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心の底から好きじゃない、ごめん。⑧

クォーターの彼は

黙っていたら近づきにくい雰囲気なのに
話したらとても気さくで

屈託のない笑顔が
何よりも好きだった

だけど
たまに見せる寂しそうな目が
印象的だった

きっと
人をまっすぐ見すぎて疑わない
寂しがりやの性格が表れていると
わたしはどこか感じていた




彼からの連絡はマメにくるようになった

お互いの日々の近況をメールしたり

日常の些細なことや出来事

写真を送りあったりした


それだけで幸せだった

関係性がどうであろうと
彼と繋がれている事に幸せを感じていた


仕事が終わったら
すぐに携帯を見る毎日

彼からのメールがあるだけで
生活の色が変わった


同じ職場の人には

"最近楽しそうだよね"


そう言われて
周りからもわかるレベルのわたしは
大人げなさを感じて少し恥ずかしかった




わたしは彼になにも求めなかった


18の時は好きな気持ちを抑えきれず
伝えては彼に求めるばかりだった

彼が仕事を頑張っていること
夢に向かって
毎日努力していることも知っていた

サービス業の彼は
仕事が終わってからも

勉強に追われていた


帰宅する時間は23時を廻ることも多々あった





ある日 女友達とお茶をした

彼の話をした


『いい人だしさ わかるよ

   ほんと好きだよね

  でもさ その気にさせておいて
  何も進展ないのはどうなの?
 
  REIの気持ちは
  とっくの昔に知ってるわけじゃん   
  
  2回も告白してるんだし

  関係性ハッキリさせないまま 
  帰るって…その後もなにもないわけでしょ』


現実的な意見だった


『 確かに…そうだよね
   でも負担になりたくないんだよね』


『REIがいいならいいんだけどさ

   こういうのはタイミングも大事だから
   早く聞いた方がいいんじゃないの』



わたしは付き合いたいのか
付き合いたくないのかそれもわからなかった

もちろん彼の特別にはなりたかった

ただハッキリさせたら
もう会えなくなるかもしれない

この楽しい日常がまたなくなるかもしれない


自分からは聞けなかった


"惚れたもん負け"

うまい言葉があるものだ



その夜彼からメールがきた


『REIと話したいな  』


彼と久しぶりに電話した

電話って不思議で
離れているのにすぐそこにいるように感じる

たわいもない話を1時間ほどして

『また明日ね』

そう言われて電話を切った

仕事が忙しい中
電話をくれたのは

23時半だった

こんな毎日がずっと続けばいいのに…

そう思った



彼の誕生日が近づいていた

会えないけど
せめて電話でおめでとうを伝えたかった


『電話したいんだけど 
   時間あったら教えて』


当日、そう送った


彼から連絡はなかった


予定があったのかな…
本当は祝ってあげたかったな



0時を近づいたその時
電話が鳴った
 


『ごめん!メールくれてたのに
   仕事終わって今から帰るところだよ』



『忙しいのにありがとう
    今日誕生日でしょ?
    おめでとう伝えたくて
   
    お誕生日おめでとう! 』


『あーー、そうだ!
   すっかり忘れてた!
   ありがとう、嬉しい!』


『伝えたかったから電話したの
    疲れたでしょ ゆっくり休んでね』


『ありがとう、またひとつ大人になっちゃっ        
   たなーー』


疲れてるのは違いないのに
おちゃらけて彼はそう言った


少し話して電話を切った



5分後また電話が鳴った


『次はREIの誕生日だよね
   
覚えてるよ 
   
俺にもお祝いさせてね』


かけ直してくれた


数日後 来月休みの日に1日帰省すると
メールがきた



わたしの誕生日前日だった

待ち遠しくて指折り数えた




彼が帰ってくる日

わたしは駅まで迎えに行った
時間はもう夜遅くなっていた

早上がりして電車に駆け込んで帰省してくれた


『ただいま!』

『おかえり』

笑顔で迎えた


遅い時間で
何もわからない車を走らせた


『今日さ、実は俺ビジネスホテル取ったんだ
 あの…一緒に過ごしたくて

 あ、違うよ!
 やましい気持ちじゃないからね!

 前みたいに車で女の子も一緒に
 野宿させるなんてできないから
 気乗りしなかったら全然断って!』


恥ずかしそうに彼は言った
思わず可愛くて


『あはは、なにそれ〜
 下心感じる〜』


冗談で返した


誕生日を一緒に迎えてくれることが
嬉しかった

場所はどこでもよかった


ホテルについて

遅い時間に2人でテイクアウトして
ジャンクフードを食べた


物じゃない
お金じゃない
場所じゃない


誰と過ごすかでこんなにも全然違うんだ


心で思った
今日 彼と一晩過ごすんだ…


前も朝まで過ごしたけど
外だったし雰囲気は違った


『REI これ 
 おめでとう』


小さい可愛いリボンがついた箱をくれた

『開けていい?』

『うん』


中にはお洒落なバングルが入っていた

『かわいい…』

『よかったらつけてね。プレゼント!』

『ありがとう 大切にするね』

初めて彼からプレゼントをもらった

死ぬほど嬉しかった

真剣な表情で彼が話し始めた

『REI 俺と付き合って欲しい
 俺REIのことめっちゃ好きみたい
 
 離れてるけど あの頃より
 俺も少しは大人になったはずだから
 頑張れる気がするんだ
 
 すぐ会える距離じゃないし
 お互い仕事もあるけど 
 会える日を目標って考えて
 2人で…やっていけないかな』


彼からの告白
信じられなかった

大好きな人からの告白


『わたしも大好き
 あの頃から変わってないよ…
 嬉しい 泣きそう』
 

『あはは、なんで泣くのーーー!
 かわいいな』


そう言って抱き寄せてくれた



その日 初めて同じベットで
手を繋いで寝た


初めてキスをした


男の子とそんなこと
全てが初めてではないのに

まるで中学生みたいに
初めてみたいにピュアに感じた
 


けど一線は越えなかった



そこがまた彼らしくて可愛くて
また好きだと感じた


本当に好きだと感じた
ずっと一緒にいたい

そう思った


『お揃いの電話買わない?
 遠距離恋愛には必需品でしょ
 寂しい時もそれあればバッチリだよ』
 


笑顔でそう言ってくれた
かけ放題のプランがあるらしい


次の日2人で電話の契約に行った


お揃いの電話を色違いで買った


電話の裏には初めて撮った
2人のプリクラを貼った


本屋さんで見つけたアルファベットの
かわいいシールで
お互いの名前を電話に貼った


子供みたいなことをして
ひたすら楽しんだ


1日デートして
彼はまた笑顔で帰っていった



『次会える日、また決めようね
 電話あるしいつでも近くに感じれる
 次を楽しみに仕事頑張る!』


次会えるのはいつかな
夢みたいだった


それから2日に一回は
必ず電話をした
 

寂しさを感じた時は
彼を近くに感じることができた


母に報告した


昔彼と母を合わせたこともあった


『ずっと好きだったものね
 あんなカッコよくていい子に
 好きになってもらえて幸せだね
 よかったね
 
 また連れてきてね』


母は微笑みながら言った


その夜
彼に電話で母が言っていたことを伝えた

『今度またお母さんにもご挨拶したいな』

彼も嬉しそうに言ってくれた


『今度帰った時 
 うちの母にも会ってよ!
 REIのこと紹介したい』


嬉しかった


次の帰省は
2人の時間を過ごした後
お互いの母に会おうということになった


次の帰省は
年末

少し空くけど楽しみだ


だけど
今思うと
わたしが1番幸せだったのは

学生の頃の ただただ2人でいた時間
公園で花火を2人でして 抱きしめられたあの夜


あの瞬間だったかもしれない

やり直せるなら あの頃に戻りたい

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