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社会不適合者黙示録 思春期編(2)

その遊びというのは、全体の平均が楽しめるものであることが基本だ。つまり、一個人の意見は大きな声にはならないということである。

大きく蹴り上げたフライボールを両手でキャッチするゲーム。一番ヘタだった奴は遊び場近くに住む女の子に告白する罰ゲーム。体格が人より劣る僕はうまくできず、刑を執行する羽目になった。玄関前へ向かう様子を他のやつらは遠くから見ている。逃げられない。
その女の子に対しては、好きとか嫌いとかじゃなく、ただただ勝手に押し寄せられるのは迷惑だろうと考えたので、チャイムを鳴らして出てきた後は告白ではなく事情を話すことにした。奴らは離れたところにいるので声までは聞こえないだろう。実際は話をする前にドアを開けた瞬間に察せられた。よくこういう被害にあっているらしい。お互いがその被害状況を憐れみあって、僕はフラれたことにしておいた。

このゲームの誰が楽しいのだろうか。そう、自分以外である。大きな目で見れば、全体的に楽しんでいるのである。そこで自分はこのコミュニティでの存在意義について深く考えることとなった。ここにいれば楽しめると思っていたが、自分が搾取されるやり方で成り立っている集団であったのだ。

この疑問は晴れることなく、中学に進学することとなった。
それでも入学当時は希望を持っていたのだろうか。その希望は次第にではなく比較的速やかに打ち砕かれることとなる…

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