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2004年4月30日(金)

【熊大第5迷宮:勇者王ガオガイガー部隊】
「ガガガ、ガガガガオガイガー」
「ガガガ、ガガガガガオガイガー」
「あーうるさい!」
 静寂を切り裂くような稲見 正一郎の熱唱に続けて、板野 幸美が元気いっぱいに歌い出すと、集中して探索を行っていた岩川 真悟が集中を切らしてしまい、キレ気味に叫んだ。ここは熊大第5迷宮。本日も勇者王ガオガイガー部隊は地下3階を訪れている。いつものように岩川が集中してボス部屋の場所の探知を行っていたが、静寂な雰囲気に我慢ができなかった岩川が思わず勇者王ガオガイガーのオープニングを歌い出し、それに板野も追随したのである。だが、これで集中が切れてしまった岩川は結局ボス部屋の探知を行うことができず、思わず怒りの声を上げてしまったのである。
「まあまあ、真悟そう怒るなよ」
 かなりイラついている雰囲気の岩川の肩を軽くたたきながら稲見が声をかける。まるでイラついている原因が自分ではないような行動であるが、いつも目にする光景なので周りも別に特に何も思わなかった。
「邪魔せんで欲しいな」
「いやー、でもあの沈黙なかなか辛いって」
 少しずつ気持ちを落ち着かせながら岩川が言葉を発して、それに稲見は変な言い訳をする。確かに岩川がボス部屋を探索するために集中に入ってから15分が過ぎようとしていたのだ。個人の性格にもよるのだろうが、元来明るくてお喋りな人間にとって15分静かな空間で黙っておくのは結構辛い状況なのである。
「確かに少し待ち時間緊張するよね」
「時間切った方がいいかもね」
 沈黙に対する感想について同じような意見を木寺 菜穂美が発し、それに下里 由理子が解決策を提示する。時間を区切らずに出来るかどうかを待つというのは、いつまで沈黙に耐えないといけないのかがわからない分、より辛さを感じるのであり、例えば15分なら15分と時間が決まっていれば、辛さも和らぐのではないかとの意見である。
「私もそう思うわ。というか私たちそうしてたし」
「そうなんだ。言ってくれれば良かったのに」
 前の部隊での話を前野 諭子が口にし、それを聞いて下里が少し不満げな声で返事を返した。この話し合いの結果、次回からボス部屋探索は10分で可否を判断することに決め、本日はこのあと通常亜獣と数回戦闘を行い、探索を終了した。ちなみに前野が以前の部隊で行っていた探索時間を設定するということを言わなかったのは、単に前野にとっては沈黙は苦ではなく、別にいつまで続いても平気な気質だからである。

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