よく分かる インバウンド集客 #4 ~外国人旅行者に選ばれる施設になるためのノウハウとヒント~
『訪日外国人受入環境整備』(1/4)
#3の続きです。
絶対理解すべき訪日外国人の特徴とは?
訪日外国人を受け入れるために環境を整備しましょう、という話なのですが、その前に訪日外国人の特徴について絶対理解しておくべきことを記述します。それは 日本語が読めない・話せない・分からない ということです。もちろん、読める・話せる・分かる方もいらっしゃると思います。ただ受入側は読めない・話せない・分からないと理解しておいた方がよいです。何故ならその前提で準備する方がより万全になるからです。
訪日外国人受入環境整備は誰のため?
そしてもう一つ理解すべきことがあります。受入環境整備は誰のためなのか、という点です。もちろん、訪日外国人のためなのですが、私はあなたの施設で働く従業員のためでもあると考えます。ここ大事なポイントです。多かれ少なかれ、受入環境整備には費用や時間、労力がかかります。その際「訪日外国人のみならず施設で働く従業員、両者のため」と捉えることが極めて大事です。そうすることで導入や判断が進みやすくなります。稟議も予算化の面においてもです。
従業員にどんな得があるのか?
#2 でお伝えした通り、施設の経営層がインバウンド集客に動くきっかけは割と受動的で「外国人旅行者が来店したから」が大半です。正しくは、望む望まず関わらず外国人旅行者が来てしまったから、です。想像してみてください。日本人だけを相手に商売していたのに、ある日突然 異国の客がやってきて、異国の言葉で商品・サービスを求めるのです。その言語は英語でなく、中国語・フランス語・ドイツ語もしくはアラビア語かもしれません。従業員の戸惑いが目に浮かびませんか?
現実問題として、言語の壁によって外国人旅行者への接客対応は、日本人のそれより数倍時間がかかるのです。人手不足や時給高騰している昨今、生産性向上・ライフワークバランスが騒がれている昨今、日本語が読めない・話せない・分からない外国人旅行者に対する受入環境整備を準備することは、あなたの施設にとって間違いなく重要なことです。特に近年、Go To 系の対応や多様に分かれる決済手段など、現場でやることは増えているはずです。
そこで外国人客・従業員の両者にとって、あると便利な手段をまとめてみましたので、以下ご参考になさってください。
訪日外国人受入環境整備 あると便利な8つの手段
1、多言語会話
外国人客とのトラブル&コミュニケーションミスの回避に有効です。来店後の口コミ登録促進や、商品・サービスの説明ができることで、プラス1の注文・購入や客単価アップなどが期待できます。これを実現するためには、いくつかの選択肢があります。
外国語と一言で言っていますが、正確には多言語の外国語です。英語話者以外の外国人客が来店する(来店してしまう)可能性は十分にあります。
どの選択肢も否定するものではありませんが、私が注目しているのは「やさしい日本語」です。多言語会話と述べつつ、日本語での対応も検討してみては?という話です。「やさしい日本語」とは、普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすい日本語を意味します。
日本が大好きな外国人が日本に来ることを想像してみてください。一部の人たちは日本語を勉強してきているかもしれません。マンガ・アニメ・ゲームなどのカルチャーで慣れ親しんでいるかもしれません。その数は少なくないでしょう。2018年時点で海外の日本語学習者は385万人というデータもあります。ですので、日本語での対話を楽しみにしている、という話を耳にしましたが、それは正しいのだと思います。接客時に「やさしい日本語」を心がけた上で日本語で対応するのは、誰でもすぐにできる対策の一つです。
2、店内多言語化
外国人客とのトラブル&コミュニケーションミスの回避に有効です。また、プラス1の注文・購入や客単価アップが期待できます。
店内多言語化が不足しているとどうなるか。少しイメージしてみましょう。最も分かりやすい例が飲食店におけるメニューです。飲食店を訪れ、テーブルにあったメニュー。日本人であれば日本語が分かるので問題ありませんが、外国人旅行者から見たらどうでしょうか。
外国人旅行者の見え方は右側です。どうでしょう、みなさん読めますか?(韓国語の自動翻訳をあてたので、読める方は分かってしまうかもしれません。私はさっぱりです…!)。全く読めない・何が書いてあるか全く理解できない状態だと思います。フランスに訪れて、フランス語のメニューを出されたときを想像してみてください。読解できますでしょうか?(私は、できません…!)
飲食店を例に出しましたが、体験施設等でも同じ整理です。掲示されているサービスメニューや手順などは、相手が分かる言語(母国語や公用語)で示されていることが望ましいです。ただ、世界の言語数は6,900 というデータもあるので、全言語対応は無謀です。文部化科学省によると世界の母語人口最多は「中国語」、ついで「英語」です。中国語の文字は簡体字・繁体字があります。オーソドックスに考えると、まずは「英語」から対応を始める、でよいと思います。日本人にとっても馴染みある言語ですから。
京都にある仏具屋の事例を紹介します(意外ですが仏具屋は外国人旅行者に人気なのです)。多くの外国人旅行者が来店する名店ですが、いくつかの課題を抱えていました。
これらの課題を解消するために、店主は対策を講じました。下の写真を御覧ください。
まず、英語で説明書きを作成し、店内に掲出しました(写真左側)。これにより商品理解を促し、説明時間を減らすことに成功しました。また、製作途中の仏像も展示しました(写真右側)。これにより、製作は手作りで時間がかかるものと理解してもらい、価格価値を理解してもらうことに成功しました。
さらに、プライスカードにも工夫を加えました。「ミニお骨入れ」に [ for Jewelry case ] と表示したそうです。確かに使い方は人それぞれですよね!相手に寄り添い、相手の暮らしをイメージした素晴らしい対応です。
またある店では風呂敷を壁に飾って、ファブリックとして使えるイメージを訴求していました。欧米系の暮らしにおいて、風呂敷の利用シーンはなかなか想像しづらいものがあります。類似する例は他にもあるので、以下も参考ください。
さて、まずは英語から対応を始めてみては?と前述しましたが、観光庁からこんなデータも発表されていることを共有します。
訪日外国人旅行者(全国籍・地域)の「出発前に役立った旅行情報源の言語」は50.9%が英語とあります。「なーんだ。2人に1人は英語でOKってことね!」と安心するのは危険です。国・地域ごとに調べてみると、当たり前ですがそれぞれ皆、母国語や公用語で情報を求めていることが分かります。これは出発前のデータになりますが、旅中(施設内)においても同じと考えるべきでしょう。
事例です。静岡県にある飲食店は外国人旅行者が来店した際、予め用意しておいた多言語のオリジナルツールを用いてコミュニケーションを取っています。
アルバイトの出入りが激しい店舗においては、言語教育はなかなか大変です。せっかく教えたのに辞めてしまう。新たに入ってきた人に、新たに教育しないといけない。そうではなく、入店1日目のアルバイトスタッフでも使えるようにツールにしてしまおう!という素晴らしい工夫です。
観光庁の調査によると、施設等のスタッフとのコミュニケーションについて外国人旅行者は「飲食店」で特に困っており、ついで「小売店」「商業施設」等で困っているとのことです。写真付きメニューやピクトグラムなど、言語の壁を超える工夫など、相手の視点に立って細やかに対応することで、円滑なコミュニケーションを目指したいものですね。
以上、8つある手段のうち2つ目までを紹介しました。続きは次のパートで紹介します。
よく分かる インバウンド集客 #5 に続きます
はじめから読む場合はこちら
文|寺岡真吾(株式会社ぐるなび LIVE JAPAN企画部)
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