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コラボレーション


noteの中で、コラボレーションがたくさん生まれている。
楽しそうに見えるかもしれない。
しかし、かかるプレッシャーというものは楽しみではなくむしろ恐怖であろう。

創作にかけるスピードが自分のペースではないことが一番苦しいところではないだろうか。
本来、創作とは孤独なものであり、自分のうちから出るものを形にしていくわけであり、コラボ作品は、相手のペースと自分のペースを合わせ、なおかつ互いの創作力をぶつけあうことになるため、普段よりもボルテージを上げないと相手の力に対して失礼な気がして、緊張の連続を強いられることとなる。

しかし、そんな刺激は創作の源泉でもあり、一度やったらなかなか抜けられない。自分ひとりでは生み出せなかったものに仕上がるからだ。

だから、そんな力の結集であるコラボを収録した有料共同運営マガジンがもっと盛んになっていけばいいと思う。

私が相方の曲に詞をつける作業を始めるようになって一年が経ったのだろうか。
いつも家でギターをポロポロ弾きながら歌い、譜面に落としているということをしていて、その作業には口を出していなかった。

その時間は私自身の創作時間でもあるので、互いがそれぞれ作業をし、できあがったものを見せ合い、批評するというなどのことをしていた。

創作についてはそれぞれの聖域であり、そこは何人といえ立ち入ることはできない、などと大袈裟に言ってしまうのであるが、みな独立独歩ではないだろうか。それが創作の核となるわけで、妥協できない。

だからこそ、相方とは互いの創作には立ち入らないというのが暗黙の了解となっていた。
だが、隣で、同じフレーズを何度も弾いては繰り返し、いつまで経っても続きができなくて先に進まなく、今まで入ってこなかったメロディが私の耳に入るようになってしまったのである。

「その曲はいつになったらできあがるのですか?」

苛立ちを隠せず思わずそう訊いてしまった。次はどうなる、次はどうなると毎度聴いている方としては我慢の限界だったのだ。
すると、相方は苦笑いしながら、うーんと唸った。

「歌詞は、星空を見上げて、で始まろうと思っているんだけど、その後が続かなくていつも止まってしまう…、サビのメロは決まっているのだけれど、そこにどう繋ごうかと悩んでいて…」

「誰が星空を見上げているのですか? ふたりですか? ひとりですか?」

「いや。そこまで決めていなくて、ただ、星空を見ていて、遠くの誰かを思っていて、その人を応援しているっていう感じにしたくて」

「……夜がいいんですよね?」

「え? 別に夜じゃなくてもいいんだけど。とりあえず星空かなあってこのメロからは。ほら、星が瞬いているみたいな感じがするでしょ?」

そう言ってギターでメロディを奏でる。
確かに星がキラキラしている感じはある。
でも、そこから応援しているという状況にするには、ストーリーがなくては進まない。
それまで相方が作ってきた歌は、歌詞というより、サウンドだった。
だから、聴いていて意味不明…というものが結構ある。

「星空を見上げて、ではなく、涙ほろりこぼれる、ではいかがでしょう」

「ええっ?!!」

星空に拘るから次が出てこないのだと思った。
そういう場合はまったく違うアプローチをしてみるといい。
小説を書く上で私がやっていたことである。

「なみだ ほろり こぼれる?」

「うん。ほしぞらを みあげて より一文字多いけど、歌えるものかしら?」

指で数えながらそう言ってみる。

「どれどれ」

そんな風に始まったのが、作詞をするきっかけとなった。

涙ほろり 零れる 夕暮れ 人恋しく
笑ってきたはず 歩き疲れても 
心の傷 誤魔化しながら 
頬かすめる 優しい風を 感じたなら 
涙を拭って 歩き出せばいい 
運んでいく 次の扉へ 
いいよ 強くなれる 
涙の分だけ um… 
だから 熱くなれる 
涙の分だけ きっと… 
強くなれる 涙の分だけ
um… だから 熱くなれる 
涙の分だけ きっと!

「応援している歌になりましたね」

相方が作りたかった応援歌、その手伝いができたのだった。

https://note.mu/eightman/n/n5b909159ebe1

その曲の詞をつけた時に気付いたのだが、相方の歌い方には直せない癖がある。
それを個性と言えば聞こえがいいが、自分が歌いやすいように歌詞をつけてきたから付いてしまった癖ではないだろうかと思っている。
禁忌音がありすぎて、それが歌詞をつける上で障壁となる。
しかし、どうせならば気持ちよく歌ってほしい。
だから、こういうところでは「く」が入った言葉…、などの色見本的なものができあがってきた。
しかし、今回の曲は、歌詞がまったく浮かんでこなかった。
みなさんのお力により、まとまめることができ、深く感謝申し上げる次第である。

ここまで書くと、さぞかし仲良く創作活動をしていて楽しそうと思われるかもしれないが、内情はかなりの戦闘状態である。

「ここ、これじゃ歌えないの? だめなの?」

「歌えない! 5文字4文字、ここは9文字! ほら!」

コラボとは、創作の魂のぶつけ合いである。


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