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外務大臣会見記録 2023年11月25日(土)1

19時57分 於:釜山

冒頭発言

【上川外務大臣】
本日、約4年ぶりとなります明日の日中韓外相会議に出席するため、外務大臣に就任して初めて訪韓をいたしました。

この機会に、さきほど、17時30分から、約100分間、王毅中国外交部長との日中外相会談を行いました。

王毅部長とは初の会談となり、11月16日に行われました日中首脳会談で示された大きな方向性に基づき、大局的かつ建設的な議論を行うことができました。

私からは、日中首脳会談で確認された戦略的互恵関係を包括的に推進し、日中関係の新たな時代を切り開くべく「建設的かつ安定的な日中関係」を構築するという大きな方向性に沿った日中関係の発展に向け、今後、王毅部長と緊密に連携したい旨述べ、王毅部長からも同様の考えが示されました。
また、今後あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことを確認いたしました。
その中で、外相相互の訪問について、互いに招請があり、それぞれ検討していくこととなりました。

また、ALPS処理水の海洋放出について、私から日本産食品輸入規制の即時撤廃を強く求めました。
その上で、首脳会談で確認されたとおり、お互いの立場に隔たりがあると認識しながら、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法を見い出していくこととしました。

さらに私からは、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海情勢、ロシアとの連携を含む中国の我が国周辺での軍事活動の活発化、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況等に対する深刻な懸念を表明し、日本のEEZに設置されたブイについて即時撤去を求めました。
また、私から、台湾海峡の平和と安定の重要性につき述べ、また、邦人拘束事案について、早期解放を強く求めました。

王毅部長とは、日中二国間の懸案に加え、協力すべき分野についても議論した他、女性・平和・安全保障、WPSでありますが、気候変動、国際保健、開発金融といったグローバルな課題や北朝鮮情勢についても有意義な意見交換を行いました。

その上で、今後、幅広い分野において意思疎通をさらに緊密に進めて行くことについて確認しました。
安全保障分野については、日中安保対話を早期に開催することで一致しました。
また、経済協力や交流拡大に向け、日中ハイレベル経済対話と日中ハイレベル人的・文化交流対話の開催に向けた調整を進めることでも一致しました。
グローバル問題についても、女性・平和・安全保障、WPS分野で緊密に協力していくことのほか、気候変動政策や感染症対策を含む国際保健について外交当局間でも意思疎通を強化することでも一致しました。

日中関係は様々な協力の可能性とともに多くの課題や懸案にも直面していますが、両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国であります。
両国の首脳で確認されている「建設的かつ安定的な日中関係」の構築という大きな方向性に向けて日中関係を深化・発展させていくため今後王毅部長と緊密に意思疎通していく上で、本日は王毅部長との間でのカウンターパートとしての関係の構築を含め大変有意義な会談となりました。

明日の午後には第10回の節目となる日中韓外相会議が開催されます。会議では、朴(パク)長官、王部長との間で、日中韓サミットに向けた準備として、現下の国際環境における日中韓協力の方向性や、3か国が裨益する具体的な協力案件、地域や国際社会の諸課題などにつき取り上げる予定であります。
日中韓で協力することの戦略的・大局的意義を踏まえ、三人の間で積極的な議論をしたいと考えております。

最後に、日本時間25日、イスラエルとハマスの間の合意に基づいて人質の解放が始まったことを歓迎したいと思います。
関係国の尽力に敬意を表します。
引き続き、合意が着実に実施されるとともに、更に長期にわたって戦闘休止が継続することを期待します。

質疑応答

【記者】
今回の会談ではですね、ALPS処理水による問題ですとか、中国国内での邦人拘束、日本のEEZ内でのブイの設置等ですね、議題になったと思いますが、日本側としてですね、どのような主張をして、具体的な進展はあったのかについて伺います。
それと、今回ですね予定の時間を大幅に超える会談となりましたが、王毅外相との会談の雰囲気、印象などは如何でしたでしょうか。

【上川外務大臣】
前段のご質問でございますが、まずALPS処理水につきましては、科学的根拠に基づく冷静な対応及び日本産の食品輸入規制の即時撤廃を強く求めました。
その上で、先般の首脳会談を踏まえまして、お互いの立場に隔たりがあると認識しながら、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法を見い出していくことといたしました。

邦人拘束についてでありますが、中国における邦人拘束事案につきましては、これまで中国側に対しまして、様々なレベルや機会を通じて働きかけを行ってきております。今回の外相会談におきましての、早期解放を改めて改めて強く求めたところであります。
中国に対しましては引き続き、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含めまして、対話をしっかりと重ねてまいりたいと考えております。

予定の時間を大幅に上回ったということについての印象というか率直な感想ということでありますが、ベースは先般の日中首脳の間で共通認識ができあがっているところであります。
それに沿いまして、それをさらに具体化するための様々な課題につきまして、また、二国間の懸案事項等、幅広い分野で意見交換をすることができまして、今後の建設的な日中関係を構築する重要な一歩になったというふうに考えております。

率直な且つ真剣な意見交換ができた者と思っております。

【記者】
懸案事項のALPS処理水の関係で重ねてお伺いします。
今回、大臣のほうから輸入規制措置の即時撤廃というのを求めたということなんですが、それに対する中国側の反応はどうだったかということと、今後、専門家レベルでの協議等も言われていると思うが、解決への道筋についてどう考えているかについて教えてください。

【上川外務大臣】
ALPS処理水の海洋放出については、先ほども申し上げたとおりでありますが、科学的根拠に基づく冷静な対応及び日本産食品輸入規制の即時撤廃について改めて強く求めたところであります。

外交上のやり取りでありますので、詳細につきましてお答えすることについては差し控えたいと思いますが、御指摘いただきました専門家レベルの議論につきましては、本日、王毅部長との間で、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題解決をする方法を見い出していくということにつきまして、改めて一致をしたこと、これを踏まえまして、今後調整を行ってまいりたいと考えております。

政府といたしましては、こうした機会も活用しつつ、引き続き、このALPS処理水の海洋放出に関する我が国の取り組みにつきまして、丁寧かつ透明性をもって説明を尽くしてまいりたいと思います。


【記者】
処理水の関係で確認を含めて二点伺います。

一点、今されたお話しのあった専門家レベルの話し合いについては今後調整を進めていきたいとお話しがありましたけど、大臣からこの問題を提起されて日中の間でこの専門家レベルの協議の必要性について一定の共通認識が生まれたという理解でよろしいのかということが一点と、もう一点は、中国側はですね、処理水の問題について、独自のモニタリングをさせて欲しい旨、重ねて従来から主張していると思いますけども、この点、中国側から今日、独自のモニタリングについて言及はありましたでしょうか。

【上川外務大臣】
先ほども申し上げたとおりでありますが、本日の外相会談におきましては、先般の首脳会談を踏まえまして、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法はを見い出していくことで一致したところであります。
今後は、ご指摘のように専門家のレベルで科学に立脚した議論を行っていくことになるというふうに考えております。

また、会談におきまして中国側がどのような発言をしたかということにつきまして、私からお答えすることにつきましては差し控えさしていただきたいと思いますが、モニタリングの在り方について申し上げれば、国家の主権及びIAEAの権威や独立性といった原則が前提となるということは言うまでもないと考えているところであります。

いずれにいたしましても、政府といたしましては、専門家による意思疎通の機会も活用しつつ、引き続き、ALPS処理水の海洋放出に関する我が国の取組につきまして、丁寧かつ透明性をもって説明をしていく考えであります。


【記者】
戦略的互恵関係の構築に向けて首脳会議で適切な時期の開催を確認した日中のハイレベル経済対話について先ほど調整するという外相会談の成果をご披露いただきましたが、開催時期やテーマで進展を得られたかどうかをお願いします。
また、経済対話も含めてですね、首脳や外相の相互の訪問についてどのよう意見を交換したか、また、外相の相互の招聘については想定されている時期などございましたらお願いします。

【上川外務大臣】
まず、王毅部長とは、11月16日の日中首脳会談で確認をされました「戦略的互恵関係」を包括的に推進をし、日中関係の新たな時代を切り開くべく「建設的かつ安定的な日中関係」を構築するという大きな方向性、これに沿った日中関係の発展に向け、今後、同部長と緊密に連携していくとともに、今後あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことを確認をいたしました。

その上で、ご指摘の日中ハイレベル経済対話でありますが、先般の日中首脳間において適切な時期に開催することで一致したことを受けまして、今後、具体的な時期を調整をしていくということについて一致をしたところであります。

また、首脳や外相の相互間の訪問ということでございますが、首脳間の相互訪問につきましては、具体的なやり取りはありませんでした。
外相間の相互訪問につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。これから意思疎通を図り調整してまいりたいと考えております。

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