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100倍、身につく国語力(207) 作品篇


❤小~高校生と、母親向けのレッスン
 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

 杉みき子の作品について ⑧

 杉みき子のリズムのこだわりは、この
「じゅげむ」に代表されるように、落語
のリズムが根底にあるとすれば、第2章の
「時計を売る店」
の話がよくわかるので、
その一部を下に引用します

  ―おじさん、年とらないん
   だって?
  ―ええ?
   さすがに、ちょっとびっくり
   した
   ようすで、おじさんは顔を
   あげた。
  ―ちっとも年をとらないみたい
   だって、
   お父さんもお母さんも言って
   たよ。
  ―あっ、そうかい。
   おじさんは、わらいだした。
  ―うん、そうかもしれないな。
   おじさんは時計屋だからね。
  ―時計屋だと、年をとらないの。
  ―そうさ、時間がいっぱいある
    からね。
  ―時計屋って、そんなにひま
   なの?
  ―はっは、そうじゃない。ほら、
   見てごらん。まわりじゅう、
   時間だらけじゃないか。
  ―ああ、時間って、時計の
   こと?
  ―どうだよ。ひとつひとつの
   時計が、みんなそれぞれの
   時間を持ってる。それをみん
   な合わせてごらんよ。持ち
   きれないほどの時間になる
   だろ。

ネットのイラストより転載

 こんな調子で、少年と店の老主人が
テンポよく、ポンポンと掛け合いの漫才
のように会話を進めていくのです。これ
も落語が好きな杉氏の文章の特色であろ
うが、5章の「雪の夜よばなし」は、
「停電になると、野に立っている電柱が
暇になって、人のようにいろいろおしゃ
べりをはじめる」という擬人話で、次の
ように展開されます。

   そこで、田んぼのまん中に、
   とほうにくれて立ってると、
   どこかで小さな声がするんだ。
  ―まっすぐ、まっすぐ。(中略)
  ―まっすぐ、まっすぐ。(中略)
  ―わたれ、わたれ。(中略)
  ―右、右。(中略)
  ―そのまま……。

 このように、電柱からは息もつかせな
いくらいの早いテンポで矢継ぎ早に言葉
が飛び出してくる。さらに、電柱の変わっ
た骨休みの遊びとして、「花いちもんめ」
を採り上げています。

  もんめ もんめ 花いちもんめ
  ふるさともとめて 花いちもんめ
  だれかさん ねらって 花いちも
  んめだれかさん ねらって 花
  いちもんめ

ネットのイラストより転載

 というと童謡の掛け合いセリフを入れ
て、勝ったり負けたりする中で、興奮が
狭い路地から田んぼや空き地まで広がっ
ていく様子をリズムよく描いています。

 ❤上の二つの文章を見ても、時計
  屋の壁け時計時計にしろ、お花
  畑の花いちもんめにしろ、眼前
  にくさん並んでいればいれば、
  不思議な気持ちになるものです、
  杉氏はその状況を見事に文章に
  表現していると思われます。

 アナミズ (2024.09.06)

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