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やっちゃば一代記 思い出(25)

大木健二の洋菜ものがたり
 パリっ子の生活に浸透
パリジャンキャロット
名前も歴史もユニークなニンジンです。資料をひも解いてみるに、フランスの古(いにしえ)の家庭生活まで透かし見えてきます。
1390年、グッドマンという紳士が新婚家庭の奥さん向けに、家政に関わる書物を著わしています。グッドマンは蚤(のみ)の撃退法から、夫をベットに迎える方法まで、微に入り細をうがつ解説をしていますが、ニンジンについても言及し、市場での買い方として『丸いピンポン玉のような赤い根っ子のニンジンが良い。白いニンジンはいけない。』と記しています。これがフランス女性がニンジンを選ぶ際の物差しとなり、いまに伝わっているのです。このニンジンは肉や魚料理の付け合わせによく使われますが、日本で使われているのはほとんどが冷凍品です。フランスには大手の冷凍会社四、五社が邦人を雇い、年間を通して安い値段で輸出しています。ただ、冷凍品は青み(葉柄の一部)が取り除かれているし、歯ごたえ、艶、香りの点で、生鮮品とは雲泥の差があります。価格では勝てても、品質では生鮮ものにとても追いつけません。当時は鹿児島を皮切りに千葉、茨城、宮城と北上し、北海道で栽培されていました。一般の消費者には生鮮もののおいしさはなかなか分からないし、また、その機会もありません。生鮮品の旬は9月からせいぜい10月いっぱいですから、この時期に冷凍品と食べ比べをしてもらうと分かるだろうと思っています。
※パリジャンキャロット
ニンジンはスイスのローベンハウゼンの遺跡から種が発見されており、古代ローマ時代にすでに栽培されていたようです。
古代のニンジンは肌が黄色だったようですが、いまの赤いニンジンはアフガニスタンで生まれ、ムーア人によって西ヨーロッパ、スペイン、オランダ、イギリスへと伝播したようです。これが西洋系ニンジンで短根主体です。
日本には江戸時代末期に伝わり、1955年前後から広く栽培されるようになったようです。パリジャンキャロットは丸いニンジンともいわれ、現在での国内生産は雀の涙程度のようです。

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