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未来を考える力とやらを身につける方法論02 ケーススタディ

ケーススタディ

前回は説明に終始してしまったので、今回はケースから未来視を考えてみようと思う。
考えるケースは実際に起こったもので、現在進行形でトラブルを内包した問題である。

CASE:01
とあるイベント興行が5年ぶりに行われることになり、実行委員会が発足する。実行委員会に求められるミッションは以下の3点

・来場者数一万人を目指す
・デジタルツールを多様化しDXを行う
・省力化・省人化を実現する

上記のミッションを掲げ、実行委員会が取り組んだことは以下の通りだ。

  • イベント特設サイトの設営

  • ユーザー事前登録のデジタル化

  • 出展者リストのデジタル化及びCMS化

  • 告知広報のリアルタイム更新

  • プレスリリースサイトなどを利用したデジタル広報戦略

一見すると至極真っ当な取り組みに見えるが、ここにお作法を合わせることでとんでもないことが発生する。順に指摘していこう。

イベント特設サイトの設営

必要であることは間違いないツールではあるが、設営することが目的となってしまい
・どんな人に
・どのような内容を
・どういったタイミングで

リリースするのかのデザインがない。サイトを作ることがゴールになって、しまい発展性がないのだ。
挙句、現在放送されている大河ドラマに寄せたらどうだ? とかコピーライトにSDGsが入っていた方がいいのだ。とかの本質的ではない議論を何十回と重ね、一体何が伝えたいのかよくわからない。ブランディングとは遠くかけ離れたイベントサイトのようなものが出来上がる。

ここで本来、大切だったデザインの要素は

・開催されるイベントがどういったテーマで
・訪れた方が良いという価値を見出し
・訪れた人たちが明日からの営みに変化をもたらす

これらが最も大切な要素であり、さらに言えば

・訪れた人たちのデータを集計し
・訪れたことで発生したイベントをしっかりと吸い上げ
・次回開催時のデータとする

こういった考えまで、及ぶことができなければ「未来視」を持った戦略とは到底言えない。

彼らは、イベントを実行することの本質を考えようとせず、短視眼的にイベントを開催すること自体がイシューと化してしまい、未来へバトンを繋ぐことを考えられないハリボテを提供することで、自分たちは職務を全うしたのだと錯覚してしまう。
結果、特設サイトは設計不備から、指摘を受ける毎に謎の修正相談が発生し続ける訳だ。

ユーザー事前登録のデジタル化

これに至っては本末転倒というか、根本的な問題を抱えており、そもそも運営側が紹介された仕組みを使っているので、システムを理解していない。というどうしようもない欠点を露呈している。
DXっぽいからという理由だけで、導入したこのシステムで、根本理解もユーザーエクスペリエンスも考えず導入すれば、当日訪れるのは大いなる混乱と、データとは言い難い収集データとなるだろう。

必要だったものは、如何にして来場者がストレスなく出入りするかを実現することであって、事前登録システムでDXっぽいものを他のイベント運営から紹介してもらい、導入することではない。

・どういったツールで
・何が便利で
・どう今後に役立てるのか

が抜け落ち、DXだからやろう! というアクションはやはり未来を考えたものとは言い難い。

出展者リストのデジタル化及びCMS化

紙の出展者リストのカタログを廃止して、デジタルに移行する。
ここだけ聞けば確かにペーパーレスとなり、カーボンニュートラルに貢献し、コスト削減も実現し、さらには配布する人員も削減できた。と、いいことづくしに見えるが実態はそうではない。

・デジタルを扱えない人に留意して、紙のカタログは例年通り必要だ。
・過去の来場者にはハガキなどでアナウンスが必要だ。
・印刷物の刷り上がりから逆算して締切確定を早めに設定しなくてはならない。

結局、こういった謎理論によって、あるいはマイノリティノイズを、多くの民衆の声(ニーズ)であると誤認し、二重作業が発生し、ツールも予算も膨らむ一方となる。

100歩譲って、今まで紙ベースでアナウンスを行なっていた来場者には開催告知のDMは必要かもしれない。

しかし、出展者リストのカタログはどうだろう?
それこそ、当日大判ポスターで出展者情報を掲示すれば、なんだったらそこにQRコードが貼り出されていて、来場者が自分の端末から見たい出展者の場所を検索できれば、解決ではないだろうか?
出展者のブース番号は、来場時に必要な情報であり、事前に告知が必要な情報と差別化して考えるべきだ。

それでも、事前に出展者リストが知りたい。と、考えるユーザーもいるがそのためにサイトがあるのではないだろうか?
出展者が決まり次第、その都度リリースを行う特設サイトがあり、なんだったらSNSにもその情報を更新して、出展者自身がオフィシャルの情報をフォロー拡散できるようにすれば、新しい集客方法のエビデンスになり得たかもしれない。

自分たちのお作法に終始するあまり、外部のイベントの運営デザインがどうなているのか? トレンドの調査と取捨選択が事前に行えていない、お粗末なグランドデザインの末路と言えるであろう。

告知広報のリアルタイム更新

これこそが、前述の問題を解決するツールであったハズなのに、
・オフィシャル特設サイトがオープンしました
・事前予約システムが実装されました
・公演傍聴の事前予約を開始します

といった、大雑把な情報しか更新されず、ユーザーの関心を集められない。

必要だったのは
・DXで成功した〇〇さんの出展が決定しました! A-00にて展示です!
・デジタルで新たな顧客獲得に成功した〇〇さんの出展決定です!
・〇〇県で官民一体で成功した「〇〇の仕組みづくり」公演決定です!

といった個別のユーザーのアテンションを引くアナウンスではなかっただろうか? これらもイベントを開催することのテーマに対して未来への戦略が成されていないために起こった不協和音と断言してもいい。

プレスリリースサイトなどを利用したデジタル広報戦略

最後のこちらに関しては、どう言ったものかの理解が及んでおらず、結果地方紙の取材を申し込むと言った体たらくだ。
プレスリリースを如何にして、YAHOO! ニュースに載せるか? といったようなネット戦略がまるでなく、そもそも入り口でデジタルの選択肢を除外してしまう、前例踏襲主義、お作法主義の典型と言ってもいい。

未来を考えたらどうだったのか?

彼らが、未来を考え今回のイベントがどう言った位置付けにあるのか? を時系列で考えることができれば、戦略段階からイベント開催までのロードマップが異なった筈だ。

私がプロデュースするのなら

・今までとの違いを明確化する
・DXを行ったイベントの成功の定義を明確化する
・それに伴い収集に必要なデータとは何か? を考える
・収集されたデータを次回に繋ぐための装置はどんなものかを検討する
・リアルタイムにリリースする情報の反応を逐一データとして蓄える
・当日までに打てるプレスリリースの回数を考え、企画記事の検討を行う

この辺りにタスクを設けてデザインする必要があったであろう。
少なくともDXを取り入れたイベントの開催といったようなアバウトな戦略設計は行わない。
まずは、誰に向けて何のために行うのか? そしてどんな結果を得たいのか? を明確にできなければ、未来を見据えた企画にはなり得ないのだ。

二話で終えれるかと思ったが、終始ディスり続けただけで3000字を超えてしまった。
次回で、未来視を利用したデザインについて語り、この章のピリオドにしようと思う。

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