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1990年3月10日(土)

【ハイライト:山口 可奈・太田黒 佳美】
「最終的に応募総数は97名ですか」
「結構な倍率になったわね」
 目の前に束ねた募集用紙を見ながら山口 可奈が口にした言葉に太田黒 佳美が言葉を続けた。午後9時を過ぎたスナック『ハイライト』。本日は客も多く、順番にカラオケを歌う声が響いている。いつもはボックス席に座る山口と太田黒だが、本日はカウンターでお酒を楽しんでいる。たまに座るカウンターで飲むお酒はこれはこれで良いものだ。
「今回から説明会1回になって、適性試験と身体検査で60人に絞るんだよね。何を基準にするんだろう。37人がそれで落とされちゃう」
「わからない。でも検査結果についてはゼーレに提出してゼーレで合否を判断するみたいよ」
 山口の疑問に太田黒は自分が知っていることを説明する。1期の時も適正試験からの職業の判断はゼーレが行なっていたので、特段ゼーレの関与については驚きはないが、基本的に2人ともゼーレという組織はあまり好きではない。
「変に間違った判断だけしてくれなければいいけどね」
 そう言って山口はウイスキーの水割りを口に運んだ。

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