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ドイツで日本人留学生が連邦警察の車に乗せられる話

 昼間にインド出身のフラットメイトから「今日はヒンドゥーの神であるガネーシャが降臨している日だから一緒に祈ろうぜ!」と言われ、「I know you are a prey boy」とか微妙なボケをかましつつ、適当に流してしまった。

今日はドイツ語の授業で「私は~語を話します」という表現を習った。外出する時は常にパスポートを携帯しておくよう言われていたが、今日くらいは問題ないだろうとパスポートを置いたまま散歩に出かけた。

歩きすぎて横腹を痛め、腹を押さえながら歩いていた夕方、不意に高齢の女性から手を掴まれてしまった。早速トラブルに巻き込まれる予感がして振り払おうとした。彼女は自分がドイツ語を話さないことを察してか、「Don't leave me alone!」と懇願してきた。話を聞いていると身内が自分の銀行口座を乗っ取ろうとしている、自分を早死にさせて保険金をどうのこうのと言っていた。自分には何もできなかったため、呼んでいた連邦警察の車に乗って病院まで付き添った。

事が済んだ後、警官に事情聴取されたとき、ハッとして「Ich spreche nicht Deutsch, Ich spreche English(ドイツ語は話せないが英語は大丈夫)」と習ったことを伝えた。すると、流暢な英語で意思疎通ができた。ただ、パスポートの提示を求められ、忘れてきたことを後悔した。助けたおばあさんは認知症のようらしい。家に帰り、カレーの準備をしていたフラットメイトにガネーシャに祈らせてくれと頼み、今日の無事への感謝を伝えた。

思い返せばコロナ禍で世が閉ざされていた三年前の2020年、つまり自分が大学一年生だった時。インターン先で知り合った3個上の女の先輩と社会人の方と会食に行った際、自己啓発本に関心があるという話をした。その際に社会人の方から『夢を叶えるゾウ』という本を薦められ、買って読んだのだった。そこに出てくる神様の名はガネーシャと言い、夢を叶えたい主人公にあれやこれやと徳を積むように諭したのだった。

2023年の今日、自分は偶然にも三年前に会食で同席していた女の先輩と留学中のホームシックについてメッセージをやり取りしていた。2023年の今日は偶然にもガネーシャが降臨した日で、ガネーシャが自分に人助けをするよう働きかけたのかもしれない。

三年越しに言葉の通じない異国の地で人助けをするという究極の自己啓発の完成体。それをこの手で成し遂げてしまった。そのあまりにも壮大な伏線回収に一人驚きを隠せない。

ここに来て数日は慣れない環境に手を焼いて変に緊張していたが、連邦警察にも連れられるという後にも先にも無さそうな経験をした。そのせいか図らずも気持ちは吹っ切れた。残りの留学期間、ぶちかまします。

現在ドイツの時刻は21時30分。時差ボケで波に乗れない生活リズムだったが、今日は心労でよく眠れそうだ。

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