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郵便屋さんとスーパーカブとその日常。3

note版郵便屋さんとスーパーカブとその日常。です。

こちらのエッセイはアルファポリス、カクヨムでも多重投稿されています。
最新話はアルファポリスでチェックしてみてください。

前回はバブル期の郵便屋さんの国家公務員試験の中編で終わりました。
前回はバブル期に公務員になりたがらない人の理由等が語られました。
今回はその後編からスタートです。

今回は最後に作者からのお知らせがありますのでよろしくお願いします。

国家公務員時代の郵便屋さんの試験の裏話。後編。

(注)今回お話しする内容は全国的に郵政省が行った事では無く、私が勤めた郵便局エリアが行った事なので、そこの所を念頭にお読みください。


景気が良すぎて人気の無い公務員。
そんなバブル期で人手が足りない郵便屋さんのお偉いさんが行った奇策とは?

それはズバリ!!ビラ配りです。

当時の郵便屋さんは何度も言う様に国家公務員ですので、郵便局で就職したいとなると、国家公務員試験を受けないといけません。
しかし、受験者があまりにも少ないので私の職場の郵便局では、総務課長や集配課の集配課長自ら駅前で「郵政外務職員募集中です!郵政外務職員募集中です!!郵便局で働いてみませんか?」と、ビラを配ったのです。

当時は人海戦術が基本の時代ですからね。役職者自ら先陣を切って駅前で郵政外務職員募集中をアピールし、その部下の職員も一緒にビラを配っていました。そういう時代があったのです。

現在はアルバイトから期間雇用社員という名前に変わり、時給や働く内容などが書かれた人員募集ハガキを郵便屋さんが郵便配達時にポスティングしていく方法や、新聞広告や職業安定所での求人をしています。

そして、大学卒業生がこの好景気に外務職員の新採用試験を受ける事は本当に少ないので、ターゲットを高校卒業生に絞っていきます。

この当時に私の勤めていたA郵便局には私が入局してから7年近く毎年高卒の新人が入ってきました。
同じ県内でも勤め先が少ない地方の田舎の高卒採用で、特に多かったのは漁が盛んな漁師町出身の高卒採用です。

漁師にはなりたく無いけど、仕事が無い。大学行く程賢くない。でも、体力には自信ある。
早い話がヤンキー気質のやんちゃな高校生です。

そういう生徒に先生が何とか就職先を探そうと走り回り、郵便局や、知人から紹介された郵政外務員試験を受けないか?と声を掛けるわけです。

私の4歳下の後輩で工業高校に通っていて、先生に停学になりたくなかったら郵便局の外務員の試験を受けろ!と、停学免除の代わりに無理やり試験を受けさせられた者もいます。

で、その郵政外務員の試験も高卒程度の学力テストと作文と面接が主な内容なのですが、あまりにも人材不足なので自分の名前さえ書ければ受かる!!と言われるほど合格率が高く、私が言うのもなんですが、誰でも受かります。

そういう風に毎年ヤンキー気質のやんちゃな高卒新人が入ってくるのですが、そのほとんどが勉強は出来ないけど、体力があるし、バイクの運転は慣れてるし、持ち前の明るさでお客さんには可愛がられるし。と、そういうヤンキー気質の高卒新人は勉強が得意だけど、体力やコミュ能力が低い高卒新人より仕事ができるんですよね。
そして、そういうやんちゃな新人の方が先輩職員に可愛がってもらえるもんだからドンドン仕事も覚えて郵便屋さんとしても成長していくんです。
そう、意外と郵便屋さんとヤンキーはマッチしてました。

今でも忘れられない私のその4歳下の後輩のセリフがあります。
「最近、夜にA駅のロータリーで2ケツの族のバイクが2、3台走ってるでしょ?アレ俺の後輩なんです。
2週間前もその後輩に誘われてタオル巻いて俺も後輩の後ろに乗って走ってました。」

その後輩は今では某郵便局の集配部で課長の仕事をしているそうです。
元気にしてるかなあ?

と、バブル期の国家公務員の試験事情を3回に分けてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか?

今回もご愛読ありがとうございました。

ifの話。〜コネがあるなら使え!〜

もし、あの時あれをしていれば人生が変わっていたかもしれない。と、思う事ありませんか?
ありますよね?私はあります。

人間ですからね、生きていればいろんな選択肢があるし、チャンスや裏技もあります。
今回はそんなお話です。

前回、お伝えしたように名前さえ書けば受かる外務職員の試験を合格した私。
実はこの時、郵便課配属の郵政事務Bの試験も願書を出していました。
郵政外務職員の合格を知ってから約一ヶ月後ぐらいにその試験があったのですが、当日に台風が接近し、天気は暴風雨。
その気になれば行けるんですが、台風の中受験しに行くのはめんどくさい!!と、行かなかったんです。
数日後、台風で試験を受けれなかった人の為に再試験が実施されました。

しかし、もう外務員として就職は決定していたのでもういいや!と、これも行きませんでした。もう、全く試験に対してやる気が無かったんですね。

で、翌年度になって、外務員として毎日配達をする日々を送っていたある日、局長室に呼び出されました。
なんだろな?俺、悪い事したかな?
と、局長室に行ってみると私の祖父がいたんです。
実は私の祖父は昔、小学校の校長先生をしていて地元ではちょっとした有名人でした。
祖父は厳格な先生だったらしく、その当時の私の地元では鬼の〇〇先生と恐れていた元教え子の方々が沢山いたようです。
その祖父がA市のちょっとした役員をやっていてその挨拶でA郵便局に立ち寄り、その時に孫がここで働いてると局長に言ったらしいんです。
それで局長に呼ばれました。
「そうか、君は〇〇さんのお孫さんか?もし、何か困った事や頼りたい事があったら言ってくれよ?」
「仕事で何か希望とかあるかね?」と局長に聞かれたので、
「内勤の仕事とかやってみたいですね」
「そうか、それならまずは郵政事務の試験を受けないとね」

郵政外務職員になっても、郵便窓口や郵便課には役職者にならない以外に移動できません。郵政事務A、Bの試験を受けなくてはならないのです。

祖父も「まあ、孫をよろしく頼むよ」
「〇〇さんのお孫さんが立派な局員になれる様に面倒を見させていただきます」
といったやりとりがありました。

祖父が局長が自ら挨拶する様な人物だったとは知らなかった私なんですが、その時わかりました。

私には強力なコネがある。と。

早い話が、試験を受ければあとは何とかしてやるよ?的なことです。

で、普通ならそのコネを使うのが正解なんですが、高校も卒業したばかりの頭の悪い勢いだけ立派な若僧ですからね、コネを使うのはカッコ悪い!と思ってたんです。
コネを使って良い仕事に就くとかはまるで金持ちの甘やかされたボンボンが使う手だ。俺はそんな情けない甘えたことはしたく無い!コネなんか使わない!俺は俺の道を行くんだ!!と変な反骨心が芽生えたんです。

で、翌年の郵政事務Bの試験を受けなかったんですね。
今、思ってもバカでした!!
もし、この時に試験を受けていればまず間違いなく合格して郵便課の内勤に変わっていたでしょうね。

この祖父の挨拶の数ヶ月後に軽四での配達時に、配達先でちょっとした接触事故を起こしました。

当時の課長代理が「これは始末書だな。」と言っていたのですが、
数日後に「始末書は書かなくていいから顛末書を書いてくれ。
…お前、局長に誰か知り合いいるか?」
「はあ、祖父が局長と挨拶してました」
「そうか、それでか。普通は始末書なんだが顛末書になったから、なんでだろうと思ったんだけど、そういう事か」
それ以来、その課長代理の方は私にはキツく言わなくなりました。

しかし、そのコネも長くはありませんでした。

翌年に私の祖父が年齢的にもA市の役員を辞めて、A郵便局の局長も新しい局長に変われば私の祖父のコネなんて関係ないですもんね。
もし、あの時そのコネを使って試験を受けていれば私の人生はどう変わっていたのか?
後悔しかありません。
あと、自分にはチャンスをモノにする行動力が欠けていたなとも思いました。
結構そういうのに腰を上げるのが億劫なんですよ。

今回で思い知った教訓はいつまでもチャンスがあると思うなモノにしろ!でした。
ことわざにもありますよね?「ある内に頼れ親とコネ」ですよ。
え?無いですか?

せっかくのチャンスをモノに出来なかった愚か者のお話でした。

そう、そう。コネといえばもう一つこんな職員もいました。
今回は長くなったので、次回にご紹介させていただきます。

今回もご愛読ありがとうございました。

コネを使って郵便屋さんになった人の話。前半。

せっかくのコネを使わずにチャンスを棒にする青年もいれば、そのコネを活かして郵便屋さんになった者もいます。
今回はコネを使って郵便屋さんになった職員のお話です。

私が郵便局員になって翌年に1人の新人が入りました。
4月採用で他の高卒採用と違い、中途採用なので二つ程年上だったと思います。

この局員Mさんは私と違う班に配属されていたのであまり接点は無かったのですが他の新採と一線を画してました。
ヤンチャな高卒と違って大人しくほとんど喋りません。で、いつもニヤニヤしてる。人の話を聞いているのかいないのか?ボーっとしていて仕事内容も頭に入って来てないという印象がありました。
噂によると入局の初日に母親と2人で来たとか。
瞬く間に変わり者が配属されたぞ!と話題になりました。
まあ、私もバイト時代に夏場に麦わら帽子被ってましたからね。ある意味変わり者だったのかも知れませんが、Mさんは遠巻きに見ていても変わり者なのは伝わって来ました。

当時は組合員の親睦会という名の飲み会がちょこちょことありまして、その二次会でカラオケスナックに先輩らと言った時に初めてMさんと接しました。
「おい。Mと握手してみな?」と酔った先輩が言うものでなんだろな?と握手を求めるとニヤ〜リと無言で握り返してくるのですが、めっちゃ握るのです。まるで握力計で握力を図るみたいに!
「嘘でしょ⁉︎痛い痛い!!もういいですから!!」とその席から離れましたが、周りの先輩達はゲラゲラ笑ってました。

集配課は内勤の郵便課や窓口業務、特定郵便局と違って男ばかりの男子校の様な結構荒っぽい職場で、今ではパワハラと大騒ぎするような事は日常茶飯事です。
2年経ってもMさんはその環境や仕事に馴染めないようでした。
とにかく全てにおいて遅い。誤配も多い。先輩配達員からは怒鳴られる。
側から見ても、Mさんを戦力として班構成されてる班員は気の毒だなと思える程仕事が出来ませんでした。

そう、みなさんお気づきですね?
このMさんこそが今回のタイトル「コネを使って郵便屋さんになった人」なのです。
まず、みんなが疑問に思いました。
よく試験に合格できたな?と。
以前に私が名前を書けば受かる程の広き門の試験だったとお話しましたが、いくらなんでもおかしい?とみんな思うわけですよ。
で、班員の方々がいろいろ探ってみると、このMさんはどっかの代議士の親戚の方でその代議士から局長が頼まれたので雇用したという究極のコネがあったのです。

みんな思いましたね。
なるほど〜と。
そりゃ納得いくわと。

いや待て!!それで入って来た役立たずをうちの班がなぜ受け持たないといけないんだ⁉︎勘弁してくれよ!!
1番の被害者は配属先の班員の方々でした。

そんなある日、事件が起こるのです。

一件の苦情電話が郵便局に掛かりました。
暴力団事務所から。

今回もご愛読ありがとうございました。

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作者からのお知らせ

いつもご愛読ありがとうございます。
さて、私事なのですが実はこのエッセイの他に私の郵便局時代の経験を活かした異世界ファンタジー小説 「スーパーカブに乗る異世界の郵便屋さんは冒険がしたい。」をアルファポリス。カクヨムにて投稿しています。

内容は異世界の冒険者リオンがお金の為に畑から掘り起こされたスーパーカブに乗って郵便屋さんのアルバイトをして、仲間と冒険に出かけるといった内容です。

異世界の人から見ればこちらの世界が異世界です。その異世界の乗り物スーパーカブに乗って冒険に出かけるコメディファンタジーで、非常にテンポ良く読みやすい内容になっておりますので、お時間のある方は読んでみてください。
そして、応援やイイね、等よろしくお願いします。

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冒険するのも金がいる。
冒険に行きたくても金が無い!
仕方無しに始めたトム爺の郵便屋さんでのアルバイト。異世界に通じてる畑から掘り起こされたスーパーカブに乗ってアイテムや手紙や現金などを配達に行く冒険者リオン。と、そのゆかいな仲間たち。

そんなある日、行きつけの店のお目当てのセシリーに手紙の配達を頼まれたら断る理由も無い!!

お届け先はダンジョンの最下層!!

楽しい仲間と冒険の始まりだ!!

と、いった内容です。
よろしくお願いします。

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