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100倍、身につく国語力(206) 作品篇

 ❤小~高校生と、母親向けのレッスン
 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

 杉みき子の作品について ⑦

2) リフレーンの多用による強調
 杉氏の文章は、効果的なリフレーンに
よってリズム感が際だっています
。それ
は、彼女が文章を書く時の心がけとして、
一度下書きをしてから徹底的に推敲する
が、言葉を選ぶ際に、リズムのことを考
えて文章を何度も口ずさんで耳に快く響
くかどうかに拘っているからでしょう。

 その典型的な例として、1章の「あの
坂をのぼれば」には、「―あの坂をのぼ
れば、海が見える」という表現が、実に
6回も出てくるが、これは正に「じゅげむ、
じゅげむ」のリズムそのもの
ではなない
でしょうか。

 また、4章の「炎」では、鮮やかな炎
のような黄葉が、「―ここにいる、ここ
にいる、ここにいる」と立て続けに3回
も連続して存在を主張しているのである。
さらに、6章の「ふくろう」では、ふく
ろうが連続鳴く声を次のように書いてい
ます。

  あき地のはしっこの、一本杉
  のこずえでは、夜になると、
  いつもふくろうが鳴いた。
   ホウ ホウ ホウ グルル……。
  少年は、毎晩、ねむるまえに、
  その声を聞いた。
   ホウ ホウ ホウ グルル……。
  姿を見たことこそなかったが、
  そのふくろうは、長いこと少年
  の友だちだった。少年は、ふく
  ろうの声を子守唄にして、ねむっ
  た。
   ホウ ホウ ホウ グルル……。
  月が出ると、少年は、ふくろう
  もこの月を見てるだろうな、と
  思い、
  雨が降れば、ふくろうがその雨
  をしのいでいるこずえのしげみ
  の暗さを思った。
   ホウ ホウ ホウ グルル……。

 というように、杉氏は言葉をより印象
的に伝える手段として、丁寧にリフレー
ンを使って表現を豊かにしています。
このように杉氏ほど落語のリズムのよう
にリフレーン効果にし、作品の中に採り
入れる児童文学者はいないのではないで
しょう。ちなみに、今、有名な古典落語
の一節(注5)を下に挙げれば、このよう
なリフレイン(繰り返し)がなされる背景
が理解できるのではなかろうか。

ネットのイラストより転載

 (注5)
  長い名前によって起こる笑いを
  主題とした古典落語の一節で、
  「寿限無」から長助」までが、
  1つの名前です。寿限りなしで
  死ぬことのない「寿限無」、
  天人が3,000年に一度下界に下
  るたびに衣で巌を撫で、巌を刷
  り切るのに要する時間が一劫
  からくる「五劫のすりきれ」、
  膨大で獲り尽くせない海の幸
  「海砂利水魚」、衣食住は
  欠かせず「食う寝る所に住む
  所」、生命力強靭な藪柑子
  「やぶらこうじのぶらこうじ」、
  昔、唐土にあった「パイポ」
  という国の「シューリンガン」
  王と「グーリンダイ」后のあい
  だに生まれ超長生きした双生児
  姉妹の名「ポンポコピー」と
  「ポンポコナ」。長久と長命を
  合わせて「長久命」、長く助け
  る「長助」から成る名前である。

  寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅ
  げむ)五劫(ごこう)のすりきれ 
  海砂利(かいじゃり) 水魚(すい
  ぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)
  雲来末(うんらいまつ) 風来末
  (ふうらいまつ) 食(く)う寝(ね)
  るところに 住(す)ところ 
  やぶらこうじの ぶらこうじ 
  パイポ パイポ パイポの 
  シューリンガン シューリン
  ガンの グーリンダイ グー
  リンダイの ポンポコピーの
  ポンポコナの 長久命(ちょう
  きゅうめい)の長助(ちょうすけ)

ネットのイラストより転載

 ❤いかがでしょうか。落語の
  寿限無のリズムが、杉氏の
  作品に見事に反映されてい
  のが、上の例でよくわかり
  ます。
  みなさんもこれを機会にして、
  文章のリズムを考えてみる
  のも決して無駄にはならない
  と思います。

 アナミズ (2024.0-9.05)


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