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100倍、身につく国語力(218) 作品篇

❤小~高校生と、母親向けのレッスン

 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

  杉みき子の作品について (18)

 「わらぐつのなかの神様」は、おば
あちゃんが、マサエに聞かせる昔話の
切り出しで、おみつという主人公の
少女がどんな人物かと関心を持つよう
に語り始め、マサエがそれに引き込ま
れていけるように巧みに表現されて
います。

  昔、この近くの村に、おみつ
  さんというむすめが住んでま
  した。おみつさんは、特別美
  しいむすめというわけではあり
  ませんでしたが、じょうぶで、
  気立てがやさしくて、いつも
  ほがらかにくるくると働いて
  いたので、村じゅうの人たち
  から好かれていました。

 この文章は、「体がじょうぶで、気立
てがやさしくて」とあり、続いて「いつ
もほがらかにくるくると働いていた」と
あって、おみつが村中のだれからも好か
れ、どこにでもいる身近な存在として
イメージが沸くように表現されています。

 そして、この話は、ある日、若い大工
はおみつが売っていた野菜の傍らにあっ
た「わらぐつ」を目にとめ、素朴ながら
心のこもっているのに感心させられまし
た。彼はその後、「わらぐつ」をいくつ
も買ったことから親しくなり、彼はとう
とう「このわらぐつの中には神様がいる」
という言葉(プロポース)を発し、めで
たくおみつと結婚して神様のように大切
にするという結末になります。
 
 マサエは、実はその二人が自分のおば
あちゃんとおじいちゃんだとわかって、
本当に幸せな気持ちになるのだが、これ
は杉氏が深い雪国を舞台にした心温まる
話を民話の型にして、現在から過去へ、
そして過去から再び現在にもどるという
時間経過の展開にしたのは、見事な手法
という他ないでしょう。

ネットの写真より転載

  ちなみに、これの類似した話が『小
さな町の風景』に一つあり、それは8章の
「電信柱に花が咲く」で、内容も構図も
ほぼ踏襲していると考えられます。

  ある日、少女の家の前の電柱
  を建て替えるという知らせが
  来た。それを見た母は、自分
  が小さいときに、「おてんば
  でおよめに行ったら電信柱に
  花が咲くぐらい不思議だ」と
  言われていた同級生のいじ
  めっ子に、手提げ袋を電柱に
  ひっかけられて、それを取る
  ときに母親が電柱から落ちて
  怪我をしてしまった。しかし、
  あくる朝、家の前の電柱の裂
  け目には、花束が挿し込まれ
  ていた。
    少女は、あすはもうなくなる
  という電柱の最後のお祭りだ
  と考えていた。その電柱には、
  少女の両親に対する思いが
  つまっていた。実は、その男
  の子というのが父親だったと
  いうことも話してもらい、初
  めて二人のなりそめの事実を
  知った。

ネットのイラストより転載

 上のように要約してみると、人間の
営みには長い時間をかけて育まれたり、
受け継がれたりするもので、それは、
必然的に親子の世代を超えて繋がって
いくものだといえます。

 ❤従って、こういう人間関係を
  保つ限り、世代の断絶は起
  こりようがないわけで、杉氏
  は根底に人間の善なる本性を
  信頼していると思われます。

 アナミズ (2024.09.17)


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