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初めて付き合った元彼が未来の縦割れ*だった話

色々名前とか部活とかぼかして書くぜ!!!!!

時は高校時代に遡る。だいきちは頭が悪すぎて、なぜか生徒の根性を見るために山を登ったり5キロマラソンをさせられる謎の高校に入学する羽目になった。

ちなみに制服はセミみたいなリボンタイ、学年カラーがそれぞれにあり、だいきちは絶望的に似合わない謎のピンクのジャージに三年間身を包んだ。親からは歩く魚肉ソーセージという不名誉なあだ名をつけられたが、まあこれは本編に関係ないので深くは語らない。

高校一年生の時、だいきちに初めて野球部の彼氏ができた。
無論甘酸っぱい青春とか期待するだろう、高校生だもの。その初めての彼氏の名前を、ひとまず勝男くんということにする。

勝男くんは普通科コースで、だいきちは進学科コース(バカなのに)。そして当時は某ヤンクミが活躍するドラマが流行っていたので、普通科コースの頭悪い男子は総じて顔がいいんじゃないか。と、進学コースの女子どもは謎のマウントと共にてめえの面を棚に上げた男の顔面格付けバトルに燃えていた
だが残念なことに普通科は全ぶで4クラスあり、それもほぼ女子校じゃねえか!と突っ込みたくなるくらい女の比率が高かった。
35人クラスだとしたら、男子5人しかいねえみたいな具合だ。
そして普通科クラスの女子はというと、皆勉学を捨てた代わりに己の身なりに力を注いできたので、俄然進学コースの女どもよりもレベルが違いすぎた。(ちなみに普通科から芸能界へ行った女友達もいます、それくらい爆美女もいたのです)

つまり進学科の女子たちがヤンキーイケメンを楽しみに普通科の棟に行ったら、爆美女ヤンキーどもが睨みを聴かせていたって話である。
無論そこで「何見下してんだブスゴルァ!!!」とキャットファイトが勃発、根は真面目インテリイモジョVS語彙力のない美女ギャルという、一大戦争が新学期早々始まった。
そんなことを全校集会で知っただいきちはというと、当時はヴィジュアル系にハマっていたモブだったので、化粧っ気のない男に恋心なんて誰が抱くかとこじらせた孤高を発揮して無事でした。

そしてその一大戦争が起こったあたりから、一学年の普通科の男子に変化が起きたのである。
粒揃いの普通科で逆ハーワクテカとなっていたのは最初の一週間のみ、目の前で恐ろしい形相で喧嘩を繰り返す女子、そして普通科男子は圧倒的少人数のため、顔の出来が良くても女の奴隷に成り下がるというまるで異世界ファンタジーみたいなことが普通科男子の身には起こっていたらしい。
顎で使われる男子、そしてバナナオレを買いに行かされた挙句に、何かにつけて童貞扱い。寒いからと上着を強奪されて返してもらえない。知らない間におれのアドレスが出回っていて、謎のポエムが届くようになった。もみたいんだろ童貞と言われて胸を触らせようとしてくる。怖いから断ったらキンタマの小せえやつだと詰られたなど。そんなことを、眉毛検査に引っかかったせいで反省文を書かせられていただいきちのいる隣の部屋で泣きながら生徒指導担当の教頭に語る男子たち。

無論そんな訴えに、顔面鬼瓦として名高かった教頭も、戸惑いを禁じ得ないようだった。
つまり、思春期なら可愛い彼女とかも欲しいだろうお年頃の普通科の男子たち。しかし家畜扱いをされたせいで、最終的な軍配は進学科の女子たちに上がっていたのである。

これは余談だが、普通科のそこそこイケメンの彼氏をゲットした女友達が

「ねえねえ私のどこがよくて付き合おうって言ったの??」
「だってあかりは授業中に廊下でピクニックとかしないじゃん」

と、最高に意味ワカランオブザイヤー発言をあかりの耳元で囁いたという惚気話は、今でも私の中で最高に面白かった思い出の一つだ。

話が長くなった。そして教頭に訴えた普通科の男子たちの中に、もちろん勝男くんもいたのである。
ちなみに勝男くんは、一年生男子の中でも顔面の出来が大変に良かった。故に爆美女だちの餌食になっていた一番の被害者である。
似ている芸能人で言うと、頬に十字傷のある剣士役の人である。
そんな彼と私が出会ったのは、生徒指導室。そう、先に述べたあの場面である。

小説を書くのは得意だが反省文を書くのは苦手な私は、マジで二時間くらいかけてようやく反省文を提出。その帰りに、一人残って泣きながら訴えを続けていたらしい勝男くんと下校の時刻が重なったのである。

靴紐を結んでいる勝男くんの頭の上に、まさかガラケー落とすとは思わないじゃないですか。

確かに反省文書き終わったハイでストラップ振り回してたけど悪気はなかったんです。

泣きっつらに蜂状態の勝男くんの、割と結構キレてる目がだいきちをとらえたんだが、問題はそこではない。
勝男くんは推しと推しが熱いキスをかましているお宝画像を待ち受けにしているだいきちのガラケーを開きやがったのだ。
もちろん先に述べ後おり男のお化粧バンドが好きだったので、熱烈なキスも男同士のものである。

「なにこれ」
「ぁす、へい、あれっす、すんません、えひひ」
「男同士のキス? こんなん好きなの? 好きじゃなかったら待ち受けにしないよね? なあ好きなんだろ。どうなんだよ

想像してみてほしい。真顔のイケメンのゴン詰を。

「好きです。」

と白目剥きながら、側から見たら何故かだいきちが告白しているような状況に追い込まれてしまった。
だけど驚くのはそこではないし、当時勝男くんに確認したらやはりあれは告白ではないとお答えいただいたので、だいきちの↑の好きです。はノーカウントである(大事なことだから強調しておく)

そしてその日から勝男くんに会うたびに、これも好き?と別のバンドのキスシーン画像を見せられたり、逆におすすめのキスシーンがあるライブの円盤を貸し合う中になる。今思えば最高に青春していた絵面なのだが、互いに数少ない萌えを見出したソウルメイトだと思っていたのだ。
高校生が噂好きなのは今に始まったことでもない、当時もそうだったせいか、あいつら二人、いい雰囲気じゃね?となったのだ。
何より勝男くんは顔がいい。背も高い、髪の毛は野球部なので坊主だが、伸びたら最高に爆イケメンになるだろうことが確定された未来を背負う男だ。
そんなもんあたいだってまんざらでもないじゃん。

だから勝男くんから
「だいきちさばさばさばしてるし平気そう、付き合ってみない?」とお言葉をいただいた時、金メダル争いのラストバトルを制したかのようなテンションで心の中でガッツポーズをしてしまった。

もしかしたら、勝男くんと恋愛のABCをこなしてしまう!?やだもーーー明日からどんな顔して会えばいいの?勝鬨を上げた将軍みたいな顔??とか調子乗ってた翌日。勝男くんから渡されたのは交換日記である。

普通に考えて交換日記って小学生かよ!!と周りの友達からはドン引きされたのだが、だいきちは何せ勝鬨を上げた将軍だったので、「これも戦術の一つよ」などと謎のドヤを周りにかますお付き合いがスタート。

一ヶ月でキスやら、早い人はもうその月日が経つころには大人の階段を上がっていると聞いていたので、だいきちもいずれ勝男くんの安全装置を外す日が来るんだろうなと思っていた。

まあそんな日は一生来なかったんだけどね。

おかしい、一ヶ月経っても手すら繋がない。毎日一緒に登校しているけど、彼女と言うよりも推しを前にしたカメコの心境に近い。一体どうゆうこと?交換日記だけが二人を繋ぐじゃん。
そして思い出せる限りのやり取りは以下である。

勝男
今日は練習試合をしてユニフォームが汚れるほど頑張ったよ
だいきち
勝男くん、今日も部活動を頑張りましたね。朝はお腹が痛いと言っていましたが、今はどうでしょうか

勝男
今日はサッカー部のマスミ先輩が見える場所で素振りをした。男の中の男、顔がかっこいい。
だいきち
勝男くんにも現実で推しができたのですね。良かったです。あなたの顔もかっこいいですよ

勝男
マスミ先輩にいちごオレを買ってもらった。すごい、マスミ先輩かっこいい
だいきち
勝男くん、私もあなたにいちごオレを買ってあげました。可愛いでしょう

勝男
聞いてくれ、俺は今度マスミ先輩と遊びに行く。だいきちからみてかっこいい服装ってなに
だいきち
勝男くん、おすすめのコーディネートを挟んでおきました。当日楽しんでください、マスミ先輩とのお話が今から楽しみです

交換日記というよりも学級日誌っぽくない?? え?? 私担任じゃない?? 

勝男くんとのお付き合いの三ヶ月目が突入、しかしそのころになると、結構真面目に「おい勝男。マスミ先輩への語彙力増やせよかっこいい以外で」
「かっこいいって呼ばれた方が男は嬉しくない?」
「ばかやろー、本当にかっこいい人はな、慣れてんだよ。だから見てもらいたいなら語彙力で差をつけろ」
「だいきち……俺本とか読めるかな」
「読めるさ、お前ならな」

などとクソ真面目にアドバイスをするソウルメイト再びになっていたのである。
そして勝男くんとの交換日記も二冊目に入り、勝男の心境に変化があった

勝男
なあ、やっぱ男が男好きって気持ち悪い?
だいきち
人間が人間好きになってなにが悪いんだ

勝男
マスミ先輩引退すんだって、俺ら二年だぜ
だいきち
覚悟決めろよ、骨は拾ってやるぜ

勝男
俺、お前だから付き合えると思ったけど、やっぱり男が好きなんだ、マスミ先輩が好き
だいきち
行ってこいよ、交換日記で振るのは最高にセンスないけどな

とまあいつの間にか青春BLの1ページにだいきちがモブで参加するという奇跡
この頃から腐っていた私は、マジで振られても痛くも痒くもねえ、むしろ拳に汗を握りしめながら勝男の恋を応援していた。

今思えば、女子に迫られてあんなに泣いていた時点で気がつけば良かった。だいきちも初めての彼氏だから浮かれてはいたが、彼女というのがどういうものかを体験してみたかったという好奇心で付き合ったようなものである。
後に勝男にそのことを言ったら「うけぴ」の一言で終わったが、マジでだいきちと勝男はソウルメイトだった。

結論から言うと、勝男の告白は成功した。

マスミ先輩が勝男と同じゲイだったのか、それとも人として勝男が好きだからお付き合いをすることになったのか、果てはまた別の理由だったのかは聞けなかったが!
勝男は交換日記で「マスミ先輩にホームラン打った」と、くっそわかりにくい勝利報告をしてくれたので、うおおおおおおおお!!!!!とその瞬間だけ初めてのハグをした。
その後残りの学生生活で付き合った男が嫉妬深かったこともあり、勝男とは直接話す機会がめっきり減ってしまった。だいきちが三年の時に自称親友の同級生とその男が図書準備室で連結していた話だけは笑いながら話したが。勝男も在学中は彼氏がいることを隠したがっていたので、だいきちからあまり関わりに行かないようにしていたのだ。
その後だいきちと勝男が卒業して、勝男は就職、だいきちは服飾の専門学校に進んだ後に、久しぶりに会おうよと言う話になった。

久しぶりに会った勝男は、オネエになっていて爆笑した。ちなみに今は某都でオカマバーのママをやっている。

私の男運のなさを容赦なく切り捨てたり、陰陽師の彼氏の話を酒のつまみに泣きながら笑い合うトッモになっている。
高校時代、勝男はどっちだったの?とようやく聞けたのは大人になって随分経った頃だ。
勝男は笑ってこう言った。

「私、高三の頃から今までずっと縦割れアナルよ」と

好きな漫画家さんはおげ◉つ田中先生だってよ!!!!!!!

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