ラグビーワールドカップ2023 決勝戦 南アフリカ対ニュージーランド 感想

ラグビーワールドカップ2023決勝戦 南アフリカ対ニュージーランドの試合は南アフリカが接戦を制し大会連覇、そして史上最多となる4度目の優勝。

 南アフリカ 12-11 ニュージーランド

 大会前から混戦が予想され、大会に入っても接戦続きの今大会を象徴する試合。そして予想を裏切らない、いや予想以上の激戦となった。カードや負傷退場などあり、80分間お互いベストな状態ではなかったが、逆に試合を面白くしたように感じる。そしてその激戦を制したのは南アフリカ。その勝負強さには溜息しか出ない。いろいろ盛りだくさんな決勝戦。

 試合開始早々2分、ニュージーランドのフリゼルが危険なプレーでイエローカード。いきなりニュージーランドは1人少ない状態となる。バンカーシステム発動で肝を冷やしたが、この時はレッドカードには至らず。しかしポラードがペナルティ・キックを決め、南アフリカ先制。ニュージーランドに暗雲漂うが、この時南アフリカのフッカー、ンボナンビが負傷退場。リザーブにフッカー専門職のいない南アフリカにとって痛い負傷退場。フーリーがフッカーに入るも、この後、本来得意のマイボールラインナウトで劣勢を強いられる。また今日はスクラムで南アフリカが押すシーンはなかった。
 このイエローカード以降、数的優位に立った南アフリカが優勢に試合を進める。13分にもペナルティーを得た南アフリカは、当然ペナルティ・キックを選択。ポラードが難なく決め、6-0とリードを広げる。
 そしてお互いにペナルティ・ゴールを決めて迎えた27分にそれは起こった。ニュージーランドのキャプテン、サム・ケインが危険なタックルでイエローカード。バンカーシステムで審議の結果、レッドカードとなり、再び、そして今度は試合終了まで1人少ない状態を強いられることとなった。大会直前のテストマッチでも同様の展開から大敗を喫した悪夢がよみがえる。
 キックを多用する南アフリカに対して、南アフリカに攻め込まれる場面も多かったニュージーランドだが、なんとかこらえてこのまま12-6の6点差で折り返す。
 そして後半開始5分、今度は南アフリカキャプテンのコリシにイエローカード。ただ、バンカーシステムの結果、レッドには至らず。しかしお互い14人となったことがニュージーランド有利に働く。数的同数になったことに加え、人数が1人少ないことによりスペースが広がったため、ニュージーランドがラインブレイクしやすくなった。攻め立てるニュージーランド。
 ペナルティを得て、タッチキックに蹴りだしアタックを継続。6点差であることを考えると、ペナルティ・キック合戦では分が悪いと考えたのか。この時のアタックはトライにつながらなかったが、その後も攻め立てラインナウトからボールをつなぎ続け、モウンガがうまく抜け出し最後アーロンスミスに折り返してトライを奪い返したかと思いきや、ラインナウトの密集でノッコンの判定。トライはキャンセルされる。
 しかし、その前に南アフリカのペナルティがあり、ニュージーランドのアタックは継続された。その後もペナルティを得ても、ペナルティ・キックは選択せず攻め続けるニュージーランド。ラインナウトモールからボールを回し続け、最後はジョルディ・バレットからテレアにロングパス、テレアがゴール前までゲインし、最後はボーデン・バレットがトライを決める。コンバージョンは決まらなかったが1点差に迫った。
 さらに攻め続けるニュージーランド。ボールを大きく動かし、アタックを継続する中、アントン・レイナートブラウンのオフロードパスを防ごうとした行為がペナルティとなり、今度はコルビにイエローカード。ここで得たペナルティでジョルディ・バレットがペナルティ・ゴールを狙うも、ボールはわずかに左側にそれ逆転ならず。最後まで両国の攻防が続く。最後の最後、ニュージーランドのアタックはノッコン。残り30秒を切って得た南アフリカボールのスクラム。ニュージーランドが押すが、耐えきった南アフリカが1点差で逃げ切った。
 モウンガがトライ後のゴールを決めていれば、ジョルディ・バレットがペナルティ・ゴールを決めていれば。たらればを言い出したらきりがないが、結局それらは南アフリカの勝負強さを肯定するたらればにすぎない。
 南アフリカの強さが凝縮された決勝戦だったともいえる。ポラードの正確なキック、デクラークのゲームコントロール、フォワードの献身的なディフェンス。特にマン・オブ・ザ・マッチに輝いたデュトイの働きには背筋が震えた。ニュージーランドのアタックを、彼のタックルが食い止める場面を何度も目にした。そのタックル回数は28回にも及んだ。こんな数字なかなかお目にかかれない。
 一方のニュージーランド。14人になっても彼らのアタックは脅威でしかなかった。南アフリカの鉄壁のディフェンスをこじ開けトライをもぎ取るなど、その片鱗は見せた。南アフリカとの差はわずかでしかなかった。そしてキャプテン、サム・ケインが気の毒としか言いようがない。今大会に入ってこれまでの低評価をくつがえす活躍だっただけに、この決勝戦でのレッドカードは本当に悔いが残るだろう。

 今大会、南アフリカの勝負強さを改めて見せつけられた。決勝トーナメントの3試合はすべて1点差。相手との差はわずかでしかないようだが、南アフリカだと、この結果は必然とも思えてしまう。

 とにかくすごい試合をありがとうと言いたい。これで寝不足の日々が解放されます(笑)

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