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なんご

生後6ヶ月の男の子は、表情が非常に豊かである。

彼はまだ言葉を話せないため、私達とコミュニケーションを取るためには、表情や行動、そして『あーあー』や『えぃー』などの言葉にならない言葉、いわゆる『喃語』と呼ばれる物で、我々に彼なりの意志を伝えてくる。
当然の事ながら解読は非常に困難。
だがしかし、その一言一言には確実に意志が宿っている。
私の遺伝子を半分有する彼から発せられる、『難攻不落の暗号文』と言われれば、興味を唆らない蝶ネクタイメガネ小僧はいないだろう。


喃語とは、生後6ヶ月から1歳程度の乳幼児が発する、まだ言葉としては成立していないような声のことを指す。
独自のリズムやイントネーションがあり、これが後に言語能力の発達や、コミュニケーション能力の向上につながると考えられていて、私たち親は、彼の喃語にどう反応するかによって、彼らの将来の語彙力や社交性などに影響を及ぼす。と言う訳だ。
彼らの喃語に対してコミュニケーションを取る場合は、基本的にはオウム返しで大丈夫らしい。
単語や文のような形を成していないため、喃語の意味を理解する必要は特に無いようだが、彼の意志や感情を理解するには、喃語を発している時の行動や視線、表情などを注意深く観察し、適切な返答をしなければ『あんぎゃぁぁあああああ!!!』と言われるので、そこに関しては注意したい点だ。

我々が当然の様に操る『言葉』と言う。人間を人間たら締めるツールを持たない彼らにとって、何を伝えたいのか?どうしたいのか?を理解する事はどれくらい重要なのだろうか?
コレは『自分がいきなりアフリカの少数狩猟民族のど真ん中に放り込まれた。』と仮定したのなら状況はわかりやすい。

言葉の伝わらない恐怖である。
彼は日々、その恐怖に晒されているのだ。
ならば、彼の為に我々が出来る事は、彼の喃語に耳を傾け、彼の反応や仕草を観察し、行動を予測して、最適な返答を返してあげる事ではないだろうか?
彼が喜び、驚き、不安や不快な感情を表現するために使用する音の違いをほんの少しでも理解しようとする事で、彼がこの世界を知る事に安心感を感じてくれるのではないだろうか?


生後6ヶ月の息子とのコミュニケーションは、毎日が変化の連続だ。
彼の喃語や表情、仕草を注意深く観察する。
たったそれだけの事で、彼自身が彼自身を主張する勇気をほんの少しでも付けられるのであれば、難攻不落の暗号文を解読に挑戦する事も無意味では無いのかもしれない。

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