ラグビーワールドカップ2023 準々決勝 南アフリカ対フランス戦 感想その2

ラグビーワールドカップ2023 準々決勝 南アフリカ対フランス戦の感想その2。あくまで私の感じたことを書き綴っております。今回は南アフリカに関する感想。

 この試合の南アフリカは、いつもの南アフリカっぽくなかった。特に前半。南アフリカはディフェンスの良い国。特に決勝トーナメントでディフェンスの堅さが際立つ。過去のワールドカップの決勝トーナメントにおける1試合当たりの失トライ、失点は出場国中最小。

 南アフリカは、セットされた状態や1対1、スクラムやラインナウトといった数的同数でのコンテストに強い。それはフォワードをはじめ各ポジションに世界最高クラスの選手が選ばれているので、数的同数が彼らにとっての優位となる。逆に言えば、数的不利を作らなければよい。アンストラクチャーは、自分たちの数的不利を作りかねないので、できるだけ避ける。

 数的同数であれば勝てるので、セットされた状態を好む国とは相性が良い。実際、セットされた状態を好む国、例えば英国4協会とは相性が良い。逆にアンストラクチャーを好むオールブラックスやワラビーズと相性は良くない。それではフランスは?シャンパンラグビーと呼ばれる通り、アンストラクチャー、いやフランスの場合カオスを好むと言った方が適切か、とは相性が良いとは言えない。

 前置きが長くなりました。この試合の前半、カオスで力を発揮するフランスの好む試合展開になっていた。試合が切れることが少なく、目まぐるしく攻守が入れ替わる。悪く言えばどたばたした感じ。それはフランスが意図する試合展開。その中心にフランスのスクラムハーフのデュポンがいた。パントキックだけではなく、スペースを突くキックが秀逸。フォワードの使い方もうまい。南アフリカを相手にモールを押し込んでのトライにはビビった。これがつい先日のプール戦での頬骨骨折から復帰したばかりの選手か!!

 にもかかわらず前半22-19とフランスのリードはわずか。南アフリカが誇る両ウイングの快走で、言い方は悪いが、どたばたの中で2トライもぎとった。このあたりの勝負強さは南アフリカらしい。しかし、前半だけで3つのトライを取られた南アフリカを見たのは初めて。ペナルティを奪ってペナルティ・キックを選択せずにタッチに蹴りだしてラインナウトモールを選択する光景もあまり見たことがない。実力的にはフランスが上、私の眼にはフランスペースに映った前半。

 相手ペースになっていることを自覚したからか、南アフリカは後半開始早々から動いた。早くもデクラーク、ポラードと経験豊富なハーフバック団を投入。ライナー、リボックも悪くはないが、この二人の投入で試合を落ち着かせた。デクラークの視野の広さが秀逸。動きがスクラムハーフではない。神出鬼没。危機を察知する能力にもたけ、徐々に南アフリカのペースに引きずり込んだ。そしてポラード。結果的に決勝点となるペナルティ・キックを決めた。ハーフウェイラインを超えるロングキックを選択できたのはポラードがいたから。そして南アフリカにとってこの試合唯一のペナルティ・キックでした。いつもの決勝トーナメントでは1試合当たり5~6本が当たり前。1本しかペナルティ・キックを決めなかった南アフリカを見るのも初めて。

 そして南アフリカ1点リードのまま80分を過ぎ、フランス最後のアタックもノッコンでノーサイド。最後のノッコン、デクラークが相手のボールに絡んでノッコンを誘発していた。彼の働きを象徴するようなラストだった。

 睡眠不足も手伝ってか、見ていてこんなに疲れた試合はない。しかし、こんなに心地の良い観戦疲れもない。ラグビーのあらゆる要素がちりばめられた、一瞬たりとも見逃せない、こんなに中身の詰まった試合を見たのは久しぶり。オールブラックス対アイルランド戦とこの試合でおなか一杯になってしまった。準決勝が退屈な試合に思えないか、心配になってしまう。

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