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短編小説

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短い妄想文をまとめてみました。 お口に合えばよいのですが。
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#ショートショート

「来訪者たちの黄昏」 (短編小説)

 駅からすこし歩いた通りの両脇に、あたたかそうな灯りを抱えた店が並ぶ。  それぞれ思い思…

8

「つぐみの独立国家宣言」 (短編小説)

 そのため息はフローリングを滑り、リビングのソファーの上で弾んだ。  なぜなら、その所有…

11

「イカロスの翼」 (短編小説)

 白い機体に走る、鮮やかな青いライン。  流線形の終点に立つ尾翼には、スカイブルーの鷹を…

12

「聖母のように」 (短編小説)

 カフカの「変身」の主人公であるグレゴール・ザムザは、目覚めると毒虫になっている最悪な朝だ…

3

「3つの願い」 (短編小説)

 「お前はどうも落ち着きがないねぇ。 いいかい、人生にはどうしても慌てちゃあいけない時が…

7

「煌る墨痕」 (短編小説)

 ふたつの白い月が紫の空に朧げな孔を穿つ。  月が重なるくらいに近づくけば、もうすぐ電磁…

2

「ポチの一生」 (短編小説)

 今日、ポチが死んだ。  あれは何年前だろう、年明け早々のテストの採点で遅くなった雨の夜だと記憶している。  傘を持つ手を打つ雨の痛さに、走ることを躊躇わせる少し高いヒールを選んだことを後悔していた。  バイパスの高架下に崩れかかった箱。  中で何かが動いた。  濡れたダンボール箱から見えた眼には、生命の灯が申し訳なさそうに揺れている。  濡れた身体をタオルで拭き、あったかいミルクを出してやると、うれしそうに飲んだ。  余程寒かったのかつかれていたのか、リビング

「誰がため」 (短編小説)

 深夜2時。  閑散とした薄暗い事務所の中で、仄明るい島がある。  パソコンのモニターの明…

7

「粗にして野だが、卑ではない」 (短編小説)

 5月の緑の風はどんな身分にも平等に吹いてくれる。 昼間からこうして縁側にいて、何もせず…

16

「群青日和」 朝日奈 昭 著 (短編小説)

書店にて購入、物語りに引き込まれて一晩で読了。 本書の作者である「朝日奈 昭 」氏は、前著…

7

「クリアー」 (短編小説)

 「地球の皆さん、お疲れさまでした」  そんな言葉が、世界中の皆の頭の中に響いたのは半年…

4

「株式会社 悪田工務店」 (短編小説)

 (へっ、本当に捺しやがったよ。)  応接セットに腰掛けた目の前に、痩せていかにも気の弱…

6

「あなたにここにいてほしい」 (短編小説)

 「何よ! ケンジが浮気したんじゃない」  言ったあとで、しまったと思った。  そんなこと…

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