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外務大臣会見記録 2023年12月5日(火)

17時01分 於:本省会見室


冒頭発言

EU加盟国大使との会合 [アウトリーチ型外交]

【上川外務大臣】
私から1件ございます。

アウトリーチ型の外交活動についてであります。

私は、国内で取り組むアウトリーチ型の外交活動の一環といたしまして、本5日でありますが、駐日欧州連合代表部大使が主催するEU加盟27か国大使との会合に出席しました。

私からは、日本とEUは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、国際社会の共通の課題に共に取り組む戦略的パートナーであり、地域・国際社会の課題に共に取り組んでいきたい旨述べ、各大使からも賛同をいただきました。

さらに、私からは、ガザ情勢、インド太平洋、ロシアによるウクライナ侵略等の地域情勢に関する我が国外交の立場を説明するとともに、核兵器のない世界の実現に向けた取組や、WPS(女性・平和・安全保障)等につきましても、協力したい旨述べました。

EUは、人口が約4.5億人、世界のGDPの約2割を占めるのみならず、国際的なルール・メイキングにおきましても重要な役割を果たしている大切なパートナーであります。
そのようなEU、EU加盟国の大使の皆さんと、大変率直に、活発に、意見交換を行うことができまして、大変貴重な機会となったところであります。

私からは、以上であります。


イスラエル・パレスチナ情勢

イスラエル軍の攻撃再開

【NHK 五十嵐記者】
イスラエル・パレスチナ情勢について伺います。
パレスチナのガザ地区全域に対して爆撃を再開したイスラエル軍は、南部への地上侵攻を進めていて、人道状況の更なる悪化が懸念されています。
イスラエル軍が攻撃を再開したことの受け止めや、日本政府の対応、今後も人道的休止を求めていくのか、併せて伺います。

【上川外務大臣】
人質等をめぐります、このイスラエル・ハマス間の取引につきまして、戦闘休止の更なる延長について、合意に至らないまま期限を経過し、また、イスラエル国防軍は、南部を含むガザ地区における戦闘を再開したと承知しております。
我が国といたしましては、現地の情勢を深刻な懸念をもって注視している状況でございます。

戦闘休止、人質の解放及び人道支援物資のガザ地区への搬入増大を歓迎していたところでございますが、戦闘が再開されたことは、まことに残念でございます。
戦闘再開により、現地の危機的な人道状況が、更に深刻化することを強く憂慮しているところでございます。
また、ハマス等により誘拐され、長期にわたって拘束されている方々も、極めて厳しい状況に置かれています。
こうしたことから、合意への復帰及び事態の早期沈静化が重要であり、再度の戦闘休止に向けた関係者への働きかけなどを通じ、我が国としても、外交努力を払ってまいりたいと考えております。

また、全ての当事者が、国際人道法を含む国際法を遵守しなければならず、実際の軍事行動におきましては、民間人の被害を防ぐべく、実施可能なあらゆる措置を講じる必要があると考えております。

今後の情勢の推移につきましては、予断を許さないところでございますが、我が国といたしましては、引き続き、関係国・国際機関との間で意思疎通を行いつつ、全ての当事者に対しまして、国際人道法を含む国際法の遵守、先般我が国も賛成して採択をされました 安保理決議第2712号 に基づきまして、誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善及びそれに資する戦闘休止の合意への復帰、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。


イスラエルへの働きかけ

【朝日新聞 松山記者】
今の質問に関連して伺います。
南部には、これまで北部から避難した民間人もおり、民間人の犠牲拡大が懸念されている状況になっております。
この行為は、国際法に違反するのではないか、という指摘もある中でですが、先ほど大臣は、これまでと同様、全ての国際法の遵守を求める、というふうにおっしゃいましたけれども、日本は、これまでより踏み込んだ対応をイスラエルに対して取るおつもりはありますでしょうか。
また、国際社会に、どういったメッセージを出すかも改めてお願いします。

【上川外務大臣】
今申し上げたところではございますが、イスラエルに対しましては、私自身、先般のイスラエル訪問の機会を含めまして、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、国際人道法を含む、国際法に従った対応等を直接要請してきているところであります。

そして、12月1日でありますが、ドバイで実施されました日・イスラエル首脳会談におきましても、岸田総理から、ヘルツォグ大統領に対しまして、このような日本の立場を伝達するとともに、ガザ地区の人道状況の改善につきまして、改めて直接要請したところでございます。

今後の情勢の推移は予断を許さないところではございますが、我が国としては、引き続き、関係国・国際機関との間で意思疎通を行いつつ、全ての当事者に対しまして、国際人道法を含む国際法の遵守、先般我が国も賛成して採択された安保理決議に基づき、誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、及びそれに資する戦闘休止の合意への復帰、事態の早期沈静化に向けて、外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。


イスラエルへの働きかけ2

インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】
先ほどから続いているイスラエル・パレスチナ情勢について、質問を重ねます。
イスラエル国防相顧問は、「イスラエルは、テロ組織と戦っているのではなく、ガザ国家と戦っているのだ」と述べました。
民間人への集団懲罰は、明白な国際法違反であり、公開のジェノサイドです。
「やめろ」と声を上げないのであれば、「共犯」となったに等しいとも言えるのではないでしょうか。
日本政府及び外務省は、イスラエルに制裁を加えてでも、イスラエルの戦争犯罪を裁き、暴力を今すぐやめさせる手立てに出るお考えはありませんでしょうか。
よろしくお願いします。

【上川外務大臣】
我が国といたしましては、このイスラエルがハマスの攻撃を受けて、国際法に従いまして、自国及び自国民を守る権利を有すると認識しているところであります。

しかしながら、同時に、これまでも、イスラエルに対しましては、私自身、先般のイスラエル訪問の機会を含めて、累次の期間にわたり、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、国際人道法を含む、国際法に従った対応等を直接要請してまいりました。

また12月1日、ドバイで実施されました、日・イスラエル首脳会談におきまして、岸田総理からヘルツォグ大統領に対しまして、このような日本の立場を伝達するとともに、ガザ地区の人道状況の改善について、改めて、直接要請をしたところでございます。

繰り返しになるところでありますが、今後の情勢・推移は予断を許さない状況でございます。
引き続き、関係国・国際機関との間で意思疎通をしっかりと行いながら、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の順守、そして、先般我が国も賛成して採択されました安保理決議に基づきまして、誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、及びそれに資する戦闘休止の合意への復帰、そして、事態の早期沈静化に向けまして、外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。


人道的休止・停戦の呼びかけ

アナドル通信 メルジャン・フルカン記者】
イスラエルによるガザ地区への空爆と地上攻撃は続いています。
この大量虐殺を防ぐには、人道的停戦が十分だと思いますか。
日本政府は、ガザ地区の停戦を支持しない姿勢、停戦を支持しない立場を続けているのでしょうか。
お願いします。

【上川外務大臣】
今次の事案の経緯、また複雑な背景事情等に鑑みまして、「停戦」に至るまでは、引き続き、一つ一つの成果を積み重ねていく必要がある中におきまして、我が国は、人道目的の戦闘休止、及び人道支援活動が可能な環境の確保に向けまして、これまで尽力してきたところでございます。

私自身議長として取りまとめました、G7の外相声明、これは11月の8日、11月の29日、また安保理決議、これは11月16日、第2712号でありますが、この採択に向けまして、また、イスラエル・パレスチナ及びヨルダンを訪問した機会や、多くの電話会議・会談等におきまして、関係国への様々な働きかけを行うなどの外交努力を重ねてきたところでございます。

また12月1日には、ドバイで実施されました、日・イスラエル首脳会談におきましても、岸田総理からヘルツォグ大統領に対しまして、ガザ地区の人道状況の改善について、改めて直接要請してまいりました。

今後の情勢の推移は予断を許さないものでございますが、我が国としても、必要な外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。


NSC「国家安全保障会議」発足10年

【共同通信 桂田記者】
話題変わりまして、NSC(国家安全保障会議)についてお伺いします。

外務大臣もメンバーである国家安全保障会議発足から昨日で10年となりました。
この10年間、NSCの果たした役割について、どう評価されますでしょうか。
機密性が高すぎる国民への情報発信があるべきとの指摘などもありますが、今後の在り方や課題について、お考えをお聞かせください。

【上川外務大臣】
まず、国家安全保障会議NSC発足後の10年につきましてお尋ねがございました。

NSCは、平成25年、2013年12月に発足し、昨日4日で、10年を迎えたところでございます。

発足以降、これまで330回以上、NSCを開催したと承知しております。
これまで、我が国初となる国家安全保障戦略の策定や、平和安全法制の策定等で中心的な役割を担ってきた他、地域情勢に関する議論を通じて、Free and Open Indo-Pacific Strategy(FOIP: 自由で開かれたインド太平洋)というビジョンの下、首脳外交を含む、我が国の積極的な外交を支えてきたところであります。

また、昨年、宇宙・サイバー・経済安全保障等の、安全保障上の新たな課題への対応も含めた、新たな国家安全保障戦略等の策定を行ってきたところであります。

このように、NSCは、まさに、我が国の国家安全保障政策の司令塔として機能してきたと評価しているところであります。

続きまして、NSCの今後の在り方や課題についてでございますが、NSCは、今後とも、国家安全保障に関する外交、防衛、経済政策の諸課題につきまして、総理を中心として、関係閣僚が、平素から戦略的視点を持って審議を行い、政治が、強力なリーダーシップを発揮し、政府として、国家安全保障政策を機動的、戦略的に進めていく司令塔として、機能を果たしていくと考えております。

私も、NSCの一員である外務大臣として、今後とも積極的に議論に関わっていく考えでございます。


日米拡大抑止協議

【毎日新聞 川口記者】
本日から、外務・防衛当局間で、日米拡大抑止協議が始まりましたが、協議を通じて期待する成果と、現下の安全保障環境を踏まえた開催の意義をお願いいたします。
また、核抑止については、核軍縮に反するとの指摘も根強いですけれども、米国の拡大抑止に頼る日本の立場として、核兵器を増強・維持させる中国やロシア、北朝鮮に対してどのように対応してくお考えか、よろしくお願いいたします。

【上川外務大臣】
まず、日米の拡大抑止協議で期待する成果と意義につきましてのお尋ねがございました。

日米拡大抑止協議におきましては、日米安保・防衛協力の一環といたしまして、地域の安全、地域の安全保障環境、日米同盟の防衛態勢、核及びミサイル防衛政策に加え、軍備管理及びリスク低減を含む戦略的抑止に関する事項を議論をするところでございます。
これらの議論を通じまして、同盟の戦略及び能力に関する相互理解を向上させ、かつ、抑止力を強化するための方策につきまして、突っ込んだ意見交換を行う場と位置づけているところであります。

今次こんじ協議につきましては、本日から7日まで行われることになっておりまして、今申し上げた事項を中心に、意見交換を行うこととなると理解しております。

続きまして、核兵器を増強させる国々への対応についてお尋ねがございました。

一般論として申し上げるところでございますが、現在、ロシアによる核兵器の威嚇や、また、北朝鮮の核・ミサイル開発などによりまして、我が国を取り巻く安全保障環境は、依然として大変厳しい状況にございます。
こうした中にあって、国民の生命・財産を守り抜くため、現実を直視し、我が国にとって不可欠である米国の拡大抑止を含め、国の安全保障を確保しつつ、同時に、現実を「核兵器のない世界」という、理想に近づけていくべく取り組むことにつきましては、決して矛盾するものではないと考えております。

そのような中で、政府といたしましては、昨年末に策定された、国家安全保障戦略の下、防衛力を抜本的に強化するとともに、引き続き、米国による拡大抑止の提供を含む、日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していく考えでございます。

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