2004年3月25日(木)
【冒険者組織長官室:足立 賢二・村川 慎太郎・横山 真弓・松島 明日香】
「報告はわかった。大規模な部隊編成が入るかもしれないが、混乱なきよう実施して欲しい」
いつものように淡々とした口調で村川 慎太郎は言葉を発した。ここは冒険者組織長官室。本日は朝から島田 笠音が引退するという話が冒険者組織中に流れている。通常の引退タイミングは2月末であり、それ以外のタイミングで引退することは契約違反となり、それなりのペナルティを受ける。今年は珍しく2月末で引退する冒険者がいなかったので、全員が契約を更新したタイミングでの島田の引退話となったのである。すると、実は引退を考えていたが、2月末で言い出せなかったという冒険者がちらほらと出始め、そのことが教官の耳にも入ったのである。確かに契約は自動更新であり、2月末での継続意志確認を今年はほとんど行っていなかった。そのことが2月末に引退者が出なかった1つの要因といえるであろう。そこで今年は特別に3末での引退を昨期扱いにして、ペナルティなく引退できる様にし、冒険者全員に継続意思を確認したのである。すると意外にも結構な人数の申告が上がったのだ。
「かしこまりました。3月も残り数日ですが、全冒険者に確認の上、部隊再編まで実施いたします」
この様に述べ報告に来た横山 真弓と松島 明日香は部屋を退出していく。2人が部屋を退出したのを確認した後で村川が口を開く。
「結婚の話は知っていたんですか?」
「ああ」
質問に対して足立は特に考える様子もなく簡単に答える。実質的な島田の父親代わりになっているのは足立なので、島田が結婚相手を連れて挨拶しに来たのかなど頭の中で想像して少し笑みがこぼれた村川であるが、そのことを質問するのは我慢して自身の職務へと移ることにした。
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