能性、民俗、宗教、置かれてきた環境等の背景事情の違いなども考慮した上で、基本的な内容が首尾一貫しているか、変遷に合理的理由があるか、不合理な内容を含んでいないか等を吟味し、難民であることを基礎付ける根幹的な主張が肯認できるか否かを検討して行うべきである。」(札幌高判令和4年5月20日と似た枠組み?)
大阪地判令和5年3月15日
判示事項の要旨(裁判所Websiteより)
ウガンダ共和国国籍を有する外国人について、レズビアンであることを理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであると認められるとして、難民に該当するとされた事例。
判決文(PDF)
裁判官:森鍵一(裁判長)、田辺暁志、立仙早矢
*判例解説
性的指向を理由とした迫害のおそれによる難民認定(弘前大学助教 山下 梓 新・判例解説Watch国際公法No. 53)
札幌高判令和4年5月20日
クルド人の難民該当性を認めた事例(クルド人が難民認定されたのは日本初とみられる)。
裁判官:長谷川恭弘(裁判長)、豊田哲也、片山信
東京高判令和2年1月29日
出生から1993年まで旧ソ連(現在のジョージア)に居住し、旧ソ連国籍を有していたが現在は無国籍の原告(アルメニア民族)の難民該当性を肯定した事例。
判決文(PDF)
裁判官:野山宏(裁判長)、橋本英史、片瀬亮
東京地判令和1年9月17日
判示事項の要旨(裁判所Websiteより)
イラン・イスラム共和国の国籍を有し,イスラム教からキリスト教に改宗した外国人について「難民」に該当するとされた事例。
判決文(PDF)
裁判官:鎌野真敬(裁判長)、網田圭亮、野村昌也
東京高判令和2年3月18日により維持。
不認定
東京高判令和6年2月7日
カメルーン人男性の難民不認定処分を取り消した原審を破棄し、難民不認定処分は適法であるとして、難民不認定処分の取消し及び難民不認定処分に対する異議棄却決定の取消しを求めた被控訴人の請求をいずれも棄却した事例。
裁判官:舘内比佐志(裁判長)、間史恵、西山渉
東京地判令和4年3月25日
パキスタン人の原告の難民該当性を認めず、原告の請求を棄却した事例。
裁判官:鎌野真敬(裁判長)、栗原志保、佐藤秀海
東京地判令和4年1月27日
インドネシア人の原告の難民認定該当性を認めず、原告の請求を棄却した事例。
裁判官:清水知恵子(裁判長)、釜村健太、溝渕章展
東京地判令和3年12月22日
エチオピア国籍の原告がエチオピアに帰国した場合に、迫害を受けるおそれはなく、難民に該当しないとして、原告に対する在特不許可処分及び退令処分が適法であるとした事例。
裁判官:市原義孝(裁判長)、依田吉人、伊藤嘉恵
東京地判令和3年12月21日
判示事項(判例秘書より)
ミャンマー連邦共和国の国籍を有するカチン族の女性である原告が,入管法61条の2第1項に基づいてした難民認定申請に対して法務大臣がした難民認定をしない旨の処分の取消し及び難民認定の義務付けを求めた事案。裁判所は,原告がカチン族の女性であることや自身又は父の政治活動等の主張に係る事情をもって,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものに当たるとはいえず,処分時において,入管法上の「難民」に該当しないといえるから,処分は適法として取消請求を棄却し,処分は適法とされ,難民認定の義務付けの訴えは,申請型の義務付けの訴えに係る要件に該当しないことは明らかとし,不適法として却下した事例。
裁判官:清水知恵子(裁判長)、横地大輔、定森俊昌
東京地判令和3年1月29日
コンゴ国籍を有する母子の難民該当性を否定して、原告側の請求を全て退けた事例。
裁判官:鎌野真敬(裁判長)、網田圭亮、野村昌也
東京高判令和2年12月17日(原審:東京地判令和2年3月10日)
ミャンマー国籍を有するカチン族の女性の難民該当性を認定して難民認定を命じた原審を破棄して、原告側の請求を全て退けた事例。
裁判官:白石史子(裁判長)、見米正、野口宣大
原審裁判官:清水知恵子(裁判長)、進藤壮一郎、田中慶太
東京地判令和1年6月13日
イラン国籍の原告が、キリスト教への改宗を理由に迫害を受ける危険があることなどを理由として難民不認定処分等の取消しを求めたが、全て退けられた事例。
裁判官:清水知恵子(裁判長)、進藤壮一郎、池田美樹子
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?