このブキヨウ
いっしょに住み始めて7ヶ月が経った。
その間一度引越しし、2回海南島に旅行に行き、伊勢神宮に旅行に行き、大阪で年越しし、彼の家族にも2回会った。
同じ時間を分かち合い、いろんな経験を重ねる中で、お互いをより理解し、親しくなってきた部分もあるけれど、実際運がいいことに他人と生活するというのに彼との生活は初めから今までまったくストレスがない。
ただ一点の変わったことは、帰る時間が決められたことだ。
これまでの私の周りは比較的自由奔放というか、いつまでも部活ノリで、一回飲み出すと時間を気にせず飲んでいた。終電のない上海だから12時過ぎても呼び出し、合流、2次会3次会の店で知り合いに出くわして途中参加がどんどん増えて最終的にみんなでカラオケ、とかもよくあった。
昨晩11時すぎ
何時?
ーーー12時
せやね、12時までには帰れ。気をつけてね
何時?のメールで緊張感が走る。帰るタイミングを見計らわなければと飲んで判断能力も鈍っているところに帰宅手段、何時に店を出るか、この場のひとにどう切り出すか、など考えて気もそぞろになる。たった2文字で飲み会を楽しめなくなる強力な一撃。
命令形と気をつけてね、をいっしょにするすごい情緒不安定みたいなメールに気づいたのはそろそろお暇しなければと思った頃だった。
それをみて12時に間に合うように必死で自転車こいでる私も私だけど、
12時前についたら案の定彼は眠りについていた。
思えば一緒に住もうとしたとき、私が上海に戻ってくるとき、そして結婚しようとしている今も、はっきりとそれを彼から意志を持って宣言されたことはない。
男の人は、自分の気持ちを伝えることが本当にできない生き物なのだと、その程がある不器用さに気がついたのは最近のことだ。
日付の変わる数分前にやっと真っ暗な部屋の布団の中でいうお誕生日おめでとうが限界だ。
12時までには帰れ。気をつけてね。
プライドとシャイと不安と思いやりがマーブル模様のように入り混じっていて、その綺麗な模様の文面を、私は何度も見てしまう。
寝ている彼のいるベッドに潜り込む。起きたらいっぱい話をしよう。