見出し画像

【仏教エッセイ】共命の鳥

「比翼連理」という言葉があります。
仲のよい夫婦のことを表す四字熟語で、出典は中唐の詩人白居易(白楽天772-846)の『長恨歌』第117~118連。玄宗皇帝と楊貴妃が誓い合った様についての表現です。曰く、

在天願作比翼鳥  天に在っては 願はくは 比翼の鳥と作(な)らん
在地願為連理枝  地に在っては 願はくは 連理の枝と為(な)らんと

読み下すに、「天にあって空飛ぶ鳥と生まれかわるなら、比翼の鳥となろう。もしまた、地に生えて木となるなら、連理の枝となって、生々死々に決して離れまい」となります。

さて、白居易は仏教に造詣が深く、日本の沙弥(しゃみ/僧侶)空海らとの交流についても美しい物語があります。
白居易の仏教への関心は、維摩経や禅、弥勒信仰など多面的であるのですが、特に晩年の阿弥陀信仰や念仏については一際のものがあります。

『阿弥陀経』にも不思議な鳥が出てきます。「共命之鳥(ぐみょうしちょう/ぐみょうのとり)」という鳥です。

『仏本行集経』というお経によると、この鳥は昔、 ヒマラヤ山脈にすんでおり、それぞれ、「迦婁荼(カルダ)」と 「優波迦婁荼(ウパカルダ)」という名前を持っていました。 カルダとウパカルダは仲が悪かったと言います。

一説によると、どちらも綺麗な鳴き声をしてるのですが、どっちのほうが、より美しい声をしているかで言い争っていたともいいます。

ある時、ウパカルダは、自分が眠っている間に、カルダがひとりだけ美味しい果実を食べたことを知りました。
眼が覚めて満腹であることに気づいたウパカルダは、カルダが独りで美味しい果実を食べたことを知って、怒り妬んで、「今度はカルダが眠っている間に独りで果実を食べてやる」と決めます。
そしてまた別の日に、ウパカルダはひとりで果実を食べます。しかしその果実は毒を持っていました。

伝承によって、ウパカルダはそれを知らなくて食べたのか、知っていてわざと毒の果実を食べたのか、どちらの謂れもあるのですが、このとこで、カルダは死んでしまい、また、ウパカルダ自身も、やがて毒が回って死んでしまったといいます。

ちなみに、カルダはお釈迦様の前世の姿であり、ウパカルダはお釈迦様のいとこであり、お釈迦様に反逆した、ダイバダッタの前世の姿だといいます。

この鳥は『阿弥陀経』にも出てきます。
そこには、阿弥陀仏の仏国土である、お浄土には、孔雀や鸚鵡などの色美しい鳥が、昼な夜な、妙なる声でさえずっており、その声を聞く者は、誰しも仏法を求める心を起こさずにいられないと記されています。そして、それらの鳥の中に共命之鳥も出てきます。
これは、大変重要な意味を持っています。
どういうことかというと、

ここから先は

3,188字
この記事のみ ¥ 100

サポートしてくださったら、生きていけます😖