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『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【後編】(プログレッシヴ・エッセイ 第13回)

2000年、庵野監督に私の監督した映画を見せ、
「好きなことをやっていていいですね」
との感想をいただき、その言葉で映画の道を諦め、金属恵比須のバンド活動に専念することを書いた。
『シン・仮面ライダー』と金属恵比須。2つに共通するのは50年前のコンテンツで新しいものを生もうとしている点。では、異なる点はなんだろうか。

『シン・仮面ライダー』公開1周年だが、公開1ヶ月にして興行収入20億円を突破。歴代「仮面ライダー」シリーズでトップに躍り出た。

50年前のコンテンツを再構成し新たな世界を作り出し、なぜこんなにヒットしたのだろうか。

エグゼクティブプロデューサーの白倉伸一郎氏はこう語る。

単に「原典に近づけました」とか「大人の鑑賞に耐えます」とかではなく、最終的に「映画体験とは何ぞや」というところまで掘り下げないと(『シン・仮面ライダー』にしかない楽しみを提供するという)答えは見つからない

エグゼクティブプロデューサー白倉伸一郎、企画・プロデュース紀伊壮之対談
(『シン・仮面ライダー』パンフレットより)

前号で取り上げたオリジナルのリスペクト作業は、目的ではなく手段にすぎない。企画プロデュースの紀伊家之氏はこういう。


クリエイター庵野秀明とプロデューサー庵野秀明がクルクルと入れ替わってるんです

エグゼクティブプロデューサー白倉伸一郎、企画・プロデュース紀伊壮之対談
(『シン・仮面ライダー』パンフレットより)

リハーサル中、演奏をしながら新曲の方向性を見出していく金属恵比須
(2024年3月24日、稲益宏美撮影)

造形はクリエイターとして、「映画体験は何ぞや」と考えるのはプロデューサーとして、それぞれ立場を替えているのだ。

バンドではどうか。自主制作バンドではリーダーやプロデューサーが大概プレイングマネージャー。セルフ・プロデュースである。

そうなると、どうしてもクリエイターの立場としての視点が大きくなりがちだ。よって「楽器がうまい」とか「凝ったアレンジ」など方法論の技術的なことが目的になってしまうこともしばしば。それだけでは「音楽体験とは何ぞや」という問いには答えられない。


この映画に魅了されたのは、クリエイターとプロデューサーの采配の割合が絶妙だったこと。ポップさとマニアックのバランスが金属恵比須の求める采配に近かったからにほかならない。バンドにも“監督”は必要なのである。

では、庵野監督にとっての“監督”とは?

監督は作品に隷属する奴隷の一人だと思っています。自分個人がやりたい事ではなく、作品が面白くなる方が重要だと思っています

庵野秀明 2023 2/28 晴れの日に 渋谷にて
(『シン・仮面ライダー』パンフレットより)

24年前、庵野監督に金田一耕助シリーズのパロディ映画を見せていわれた、
「好きなことやってていいですね」
という言葉は、やはり才能のなさを指摘してくれたのではないか。
その結果、その後の金属恵比須のバンド活動に勤しむ24年なのだから結果的にOKだ。

そして同時に、バンドでもそのスタンスを学ばなければならない。いかに音楽を聴いて面白くなってもらうかを考えなければならない。これが『シン・仮面ライダー』と金属恵比須の差なのだと思う。精進しなければ。


『モノ・マガジン』連載「狂気の楽器塾」にて樋口真嗣監督と対談

庵野監督に延命された金属恵比須。それから22年。

2022年、庵野監督の盟友である樋口真嗣監督(『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』)と対談したときにこういわれた。

「ここまでくると、バンドやめられないでしょ?」

庵野監督のせいで続けてます、とはいえなかった。

そしてやめられない。そして自分個人がやりたいことをやり続けているのだから、つまり成長しないのだろう。

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