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【詩】光る君

失恋が恋の常態であるように
孤独が生の常態である

非常が世の常態であるように
無常が代の常態である

君がいるってことも常態ではあるまいで
その美しさも当たり前ではあるまいで

君が世界に色をつける
綾なす青、黄、白、赤、いろいろ
雑色は白と黒の範疇ではあるが
紫は青の範疇かな赤の範疇かな

戦争が有史の常態なら
束の間の平和や僅かばかりの安穏は
戦争への準備期間かな

性善説か性悪説か
どちらが本質かどちらが本性か
いや善でも悪でもないのが人間かもしれない
少なくとも君の常態は善でも悪でもないような

そも君の常態って言葉があやしい
常態とは観念で
その観念を拝めば不断光で
光る君は不断光の乱反射

春は四季の常態ではないし
夏が四季の常態ではないし
秋も四季の常態ではないし
冬とて四季の常態ではないように

四季を貫く風光があるように

君を見失わないように

以上


春と修羅



わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

宮沢賢治

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