見出し画像

活字愛がないと活字疲れもありえない、もんどりを打つ緑のタヌキ集団、全身吸盤野郎、

四月十六日

タイバーン川では、僕らはバッキンガム宮殿の下に立った。バッカスは下水道探検のほかのメンバーを見てこういった。「おまえらは、イギリスの女王とお茶することは決してないかもしれないが、これで彼女の糞のなかには立ったと言えるぜ」。下水道は偉大な階級平等主義者なのだ。

ブラッドリー・L・ギャレット『「立入禁止」をゆく』「5 地下の聖杯」(東郷えりか・訳 青土社)

午前十一時一〇分。紅茶、マッシュポテト。鼻詰まりの予兆あり。きのう諸江のブックオフへ行った。往復四時間以上歩いた。買ったのは、ヨーゼフ・ロート『果てしなき逃走』、チャールズ・ブコウスキー『パルプ』、リンダ・ノックリン『絵画の政治学』、外山滋比古『日本の文章』、穂村弘/東直子『回転ドアは、順番に』、『20世紀イギリス短篇選(下)』、川上未映子『夏物語』、三島由紀夫『岬にての物語』『殉教』『幸福号出帆』『肉体の学校』、阿刀田高『ブラック・ジョーク大全』、島田覚夫『私は魔境に生きた』、『白秋抒情詩抄』の十四冊。締めて約三七〇〇円。岩波文庫の『井月句集』は買ったほうがよかったか。書店からの帰り道には大抵この種の後悔が付きものだ。百円だったら迷わず買ったんだけど。このごろ酔うと句集や歌集ばかり読む。例の散文疲れのせいかしら。

柳から出て行舟の早さかな

井上井月

清爽でいいじゃないか。むろん柳の木からニョキっと舟が出てくるわけじゃない。それはそれで愉快なイリュージョンだけど。「ソーダ水の中を貨物船がとおる」(荒井由実)みたいなものさ。そういえば中日に柳裕也っていたね。きょねん防御率2.44で4勝11敗だった実に哀れむべき投手。
読売新聞の一面に「イラン、イスラエルに報復」とある。この新聞は実質的には対米追従でしかない日米同盟を政府と一緒になって祝い兼ねないくらい批判精神に乏しい新聞だから基本的には信用していない。限りなく無筆に近い爺さんからたまたま回って来るから読んでいるだけ。誰かが読まないとそれこそ「資源の無駄遣い」だからね。まいかい読むたび新聞の堕落ぶりを思い知らされます。切り抜きたい記事もほとんどない。楽しみなのは長谷川櫂の連載コラム「四季」くらい。
さいきん何でもいいから日本語以外の文章を書き写したくて仕様がない。散文疲れだけじゃなくて日本語疲れもある(あるいは言葉疲れ)。一日の大半を読んだり書いたりしているから無理もないか。散歩中でさえイヤホンで言葉漬けだからな。ハムレット「ことば、ことば、ことば」。いずれ『精神現象学』のドイツ語原典でも書き写したいね。ヘーゲルは好きでも嫌いでもない。ただカントに比べれば荒削りだとは思う。もっともカントに比べればたいていの哲学者は荒削り過ぎるのだけど。私は自分以外の哲学者は少しも信用していない。
今日このあとどうしようか。いちおう図書館通いは週休二日と決めてるから無理に行かなくてもいい。ニート論をはじめ、哲学論考とか童話とか、書きたいものも溜まっている。でもきょうは行こう。そのまえに麻婆豆腐食おう。そのまえに新聞だ。このまえ買った佐藤製薬の点鼻薬ナザールを使ったら鼻詰まりの予兆感はたしょう薄まった。たまたまかもしれないけどそれでもいい。君の行く道は果てしなく遠い。モンゴル800円。エンジェルカラー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?