見出し画像

2004年6月9日(水)

【AXIS:外口 デニム・桑野 絵梨花・富田 剛】
「あ、デニムだ。久しぶりー」
「おー絵梨花ちゃん久しぶりだね」
 店に入った瞬間に桑野 絵梨花から声をかけられた外口 デニムは右手を上に挙げながら返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』ゲーセン部。夕方過ぎの時間となっており、店内は非常に落ち着いた雰囲気である。いつものように学校帰りにここに寄って、宿題などをやっていた桑野であるが、入り口から外口が入ってきたのに気づいて声をかけたのである。最近冒険者しての業務以外にも色々と忙しかった外口は久しぶりに『AXIS』にやってきたので、桑野と会うのも久しぶりだったのである。
「デニムくん。久しぶりだね。はい。お茶どうぞ」
「ありがとうございます」
 外口の来店に気づいた富田 剛が声をかけて、冷えたお茶缶を差し出し、それを礼を言いながら受け取る。久しぶりにやってきたので、店内の雰囲気が多少変わっており、前回来た時にはなかったようなゲームがいくつか散見される。特に最近新しいゲームには興味は無かったので、以前からプレイしているダンスダンスレボリューションがあることにとりあえず安心した。
「そういえば、今どの辺りを探索してるの?」
「今ですか?この前、第5迷宮に入ったばかりです」
 少し興味があった探索の深度について富田が質問し、それに対して外口は簡潔に返事を返した。それを聞いて富田は軽く笑顔を浮かべながら、言葉を続ける。
「いよいよデニムくんも俺の知らない世界に行ってしまったか。同じ話題が出来なくなったな」
「まあ、店長の現役時はそもそも第5迷宮無かったですからね」
 自分の探索進捗が富田を超えてしまったことを認識した外口は、それが時代によるものだと返事を返す。ただ、もちろん富田の現役時代に第5迷宮は存在しなかったが、別の理由で第2迷宮クリア前に引退をしているので、もし第5迷宮が存在していたとしても富田に第5迷宮探索は不可能だったのである。
「結構大変らしいから頑張ってね」
 こう声をかけて富田は桑野の勉強の様子を見にいく。その背中を見送った後で外口はダンレボの筐体に向かって歩いて行ったのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?