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2023年版ライブコマース国内市場規模の真実

希望的観測のライブコマース市場が独り歩きすると大変危険なので、ここでは一度、今、世間で出回っている日本のライブコマース市場について、ソースを見つつ、考察しておきたいと思います。

※取り急ぎ、以下にグラフ一覧を張っておきますので、ぜひ記事も読んでみてください。

国内10兆円市場に挑むライブコマースをサポートするSharingLive国内向けライブコマース制作サイトがリニューアルしました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000040160.html
ライブコマース市場のことがザクッと全部わかる。市場規模は3000億円!?https://note.com/teramae/n/n02c4d002c3a5
D2C・EC支援のいつも.ライブコマース特化アプリを運営する「合同会社ピースユー」M&Aに合意  https://itsumo365.co.jp/news/21944

日本のライブコマース市場を拡大解釈してはいけない

はじめにGoogleで国内のライブコマース市場で検索すると、2022年で500億とか、2024年で1000億円とか出てきますが
これは、嘘です。
なぜならソースである2020年7月の株式会社CyberZ/株式会社OENの調査の記事では、「デジタルライブエンターテインメント市場規模予測2020-2024」と書いてあるからです。

デジタルライブエンターテインメントとは
アーティストが音楽ライブや演劇などを主にステージ上で演じ、ライブ配信で提供されるコンテンツを、デジタルライブエンターテインメントと定義(ユーザーがオンラインを介してデジタルライブエンターテインメントの視聴に対して都度支出する金額の年間総額。ライブエンターテインメントは、音楽や演劇などの、主にステージ上で提供される有料エンターテインメントサービス)
つまり、アーティストの有料配信などのことです。これはライブコマースでしょうか?

また、あくまで全体が2020年7月時点の予測でしかありません。
未曽有のコロナ禍の真っただ中の2020年7月と、2023年では全く状況が違います。

ゆえに、定義と状況の2点より、日本のライブコマース市場が500億円とか1000億円とかいうのは否定されると考えます。
ちなみに、1000億円市場のイメージとして、日本記念日協会の推計ではバレンタイン市場がそのくらいと言われています。

10兆円(2019年の中国同等)になるとは思えない

次に船井総研ロジテック(たぶん船井総研ロジの間違い)とクリップスの調査によるもののようで、日本市場は10兆円規模
という記事も見かけるかもしれませんが、これも以下の点より否定されます。
・もっともらしいソースが見当たらない
・明確な市場定義がわからない

調査対象はライブコマースを理解しているか

もう一つ、論理構成としてはわりと納得度が高かった記事としては2020年時点で推定3000億円というのもあります。
記事内での根拠は以下です。
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根拠とした数値として、EC市場(物販)は、12兆2333億 2020年(経済産業省)、EC物販系でライブコマースで販売実績の多い市場カテゴリの以下の3つの合計(食品 2兆2086億円、化粧品 7,787億円、2兆2203億円)で、約5.2兆円。この5兆円から「ライブコマースを視聴し、購入経験のあるユーザーが5.8%」と掛算んすると、おおよそ3000億円程度として算出。
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が、この場合は、MMD研究所の2021年5月に行った5000人を対象とした調査の「視聴し、購入したことがある」が5.8%が正しいのかどうかを見る必要があります。

MMD総合研究所の調査結果で気になった点としてはライブコマースを視聴したと定義されるプラットフォームはYouTubeが最も多く、そのほか、Instagram、LINELIVE、Twitter、TikTok、Facebookとなっているのです。
主観ですが、SNSをライブコマースプラットフォームのみを前提としていることと、YouTubeが最もライブコマースで購入されているという点にやや違和感があります。もしかしたらインフルエンサーや芸能人のYouTubeで概要欄のURLから飛んで購入したことなどをライブコマースと回答者側が捉えてしまっているのかもしれません。
このあたりは、私が以前勤めていたアイレップの調査でも、YouTubeライブが57.8%と最も高くライブコマースの視聴プラットフォームとして出ています。(ちなみに購入経験者は4.1%)

もしかしかたら、回答者がまだ何をもってしてライブコマースとするかが定まっていないのかもしれないと思いました。

希望的観測なのか予測なのか

次に、株式会社いつもによるピースユーライブのM&Aが業界では話題になりましたが、その中で日本のライブコマース市場の2027年予測が5893億円となっています。2020年時点で3669億円、20222年で4201億円と予想されています。
ただし、この記事を見ると以下の定義から2020年も推測されているのです。
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※「China’s E-commerce Livestreaming Research Report 2021」(iResearch社)、「Retail TouchPoints」(Coresight Research社)のデータをもとに自社で推定
※2025年国内のEC市場規模は経済産業省の電子商取引に関する市場調査で17兆1578億と予想され、米国のライブコマースの成長率を参考値とし2027年段階で国内ライブコマース化比率を3.0%として算出
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つまり、中国とアメリカが3%くらいなので、日本ももし、ECの市場の3%だとしたら、数千億円になるであろうと。

経産省の明確な2025年のEC市場規模予測がぱっとは見つからなかったので、以下を参考までにあげておきます。
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf

たしかに、中国とアメリカのEC市場におけるライブコマース市場のシェアを国内の市場に掛け合わせることで、予想できるとは思いますが、少なくとも2020年~2022年がそうだったとはならないので、あくまで架空の世界戦のグラフとして捉えなくてはないません。

中国のライブコマース市場を参考にしないほうがいいかもしれない

最後に、日本国内のライブコマース市場を考えるにあたり、中国のライブコマース市場規模を参考にすべきかどうかについても私なりの見解をまとめておきますと、私としては中国と日本とでは社会的背景と歴史的背景、国土などが大きく異なっていおり、また、中国ではデジタルファーストで商取引が成長し、プラットフォームも、「Taobao Live(淘宝直播)」「TikTok(抖音直播)」「Kuaisyo(快手直播)」の3大ライブコマースプラットフォームに絞られていること、などから日本が同じようなライブコマースの比率を辿るとは安易には思えないところがあります。

そして、中国も最近のライブコマース市場も最近は考え方が変わってきて、独身の日やECが踊り場を迎えた可能性がある、国民は大量消費から理性消費、グリーン消費、国内ブランド消費を重視するようになってきたなどの変化もあります。

ここまで、ライブコマース市場について、私なりのなんともさみしい見解を語ってきましたが、なぜここまでして自分を追い込むのかというと、現在の少ない日本のライブコマース市場を過剰に煽ってほしくないからです。今は日本のライブコマースをどう育てていきたいのかを競合などをきにせずに、手を取り合って考えていくフェーズだからです。

信じられる数値の積み上げから考える

ライブコマースに関わる確かな数字を積み上げて考えましょう。
たとえば、毎日インスタライブを行っているD2CブランドのCOHINAさんは2021年時点で月商1億円を達成しています。

ファンケルは2021年時点で70回以上のライブコマースを配信し、ライブコマース購入者のLTVが15%アップしていると報告されています。

ライブコマースの定義

そもそも何をもってしてライブコマースとするのでしょうか?みなさんがチャレンジしたいライブコマースというのは何のことでしょうか?広義にとらえればライブコマースは以下のようにたくさんあります。(投げ銭は含んでいません)

①せどりライブコマース
 c to cの小口取引や個人のバイヤーによるライブ機能を使った販売
②ファンライブコマース
 タレントやインフルエンサーを巻き込んだライブイベント
③ブランドライブコマース
 顧客接点としてライブを活用したマーケティング戦略

日本ライブコマース協会として私の経験でサポートできるのは③と②です。
これらにおいても、不透明なライブコマース市場をあてにするよりは、顧客やファンとライブをどのように活用してライブエンゲージメントを高めていくのか、一社ずつの戦略が必要になります。
2023年以降は、ぜひライブコマース市場に一喜一憂せずに独自のライブエンゲージメントを戦略的に形成していくかを議論しましょう!

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