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LAST WEEK REMIND~マダム・ウェブの妙薬~

LAST WEEK REMIND
~マダム・ウェブの妙薬~

2/25-3/2の振り返り

☆は4点満点

【映画】
・メランコリーの妙薬(2009)
☆☆☆:ジェントリフィケーションが著しいサンフランシスコで偶然出会った黒人の男女が一日限りのデートをする。白人ばかりになってしまった街をぶらぶら歩きまわる彼らの姿をひたすらに追いかけるだけだが、それでも十分に魅力的。モノクロに限りなく近い奇妙な撮影が味わい深い。肌の色は同じでも、置かれた状況や物の考え方がまるで違う二人が惹かれ合い、遠ざかっていくその様子が心に残る。ストーリーと掲げるテーマとの間に、僅かに隙間があるが、親密なタッチの描写に宿る美は、さすがはバリー・ジェンキンス監督といいたくなる(彼のデビュー作)。

・ネクスト・ゴール・ウィンズ(2023)
☆☆:ワールドカップ予選の歴史で最悪の0-31という大敗を喫したアメリカ領サモアのサッカーチームが、優秀ながら問題を抱えた監督を迎えて勝利を目指すスポーツドラマ。あらすじだけで面白そうな物語だが、監督のタイカ・ワイティティは得意のユーモアを連発しまくって、笑いはあるが締まりのない作品を仕上げた。国民の人柄なのかコミックリリーフ的な人間が多くて、それゆえに団体スポーツならではの魅力となりそうなキャラクター達の粒立ちも粗い。選手たちの1ゴールへの珍道中を眺めていると、彼らにとってサッカーは人生で一番大事なことではないことも分かる。そのユルさが「白人救世主」的なストーリーを逆転させ、M・ファスベンダー演じる問題を抱える、怒りに満ちた監督の癒しになっていく。いつしかアメリカ領サモアが監督の自分探しの場所にも見えてくる。そうなってくるとがっつりスポーツ映画という雰囲気でもなくなってくる。「第三の性」に関するキャラクターやテーマは興味深いし、様々な意味で勝利を得る爽快感はあるが、全体的に良い話であって良い映画ではなかった。ワイティティのコメディ技に慣れてしまったのも良くない原因かもしれない。

・コヴェナント/約束の救出(2023)
☆☆☆:ジェイク・ジレンホール演じる兵士が命を助けてくれたアフガニスタン人の通訳のために一人戦地へと戻る。絶体絶命の危機を何度もくぐり抜ける前半だけで一本の映画に出来そうだが、通訳一家救出の後半までアクションとスリルたっぷりに描き切ることに成功している。カチャカチャした撮影と、スタイリッシュな編集技がガイ・リッチー監督作の特徴だが、今作はどっしりと構えて強い絆で結ばれた二人の男の生還への道を真正面から捉えている。一人だけ助け出されて苦悶するジレンホールの叫びが、アフガニスタンを巻き込んでしまったアメリカの後悔にも受け取れるのは言い過ぎか。現地人通訳を演じるダール・サリムの無口ながら力強いまなざしが記憶に残る。最終兵器をひっさげて登場する民間警備会社の破壊的な攻撃力に閉口しながらも、今や戦争するのは軍だけではない現実を考えさせられる。それにしてもドヤ顔で「この辺りは犬が多いな」って言ってみたい。

・ARGYLLE/アーガイル(2024)
☆☆:あまり期待はしていなかったが、思いのほか予想を裏切る展開が待つアクションスパイ映画だった。いつもはカラフルでスタイリッシュなアクション演出が目を引くマシュー・ヴォーン監督だが、今作はアクションよりもキャストの掛け合いの方が面白かった。ブライス・ダラス・ハワードは危険なスパイの世界に連れ出される作家を困惑混じりに魅力的に演じており、その姿はまるで黄金期のキャスリーン・ターナーのよう(「ロマンシング・ストーン」的な)。彼女をスパイの世界へと誘い込むサム・ロックウェルは持ち前の軽妙な身のこなしでスクリーンを動き回る。今作はアクション映画だが、彼にとってはダンス映画だ。監督もロックウェルといえばダンス、ということを理解しているらしくダンスを融合させたアクションがふんだんに登場(CG強めが気になるところもしばしば)。角刈りカヴィルのパワー系アクションをも凌駕した。ちょっとしたツイストを経て、気づいたら140分にも膨れ上がった尺に驚きつつ、楽しい時間を過ごせました。すこしお話して、バスケ見て、パソコンの前で一喜一憂するSLJに言わせてくれ。イイ仕事だなー。

・マダム・ウェブ(2024)
☆:この映画が生み出すことに成功した唯一の素晴らしいことがあります。雇用です。

・アグネスと幸せのパズル(2018)
☆☆☆:パズルはバラバラになったピースを組み合わせることで、ひとつの大きなイメージを完成させる。だが今作の主人公はパズルの世界にのめりこむと同時に、その人生をバラバラに解体していく。主人公アグネスは保守的な街に住み、整備工場を営む夫を支え、二人の息子を育てている。信仰心も厚い。そんな彼女が自分にパズルの才能があることに気付くことで、妻として、母として、主婦として、信徒としての四方を固められた生活や人生を解体し、新しいイメージを再構築していく。もちろんその過程には苦しみやもがきが生まれる。アグネスを演じるケリー・マクドナルドがふさぎ込んだ思いを涙を流しながら解放させる。夫を演じるデヴィッド・デンマンの基本的には優しくも、変わっていく妻の心を理解できない様がリアル。アグネスの人生に新たな見方を与えるパズルパートナーのイルファン・カーンも良い味だ。一見地味にも思えるパズルと主婦のストーリーが予想だにしないほどの輝きを放つ。

【TV】
・Mr. & Mrs. スミス 第1シーズン第1話
・吸血キラー/聖少女バフィー 第1シーズン第3話

【おまけ】
・今週のベスト・ラヴィット!
シンガーソングライターMACO

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