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1990年10月29日(月)

【熊大迷宮:黒髪てへろく部隊】
「いやー、めちゃくちゃ重たいですからね」
「モテないってことであってる?」
 少し考えた後で発した富田 剛の言葉を聞いて、菊川 竜二が質問を返した。ここは熊大迷宮。黒髪てへろく部隊は本日も地下2階を訪れており、天才戦を行っている。天才戦は天才対戦士3人の構図となり、後衛3人は特にやることがない。もちろん戦士がダメージを回復する必要があれば、その点は僧侶の大石 泰三が対応するが、罠解除士の富田と魔術師の菊川は本当にすることがないのである。そこで戦闘中は何となく雑談をするような時間となり、現在は女性関係の話題となっているのだ。
「そうなんすよ。全くモテないんすよ」
 質問に対して富田がため息をつきながら返事を返す。現在彼女がいない富田であるが、決して彼女が欲しくないとかではなく、単に彼女が出来ないのである。
「まあでも俺も彼女いないしね」
「俺と菊川さんだと状況が違いますね」
 自分も現在彼女がいないと口にした菊川であったが、それに対して富田が意見を返す。菊川は見た目非常にイケメンであり性格も爽やかで女性にモテない要素がない。彼女がいないのではなく、彼女を作っていないだけなのだ。
「でもまあ、彼女がいれば良いってもんでも」
「お前が言うと切実やな」
 この3人の中では唯一彼女がいる大石が言葉を漏らし、それに菊川が突っ込みを入れる。大石の彼女は非常に可愛く、大石のことが大好きなのであるが、少し性格に難があるのだ。
「でもまあお二方が安心して東京に行けるようにそれまでには頑張って彼女作りますわ。あ、回収行ってきます」
 こう話している最中に戦士3人が天才を撃破したので、富田は物質回収に向かった。ちなみに菊川と大石は関東の企業に就職が決まっており、来年の2月には冒険者を引退することが決まっているのである。

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