#94 Re:「僕の人生には事件が起きない」

最近大学で簡易版のビブリオバトルをする機会があって久しぶりにこの本を読んだので、もう一回感想文(?)を書いてみようと思う。

 この本はお笑いコンビ’ハライチ’の岩井さんのエッセイである。ある日僕は本屋さんでこの本と運命的出会いをした。出会いはとても単純で一目見てタイトルに惹かれた。
 本の冒頭で

「まあまぁ世に名前が知れているコンビの、影に隠れがちな方。しかしネタは10割そっちが書いている。ラジオのレギュラーがあり、ラジオだとテレビでは陰に隠れがちな方が割と目立っていて、毎週、話を楽しみにしている層が一定数いる。そんな感じのやつに『あいつ”ぽい”よね~、文章書かせてみようか』みたいなのがお決まりになっているのだろうか。」
(p4,l4)

と岩井さん自身で触れているが、私の認識はまさにその通りだった。そのまますぎて自分の言葉で説明するのもいらないくらいだ。とにかく、’コンビの陰に隠れている方の才能が爆発した著書’という勝手な認識のもと、私はこの本を手に取り、タイトルに心を奪われてこの本を購入した。

 個人的な話で申し訳ないが、私はお笑いコンビのオードリーがとても大好きで若林正恭さんの著書をよく拝読させていただいている。それもあり、岩井さんのイメージも若林さんをなんとなく頭に浮かべていた。しかし、読み始めるや否やその印象は覆された。いい意味で若林さんとは反なのだ。的確な表現が浮かばなくて申し訳ないが、岩井さんは’日常のある一コマにひっかかりがあるタイプ’で、若林さんは’人生のうちの非日常なワンシーンにひっかかりがあるタイプ’と言える。岩井さんが非日常にひっかからない、若林さんが日常にひっかからない、と言っているわけではないということだけは一応補足しておく。
 上記のことで印象に残っているのは組み立て式の棚の話(p69,133)だ。おおまかに言うと「組み立て式の棚を組み立てるまでには越えなくてはならないハードルが多くて精神に堪える」という話だ。私はこの着眼点に圧倒された。なんと言えばよいのだろうか。普通に生きている中でこの考えに至ることに私は度肝を抜かれた。とにかく、私にはこの考えは思い浮かばない。この棚の話のなかの「棚を作るのに必要な部品が足りない」という話をよんで思い出したことがある。

今年の5月、一人暮らしの家にL字型の机の部品を搬入した。今まさにこの文を書いている机だ。コロナの影響もあり、この日は机などの組み立てのためだけに東京に来た。机以外の組み立てを終え、机の組み立てに取り掛かった。着々と作業を進めていったのだが、8割ほどまで進んだところで部品のパネルの穴がほかのパーツと合わないことをがわかった。お金をだしてくれた父親はめちゃくちゃにイラついていたが、私は何とも思わなかった。むしろ、「なーんだ。1万円のゴミを買っただけか。この机捨てるのか。」なんて思っていた。私の思考はここまでで終了だ。組み立てが80%までで終了したことに対して別に何も思わない。父親は必死に問い合わせ先を調べていたが、ある意味僕は楽観的だった。

昔から工作が好きだったからか組み立てることへの抵抗がない。私自身、エッセイまがいのものを少し書くようになりナナメに物をとらえることへの憧れというものが心のどこかにあったが、実際にはそう上手くはいかなかった。幼少期、しょうもない人生を送ってきたので無理もないのかもしれない(ということにしておく)。
 工作ということで一つ思い出したことがある。小学校3,4年の頃、実家の横にある、庭へ続く砂利道に’ひみつきち’を作っていた。

近所のホームセンターで、詰め放題の木の切れ端を買ってきてはトンテンカンテンと一人でくぎを打ち付けていた。このころからすでに友達(最近、’友達’という表現がしっくりこなくて悩んでいる。)の輪に入れなかった。ただただ一人できちを作り、駄菓子屋で買ったお菓子を携え、自分で作った椅子でゲームをする日々。このころにはもうひとりでいることに私は慣れていた。人とかかわることが減り、周りにむかつくことがなくなった。自分の何事にも無関心な部分がこのころから出来上がっていたことに、昔を思い出して初めて気づいた。
 あの時公園で野球をしてた人と、自分のひみつきちでゲームをしたことがある。でも、1体1だった。野球をするチームが揃うと空気が持っていかれてしまう。僕との関係性は、その場のノリの前では無力だ。サシだとゲームをしてくれても、揃うとすぐ野球だ。意識してなかっただけで、その場の空気に割り込むことが昔から苦手だったんだな、僕は。

長々と書いてもキリがないので、最後にこの本で僕がおすすめしたい話を。
読んでてなんか好きだったのは自然薯と珪藻土の話と、あんかけラーメンの話でした。ぜひ。

誤字脱字等は後ほど直します。

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