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LAST WEEK REMIND~5時から7時までアナはおそれている~

LAST WEEK REMIND
~5時から7時までアナはおそれている~

2/18-24の振り返り

☆は4点満点

【映画】
・5時から7時までのクレオ(1962)
☆☆☆:クレオは不安を抱えている。歌手としての成功を得て、若さや美しさの頂点にいる彼女は顔を曇らせる。夜の7時には検査の結果が出るからだ。もしかしたら私は癌かもしれない、不治の病かもしれないと悩むクレオ。アニエス・ヴァルダ監督は彼女の不安に苛まれる時間を、リアルタイムでそっくりそのままくり抜く。ドキュメンタリータッチながら巧妙に置かれた鏡やショーウィンドウの反射がクレオの心の奥底の不安を映し出す。彼女が街を歩くたびに向けられる通行人からのさりげない視線までもが、彼女の不確かな未来へ関心を寄せているかのようだ。彼女はとある若き軍人と出会う。彼も明日は我が身の任務に就こうとしているのだ。二人が死への不安を共有すると同時に、作品のクレオだけに向けられた視線が穏やかに薄れていく。不安も薄れていく。スクリーンさえも共有した二人の表情は穏やかなものだった。

・クイック&デッド(1995)
☆☆☆:とある放浪者が暴力的な権力者が牛耳る田舎町を訪れる。その町では権力者が主催する早撃ちコンテストが行われていた。コンテストに参加することになった放浪者の運命と復讐の物語やいかに。物語的には伝統的な西部劇だが、放浪者を演じるのがシャロン・ストーンであること、監督がケレン味あふれるサム・ライミであることで、一味違う西部劇が幕を開ける。元ガンマンの牧師ラッセル・クロウや極悪権力者ジーン・ハックマン、イキッた若者ガンマンのレオナルド・ディカプリオまで、錚々たるキャストの面々が集まっていて、それだけでもずっと眺めていられる。このメンツに画で負けることのないストーンが何よりもスゴイ。ドレスアップしようが、ワイルドなガンマン姿だろうがカッコイイが止まらない。監督らしいカメラワークやスリルを高める編集、音楽がバンバン繰り出されていて、クイックに楽しめる娯楽作になっている。

・ボーはおそれている(2023)
☆☆☆☆:母と子の関係性は一筋縄ではいかない。特に母と息子の関係は何とも特別だ。今作はボウとその母親の一言では言い切れない過去と現在を紐解きながら、狂気的なジャーニーを導き出す。ボウの誕生から不条理な末路までを一気に走り抜けるアリ・アスターがつくるハイテンションブラックコメディ。それなのに母親の存在が、ボウの生き方にもたらす影響が、滅茶苦茶パーソナルに語り掛けてくる。ちょっと身につまされた。自戒の念も込めて☆満点。…ところで顔と頭がないってどういうこと?

・ミツバチのささやき(1973)
☆☆☆☆:映画を観た後、現実世界において映画の影響を受けたことは誰にでもあることだろう。サスペンスやアクション映画を観た後に、誰かから追われているかのように周囲を見渡したり、ホラー映画を観た後は暗闇が怖くなったり。特に子供の時なら自由な想像力で、なおさらにその影響は大きくなる。スペインの田舎町に住むアナは、移動映画館が町の集会所でかけていたジェームズ・ホエールの「フランケンシュタイン」を観て、ある疑問を持つ。「なぜフランケンシュタインは女の子を殺したのか」と「なぜ町の人はフランケンシュタインを殺したのか」だ。アナはお姉ちゃんに聞くと「映画の中で起きたことは現実ではない。フランケンシュタインは生きていて、目を閉じて心の中で呼べば、その精霊がささやいてくれる」といたずらな答えを返す。アナはこれを本気にする。時は1940年ごろのスペインの内戦後を舞台にしている。イマイチ家庭に意識の向いていない両親を尻目にアナは「精霊」と交流する。時に幻想的で、時に残酷な、この世界をその大きな瞳に焼き付けていくアナ。スペインの広大な大地に負けない、アナの小さくもたくましい背中が忘れられない。

P.S.「エル・スール」も鑑賞しましたが、体力の限界で眠気爆発。主演の瞳の力強さだけが頭の中でふわふわ浮かんでます。

寝落ちするなんて…許せない…。

【TV】

誰も聞いちゃいない!

・スコット・ピルグリム:テイクス・オフ 第1シーズン第5話
・となりのサインフェルド 第4シーズン第22話
・スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー 第1シーズン第9話

【おまけ】
・今週のベスト・ラヴィット!
ぼったくりバーの最後


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