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何も考えない幸せ

市内のホテルで昼食をとる。
ビュフェ形式。
カレーを注文すると1200円。
シェフのおすすめを選ぶと3000円くらいになるので、頼まない(それでも、ローストビーフでも1800円だから、ホテルとしては格安)。
しかも結構うまい。

どこかボンカレーの味と似ているところが私にはちょうどいい。
バイキングの種類は少ないが、フリードリンク付き、ご飯のお代わりも自由。
ただし、平日に限る。平日の昼にのんびりホテルで昼食がとれるのも、退職したからだ。

12時オープン。
何度か行っているが、ウエイトレスはいつも同じ40代半ば(?)の女性。
さすがに私の顔くらいは覚えていると思うが、行くたびに同じ説明を繰り返す。
「本日のシェフのおすすめは〇〇でございます」
「ビュフェ形式になっております」
「お飲み物は、あちらにございます」
「お味噌汁もございます」
マニュアルがそうなっているのだろう。
でも、なんとなくそれもほほえましい。
融通はききそうにない人に見えるが、真面目な性格がそのままでている。
だから、「いや、もうよくわかっていますよ」とは言わない。
最後までお伺いする。

オープンに合わせて12:00きっかりに行くのがいい。
私より先に客が入っていたことは一度もない。
しかし、食べ終わるまで一人ということもない。必ず一組は後から入ってくる。
前回は、老夫婦だった。旦那の方はビュフェ形式が何たるかを知らない様子。
何度も先ほどのウエイトレスに質問している。
そのたびに「おとうさん、さっき説明されたでしょ」とたしなめられている。
言い方は穏やかで優しい。
旦那は「ああ、わかった、わかった」とそのたび答える。
しかし「わかった」を繰り返す人ほど実はわかっていない。

メイン料理の注文が終わって、奥さんから「じゃあ、取りに行こうか」と言われて「ん?注文は終わっただろ?なんだ、あそこにあるのは勝手にとってきていいのか。」と旦那。
やはり分かっていない。

時間がゆったりと流れている。戦場のような職場にいたらこんな空気感に出会うことはなかった。

こういうとき、何かを感じないといけないのだろうと思った。
例えば、自分もこんな夫婦になりたいとか、年を取ると人の説明を理解しづらくなるせつなさとか。

でも、考えないことにした。無理して何かを感じる必要はない。
あくせくする理由はどこにもない。
そう、どこにもないのである。

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