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『雌蛇の罠&女豹の恩讐を振り返る』(10)女子アマレスラーvs男子プロボクサー。

NOZOMIが立ち上げたNLFS所属女子選手を登場させてからというもの、あまりにも登場人物(キャラ)が増え過ぎ『女豹の恩讐』は群像劇化していきます。風呂敷を広げすぎてそれを畳むのに苦労、、その結果、物語は72話まで伸びてしまった。本当はもっと『雌蛇の罠』のようにシンプルにしたかったのですが、龍太、麻美の成長物語なので致し方なかったのかもしれません。
只、漫画みたいにならぬよう気を付けたつもりですが、所詮これも漫画と同じファンタジーですから矛盾ありですね?

そんなファンタジーのような異性格闘技戦をここでは多く描きました。

NOZOMI以外のNLFS所属女子選手で最初に登場させたのが、女子高生アマレスラー桜木明日香。彼女は次期五輪強化選手であり出場すればメダルも狙える女子レスリング界期待の星。どういう経緯で彼女が男女対抗格闘技戦に出場したか?は、長くなるので省きます。相手はボクシング日本フライ級1位の真鍋俊之。この試合の模様は本編『女豹の恩讐』(7)名勝負 を読んでいただければ幸いと思います。
五輪メダリストレベルの女子アマレスラーと同体重のボクシング男子日本ランカーが総合格闘技ルールで戦ったなら? これは想像力を掻き立てられますよね?

試合は狂犬との異名ある真鍋が、ケンカファイトでパンチを振るってくる。明日香は打撃に対する恐怖心と戦っていた。それでもどうにか胴タックルから真鍋の身体を抱え上げるとマットに叩きつけた。固め技を狙うも、フォールしたら勝利のレスリングとは違い仕留め方に戸惑っている。そうこうしているうちに寝技10秒ルールからブレークを命じられてしまうのだ。

まだ18才の女子高生に抱え上げられ馬乗りになられた真鍋は完全にキレた。彼は子どもの頃、虐められていたというトラウマがあり舐められると狂犬と化すのだ。
ファイト再開後は狂ったように襲いかかってくる真鍋に、明日香は恐怖心から滅多打ちにあい無念のレフェリーストップ。

それを観ていたNOZOMIは思う。
レスリングという限られたルールに守られてきた中で戦ってきた明日香には、打撃からの恐怖心を克服することが出来ない。対する真鍋は舐められたくない一心、相手が女子なんて関係なく必死に攻め立ててきた。貧しい生い立ち、小柄で虐められっ子だった真鍋には怨念のようなハングリー精神があった。はっきり気迫の差が出た。
これはボクシング対レスリングではない。ケンカなのだ!それでも、桜木明日香にとっては良い経験になったと思う。

NOZOMIは桜木明日香に期待していた。
格闘技において、女が男より劣るのは体力的な面もあるが、それより “女が格闘技なんてするものではない” という古い考えから、そのチャンスを与えてこられなかったことが大きいとNOZOMIは考えている。
当然、それを目指す女子は少なく男子と女子とではその競技人口が圧倒的に違う。競技レベルはそれに比例するのだ。
昨今、女子の格闘技人口は増えてきたとはいえまだまだの感がある。しかし、50㎏以下の軽量級となればその男女比の割合がぐっと接近してくるのではないか?

軽量級ならば将来的に女子が男子の階級に食い込める。否、その王座に就く女子が出てきても不思議ではない。それを目指せる逸材が桜木明日香?
そのためには、彼女の精神的弱さが問題であり、敢えて狂犬の異名を持つ真鍋俊之というラフボクサーと戦わせた。
デビュー戦に惨敗した明日香は、NLFS道場での独自のトレーニングで打撃に対する恐怖心を克服。真鍋俊之とは再戦して今度は圧勝する。その後、MMA男子最軽量級で女子ながら王座に一歩手前まで迫った。

ちなみに、故堂島源太郎の愛娘「麻美」も後にNLFSに入校するのだが、麻美もレスリング出身であり、入校後、最もお手本としてその技術を盗んだのが、この桜木明日香の高速タックル。
総合格闘技において、そのバックボーンとして最も有効なのはレスリングであると私は感じるのです。アマレスのテイクダウン能力は最大の武器であり、相手の身体をコントロールする能力も高い。まぁ、私は格闘技経験がないので違っていたらごめんなさい。あくまで主観です。

桜木明日香から高速タックルを学んだ堂島麻美は、後に『女豹・ASAMI』と化し、防ぐことは絶対不可能と云われたミラクルタックルで格闘技界に旋風を起こす。


さて、横道に逸れてしまいましたが、桜木明日香の次にNLFSファイターとしてリングに上がったのが鎌田桃子。彼女は堂島源太郎戦後にリング復帰したNOZOMIと、女子格闘技日本一決定戦を行っている。
鎌田は、格闘技をやっているくせにチャラチャラとミニスカートを穿いてモデル活動までやっているNOZOMIが好きではなかった。自分は格闘技に命を懸け、女であることを捨てているのだから…。
完敗した鎌田は、NOZOMIの提唱する新たな “女子流格闘技ノウ・ハウ” に感銘を受け
NOZOMIが立ち上げたNLFS創設時には、その片腕として協力することとなった。
それ以来、道場での鬼コーチとして若い女の子を指導しているのだが、選手としてもリングに上がる。

相手は帝国プロレスの中堅レスラー、ハリケーン羽生。NOZOMIと戦ったことが有るとはいえ、鎌田とて男と戦うのは初体験。
羽生はプロレスラーだけあって、ガチの試合であっても鎌田の技を受け止めた。それが素晴らしい技の攻防となって場内は大いに湧いた。プロレスは男対女であっても名勝負になることが可能。
後半はスタミナ切れしてきた羽生を攻め立てるも判定に持ち込まれる。
3−0の判定勝ちであったが、この経験は鎌田桃子のその後の人生に大きな影響をもたらすことになるのである。

鎌田桃子は、堂島麻美がNLFS入校テストを受けに行った時の面接官である。
テストに訪れる女の子の大半は、鎌田に鋭い目で睨みつけられると震え上がり帰ってしまうものも少なくない。
麻美はそんな鎌田桃子の目を真っ直ぐ睨み返すとニッコリ笑った。

あの娘の目は女豹よ!

鎌田は周囲にそう感想を漏らした。

“女豹ASAMI” のニックネームは、鎌田桃子がその名付け親なのかもしれない?


そんなある日。
夏の格闘技大会でNLFS道場の練習生である少女が、格闘技戦デビューすることが主催者側から発表された。

シルヴィア ・滝田(18)

まだ高3の女子高生であるが、彼女は空手界では有名であり、そのファイトスタイルから「ケンカ空手少女」の異名を持つ。
父はアフリカ系アメリカ人で、元ボクシング・ライトヘビー級世界ランカーであり、恐るべき身体能力を持つ。

その対戦相手は?

元幕内力士、巨漢 雷豪である。


つづく。

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