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外務大臣会見記録 2023年10月31日(火)

19時27分 於:本省会見室

冒頭発言

1. 上川外務大臣のイスラエル及びヨルダン訪問

【上川外務大臣】
私から2点ございます。
まず、1点目でありますが、11月2日から5日まで、私は、イスラエルとヨルダンを訪問します。
また、パレスチナ側要人とも会談をする方向で調整中であります。
今般のイスラエル・パレスチナ情勢につきましては、今は特に、ガザ地区の人道状況の改善が最優先であり、人道目的の一時的な戦闘休止、すなわち、「Humanitarian Pause」、及び人道支援活動が可能な環境の確保が必要であります。
我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、三つの方針、一つ目は人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に全ての当事者が国際法に従って行動すること、そして3点目、事態の早期沈静化を一貫して求めてきているところでございます。
このような立場を踏まえ、これまで私から、関係国との意思疎通や働きかけ等の外交努力を積み重ねてきたところであります。
先週末には、イスラエル政府が、地上作戦を強化し、戦争の第二段階に入ったと発表しました。
現地の緊張は、刻一刻と増しており、情勢は全く予断を許さない状況であります。
そうした状況において、私自身が、現地を訪問し、直接我が国の立場を伝え、意見交換する考えであります。
また、今般の事態をめぐり、未来ある子供や女性・高齢者が被害に遭っていることに大変心を痛めております。
訪問先におきまして、そうした方々にも面会し、平和へのメッセージを伝えてまいりたいと考えております。
政府としては、引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、人道状況の改善や、事態の早期沈静化に向けた外交努力を続けてまいります。

2. JICAウクライナ事務所の再開

【上川外務大臣】
2点目でありますが、ウクライナの復旧・復興の促進に向けた日本政府の体制整備の一環として、11月1日から、JICAウクライナ事務所を再開します。
今後の復旧・復興フェーズにおいて、支援を本格化させていく中で、多岐の分野にわたる支援を迅速かつ着実に実現していくためには、必要な安全対策を講じた上で、現地の拠点となるJICA事務所を再開することが不可欠と考えております。
来年初めに開催予定の「日・ウクライナ経済復興推進会議」に向け、引き続き、ウクライナの人々に寄り添った、日本らしい、きめの細かい支援を着実に実施し、ウクライナの復旧・復興への歩みを力強く推進してまいります。 私からは、以上です。


イスラエル・パレスチナ情勢

ネタニヤフ・イスラエル首相の発言等

【NHK 五十嵐記者】
イスラエル・パレスチナ情勢の関連で伺います。
イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区への激しい攻撃が続く中、イスラエルのネタニヤフ首相は、30日、「ハマスとの停戦には応じない」と述べ、停戦の可能性を否定しています。
発言の受け止めを伺います。
また、今回の大臣の中東訪問を含めて、日本として、どう働きかけるのか、また、来週行われるG7外相会合では、その中東訪問の成果をどのように生かすお考えかも、併せて伺います。

【上川外務大臣】
現地情勢も刻一刻と動いていることを踏まえまして、他国の首脳の発言の逐一につきまして、コメントすることは差し控えたいと考えております。
従来から申し上げているところでありますが、我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放、第二に、全ての当事者が国際法に従って行動すること、そして、第三に、事態の早期沈静化を一貫して求めてきているところであります。
イスラエルとの関係では、累次の機会に、一般市民の保護の重要性、国際法に則した対応、人道支援活動を可能とする環境の確保等の協力を要請してきております。
引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、私の訪問や、また、G7外相会合の機会を通じて、関係国と意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、人道的休止及び人道支援活動が可能な環境の確保、そして、事態の早期沈静化に向けた外交努力を、積極的に続けてまいりたいと考えております。

日本政府の取組

【日本経済新聞 根本記者】
イスラエル情勢の関連でお伺いします。
岸田首相は、国連総会や所信表明演説で、人間の尊厳を強調し、上川外務大臣は、これに加えて、就任以来、WPSに関する取組を推進してきました。
こうした日本の外交姿勢を踏まえて、今回のイスラエル・ヨルダン訪問や、来週のG7外相会合、現下のガザ地区の人道状況の改善や、事態の早期沈静化に向けて、どのような働きを目指すか、ご見解をお伺いします。

【上川外務大臣】
従来から申し上げているところでございますが、我が国は、ハマス等によりますテロ攻撃を、断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放、そして、第二に、全ての当事者が国際法に従って行動すること、そして、第三に、事態の早期沈静化を一貫して求めてきております。
その上で、ガザ地区の状況は、深刻化の一途をたどっており、未来ある子供や、また、女性・高齢者を含めまして、罪のない人々が被害に遭っていることに対し、大変心を痛めております。
同地区の人道状況の改善、これが、目下の最優先課題と認識しております。
そのためには、同地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道支援活動が可能な環境の確保、これも急務であります。
このような認識の下で、引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、私の訪問や、また、G7外相会合の機会を通じまして、関係国と意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、人道的な休止及び人道支援活動が可能な環境の確保、そして、事態の早期沈静化に向けた外交努力、これを積極的に続けてまいります。

ガザ地区における地上作戦と国際法

【共同通信 桂田記者】
関連して中東情勢について伺います。
大臣はこれまで、イスラエルが自国及び自国民を守る権利を有するのは当然だが、国際法に従った形であるべしと指摘されてきました。
イスラエルはガザ地区での地上作戦を拡大していますが、現状は国際法に従った形であるとお考えでしょうか。

【上川外務大臣】
ガザ地区及び周辺では、既に多数の死傷者が発生しております。事態の緊張度が日増しに高まっておりまして、全く予断を許さない状況であります。
我が国といたしましても、深刻な懸念を持って情勢を注視しているところであります。
その上で、今般の事案について、我が国は直接の当事者ではなく、個別具体的な事情を十分把握しているわけではないことから、確定的な法的評価を行うということにつきましては、控えたいと思っております。
その上で、イスラエルが、主権国家として、自国及び自国民を守る権利を有することは当然でありますが、一般論として、こうした権利は、国際法に従った形で行使されるべきであるということについては、言うまでもないことであります。
いずれにせよ、日本としては、引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、関係国との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、人道状況の改善や、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く続けてまいります。

戦争のエスカレーション

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】
重ねて、中東情勢について質問します。
地上侵攻を始めたイスラエルを支持する米国では、この先、イランと米国との戦争を辞さないという発言をするリンゼイ・グラハム上院議員のような政治家も出てきています。
米軍が介入すれば、イラン・ロシア・トルコも参戦し、中東からの石油輸出も止まる可能性が高くなります。
石油のほとんどを中東に依存する日本は、大変な苦境に陥ります。
日本は、イスラエルによるガザ侵攻の停止を強く求め、戦争のエスカレーションに反対すべきではないでしょうか。
大臣のお考えをお聞かせください。

【上川外務大臣】
従来から申し上げているとおり、我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放、第二に、全ての当事者が国際法に従って行動すること。
そして、第三に、事態の早期沈静化を一貫して求めてきております。
イスラエルに対しましても、私から、10月12日、コーヘン・イスラエル外相に対し、事態の早期沈静化を働きかけたほか、10月27日には、駐日イスラエル大使に対し、人道的休止及び人道アクセス確保のための協力を要請しいたしました。
日本としては、引き続き、刻一刻と動く現地情勢に応じて、イスラエル及びパレスチナを含む関係国や関係者等の間で、意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期沈静化や、人道状況の改善に向けた外交努力を、積極的かつ粘り強く進めてまいります。

国際人道法の遵守と停戦

【アナドル通信社 メルジャン記者】
日本の外務大臣にとって、イスラエルが、数週間にわたってガザで行っている軍事行動において、国際人道法を遵守していると、はっきり言えるのでしょうか。
ガザで何が起こったかについて、何千もの映像記録が作成されており、皆さんもこれらの映像記録を見たことがあるはずです。
英国の非政府組織「セーブ・ザ・チルドレン」は、ガザ地区で、3週間に惨殺されたパレスチナ人の子供の数が、3,000人を超えたと報告しました。
私の質問は、ハマスに関するものではなく、完全にイスラエルに関する質問です。
日本の外務大臣にとって、ガザでイスラエルは、国際人道法を遵守しており、戦争犯罪など存在しないと宣言できるのでしょうか。
国際社会は、日本の外務大臣のイスラエル訪問中に、停戦の呼びかけを期待すべきでしょうか。

【上川外務大臣】
今般の事案につきまして、我が国が直接の当事者ではなく、個別具体的な事情を十分把握しているわけではないことから、確定的な法的評価を行うことにつきましては、差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、我が国として、全ての当事者が、国際法に従って行動することを一貫して求めてきており、イスラエルに対しましても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨伝えた上で、一般市民の保護の重要性、国際法に従った対応、人道的休止及び人道支援活動を可能とする環境の確保等を要請してきているところであります。
日本としては、引き続き、刻々と動く現地情勢に応じつつ、私の中東訪問の機会を通じて、イスラエルを含む関係国や関係者等との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期沈静化や、また、人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に粘り強く続けてまいりたいと考えております。

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