1990年3月14日（水）

【罠解除士鍛錬場：富田　剛・森　瑠美・林　真一郎】
「森さん、これお返しです」
　林　真一郎は可愛くラッピングされたクッキーを森　瑠美に差し出す。午前中の罠解除士鍛錬場。本日は林と森、富田　剛が鍛錬を行なっている。本日はホワイトデー。バレンタインデーにチョコレートをもらった男性が女性にお返しをするというイベント日である。先月のバレンタインデーにチョコレート　をもらった林が森にお返しのクッキーを準備していたのだ。
「林さん。わざわざお返しいらなかったのに。でもありがたくいただいておきます」
　そう言って森は嬉しそうにクッキーを受け取る。
「森さん、僕も準備して来ました」
「え、私富田君にチョコあげてないわよ」
　富田が差し出したクッキーを見て森が驚きの表情を浮かべる。
「僕がチョコもらってないのは2月14日に会ってないからですよね。たぶん会ってたら林さんや四谷君と一緒にチョコを貰えてたはずだと思うんですよ。だからそのお返しです」
　そういって富田は森が受け取るようにクッキーを近くに差し出す。これをみて森は口を開く。
「富田君ありがとう。じゃあ受け取るわね。でも誤解がないように言っておくと、あの日鍛錬場に富田君のチョコは持って来てないわよ」
「まじすか？ガビーン」
　森の想定外の言葉に富田はあまりものショックにこう声をあげ、足元がふらついた。そんな富田を笑顔で見つめる森と林であった。