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それは誰かのふるさと

🔵川の旅

私の家の近所には「川」がある。

それは緩やかで滑らかな見た目で、水面に映った青空はひときわ目に光った。

子供の頃、山に行くと父がよく言っていた。

「この水はね、小山の上の方から流れてきているんだよ。触ってごらん。」
手を伸ばして触れると、驚くほど冷たく澄んでいる水だった。

頂上から流れた水は速い。
小人になれたら紙で作った小船に乗って風を切って駆け抜けたいくらいにね。

その水はだんだんと私たちの元へ降りてきて、緩やかに走っていく。

まるで全速力で走った後に、落ち着くまで軽く走ったり歩くクールダウンみたい。

勢いよく駆けた後は、海の大きな波と一緒に一人立ちの旅に出る。

それは元いた場所から遠く離れ、新しい冒険の始まりだ。

大海原の冒険はワクワクして楽しいだろうに

ふるさとが寂しくなったのか

水蒸気となり、雲となり雨となって小山の高くへと帰っていく。


🟤情景と詩

買い物帰りに近くの川に寄り道した。

川には素足で水遊びをしているカップルや、飴玉を買ってと母親にねだる子供たち。

紅葉の紅葉を楽しむ、素敵なお年寄り夫婦。

それぞれの時間を物語を描いていた。

いつか私もこんな素敵な夫婦になりたいと

カフェで買ったハニーラテと、大きな石の上に座って自然と人をぼんやりと見ていた。


“それは誰かのふるさと

穏やかで静寂な川には、メダカや小さな魚たちのふるさと

秋の色に染まった、木の葉が舞い降りる季節の始まりと終わりを告げる場所

誰かが生まれ、育ち、帰ってくる温かなふるさと

思い出の詰まった忘れられない、ひとりひとりの大切で愛おしいもの

なのかもしれない、と考えると途端に恋しくなる私のふるさと”

その川の水はやはりひんやりと冷たく手が痛くなるほどだけど、

太陽の柔らかな日差しと
ほんのり温まった空気が「待っていました」と、手を温める。

温もりを感じる手を胸に、この誰かのふるさとを守っていきたいと思った。

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