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店員のドギー&マギー

僕は人見知りでした。今もそうだけど。

それでも前よりは改善されたと思う。ところが最近そうでもないかもと思ったことがあった。

ルーティンワークのようにアルバイトをしていると、僕の大大好きなthe band apartのバッグを持ったお客さんを見つけた。BDAPTの文字を見た時にあれ、と思ったが、asian gothic lebelのマークを2秒後に視認したとき確信した。変わり映えのない労働が少し輝いた。「絶対話しかける。滅多に会えるもんじゃないぞ。」そんな風にたぎって、レジを担当できるように自分の仕事を調整もした。

お客さんが席を立った。

きたきた、いつ言おうか、急に言うのは変だよな。まだだ、まだ。あ、財布探してる、今かな、あでも「なに話しかけてんだ、今は財布探しに集中したいのに」って思われるかも。このフェーズはスルーだ。まだチャンスはある。

お金をレジに入れる。うちの店のレジは動作が重いので少し時間がかかる。

いまか、、?なんて言う?バンドアパートお好きなんですか?これだ。あっ、お釣り出てきちゃった。少ないチャンスを逃してしまった。もう後がない、お釣り渡しのタイミングを逃したらおしまいだ。言うぞ〜言うぞ〜。左手にレシート、右手に230円。

いざ渡して言おうと思った時にやっと気づいた。さっきから心臓が信じられないぐらいバクバクしている。知らない人に話しかけることに身体の一番大事な部分がすごい勢いで反応していた。ここまでの動悸はここ最近で起きていない。あとで気づいたけど制服も汗で少し濡れていた。言わなきゃ、バンドアパートお好きなんですか?って。バンドアパート、バンド、、ッ、、

言葉が出なくなっていた。「230円のお渡しです」すらちゃんと言えなかった。動きもきっとぎこちなかったと思う。BDAPTと書かれたバッグを未練がましく見つめる。

結局お会計は単なるお会計で済んでしまった。自動ドアを抜けていく後ろ姿がいやに寂しかった。ドキドキしてたし、恋かと思った。 なわけない。

情けない。ちっとも治ってないじゃん、人見知り、ってその時思った。その後ホールで一緒のおばちゃんが楽しそうにお客さんと話してた。すげぇ〜


このバイトもあと8ヶ月ちょい。一回ぐらい気さくな店員になりたいよ。


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