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2004年6月23日(水)

【熊大第2迷宮:ターンエー期待十分部隊】
「ティリオス!」
「おお、すげえ」
 成宮 敦志が唱えたティリオスの呪文の効果を見て、村木 安之助は思わず言葉を漏らした。ここは熊大第2迷宮。ターンエー期待十分部隊は地下3階のボス戦を行っており、このボスを倒せる唯一の手段である魔術師の呪文ティリオスを成宮が唱えたのである。ティリオスの呪文はその発動の瞬間、詠唱者の足元から無数の線が弧を描くように亜獣へと向かっていき、それが亜獣の足元に集約すると、そこから真上に光が直立し、亜獣に大ダメージを与えるのである。他の呪文は見た目にあまり派手ではないので、このティリオスの視覚効果は初めて見たものを驚かせる。先程言葉を漏らした村木だけではなく、隊員全員がその現象に驚きを隠せないのである。この呪文によって、ボスである剣を極めしものは倒れ伏し、消滅していった。
「あ、物質回収します。ティリオスなんかすごい」
 こう言葉を漏らしながら、堀越 希巳江が物質の回収に向かう。このボスを倒せる方法はティリオス以外にないのはわかっていたので、戦士3人も特に戦ってはおらず、ダメージを受けてはいない。戦闘が始まってすぐに成宮がティリオスを唱え、それで戦闘が終わったのである。
「成宮くん大丈夫?」
「だ、だいじょばんっす。力が入らんっす」
 ティリオスを唱えた成宮がふらついているのに気づいた紺野 智帆が声をかけると、成宮はそれに力なく返事を返す。ティリオスの詠唱はTNT爆発とは比べ物にならないぐらい魔力の消費が大きく、1発唱えるだけで体中の魔力が枯渇する程の影響があるのである。この後、物質回収を終えた堀越が合流するのを待って、本日はこれにて探索を終了することにしたのである。

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