【映画】『希望と絶望 その涙を誰も知らない』を観て
公開日の翌日に『希望と絶望 その涙を誰も知らない』を観てきました。
この映画は、私が応援している日向坂46が、2019年から2022年3月末の東京ドーム公演開催までの約2年間に迫ったドキュメンタリー映画。
今回はおひさま(日向坂46のファン)、ノンフィクション・ドキュメンタリー映画好きとして感じたことを記していきたい。
【この後続く本文には映画本編のネタバレ・
若干ネガティブな意見が含まれます】
この作品はドキュメンタリー映画の2作目
まず最初にこの『希望と絶望』は日向坂46を追ったドキュメンタリー映画の2作目であること。
私は1作目『3年目のデビュー』が公開された当初、まだおひさまになりたてだったこともあり劇場での体験には間に合わず、その後に発売されたBlu-rayで視聴しました。
結果から言うと、1作目を知らなくてもここ最近の動向をなんとなく知っていれば楽しめますし、視聴済みであればより理解が深まる作りかなと感じました。
タイトル
話題を公開日前にちょっと戻します。
5月31日に開催されたイベントで今作のタイトルが『希望と絶望 その涙を誰も知らない』であることが発表される。
正直、見る人を幸せにする“ハッピーオーラ”を掲げている彼女らからは全く予想のできないタイトルで非常に驚きました。
竹中監督曰く…
そのようなことを知り、コロナ禍やグループ内の変化など所謂「裏の部分」を目撃することによって彼女らに対するイメージが良くない方向に変わってしまうのではないかという不安。
東京ドーム公演という彼女らやファンにとって共通の夢に至るまで「どのようなチャレンジがあって困難を乗り越えてきたのか知りたい」という好奇心。
そういった気持が織り混ざった感覚を幕が上がるまで抱えることとなりました。
『日向坂で会いましょう』
映画が始まり、かなり序盤で日向坂46の冠番組『日向坂で会いましょう』の収録風景が映し出される。
その時、ひなあいであることを表すために『ときめき草』をバックに番組タイトルロゴがそのまま映し出され、毎週楽しみにしているひなあいのOPが大きな映画館のスクリーンに映し出されてる事に少し笑ってしまいました。
突然襲いかかる新型コロナウイルスの猛威
2019年末に目標としていた東京ドーム公演が決まりさぁここから!と一番勢いづくタイミングでのコロナ禍。
握手会というメンバーもおひさまもお互いの存在を最も感じられる機会が制限され、ライブも無観客での開催に。
きょんこへのインタビューパートで「無観客のライブは届いている実感がない」「ずっとリハーサルをしているような感じ」と答えていました。
この「本番の実感がわかない」の正体、私も舞台周りのスタッフをしていた経験からとても共感できました。
それは「客席が埋まっている」という視覚的情報だけでなく、音の返りが全く違う点なのかなと推測しています。
無観客で開催される以上、観客が、コールがそもそも存在しないということは覚悟できているだろうし、『ひなくり2020 ~おばけホテルと22人のサンタクロース~』の様にペンライトを並べるなどしてある程度緩和できます。
しかし音響はなかなかそうはいかない。
基本的に客席に人が入るとスピーカーから出た音が反射し、特有のライブ感が形成されます。
そういった音感覚的にも、スタッフとカメラとスタッフしかいない状況的にも「リハの延長線上のようで実感がない」に行き着いたのかなと私は感じました。
グループでの仕事から個々の活躍
2021年に入り、コロナによって多少ブレーキを踏まれるもますます勢いづく日向坂。
グループでの仕事はもちろんのことながら、メンバー数人や個々でのお仕事が増えていく時期でもありました。
そして間違いなく、今作の映画のコアとなる部分でもあります。
センター:加藤史帆
久しぶのリリースとなった5thシングル『君しか勝たん』でセンターを務めるのは加藤史帆。
リリースへ向けて各番組への出演や『ラヴィット!』のシーズンレギュラー就任、長く続けてきている『レコメン!』のWパーソナリティ…
人一倍責任感が強く完璧主義、ひらがなけやき時代に体験した過去から「無理です」と言って仕事が無くなってしまうのではないかという恐怖。
特にインタビュアーが過去の振り返りを尋ねて「あまり思い出したくない」と泣いてしまうシーンは観ていて非常に胸が苦しくなりました。
現在は自分の限界をちゃんと伝えられるようになったので大丈夫とトークアプリでも伝えてくれていますが、よくダークサイドからライトサイドへ戻ってこれた、戻ってきてくれたなと思います。
W-KEYAKI FES.2021
過去のインタビュー記事や予告編などからおひさま達が最も疑問に感じたであろうパート。
スタッフからメンバーへ向けて衝撃の言葉
「がむしゃら感が足りない」「初めて誰跳べで感動しなかった」
当時、私は配信でライブを観ていましたが、モニター越しですら感じる過酷さ、それをはねつけるような彼女たちのパフォーマンスに感動と、これだから応援したくなるんだよなと感じたのを覚えています。
過去のインタビュー記事からそういったやり取りがあったことは知っていましたが、改めて映像で見るとあまりにもキツイ…
ともすると叱責とも捉えられかねないようなシーンを観て「終演直後にそんな言い方しなくても…まだ翌日もあるのに…」とメンバーに対して同情的、スタッフに対して批判的な感覚を持ちました。
しかし「大人たちから怒られた後」、くみてんとかとし、そして意外にもおたけが外に出て、空に向かって思いの丈を叫びます。
そしてその姿を観て笑いながらも共感する2期生。
この映画を観るにあたって、くみてんからは「ストーリーとして美化したくない」という事が劇中でも触れられて、それに反するような感想ですが、彼女たちもまた「大人」になってきていて、どうしても演者であるメンバーのプロフェッショナルさに注目しがちですが、演出であるスタッフも当然プロフェッショナル。
キャプテン佐々木久美がいてこその、しかも結果論になってしまいますが、あのやり取りはプロ同士の対等なぶつかりであって、それを享受するのみの我々がどうこう言えるフェーズではないなと映画を観終えた今なら納得できます。
あの炎天下で2時間にわたるパフォーマンス、関わる人々がどんなに苦労したか自分には想像もできません。
(今年のケヤフェスは開演も遅いし、ちょっとでも緩和されてると良いな…)
メンバーの休養と復帰、そして卒業
2022年
事務所らしき会議室にメンバーが集められ、半年にわたる休養から小坂菜緒の合流、そして渡邉美穂の卒業がそれぞれ自らの口から伝えられます。
メンバーへ向けて卒業について、自分の想いを話す美穂が流す涙はあまりにも美しく、神秘的にすら感じました。
そうして発表される7thシングルのフォーメーション。
グループとセンターへ復帰するこさかな、保護者として支える覚悟を決めるくみてん。
特に「W佐々木がサイドで支え、後ろにはとしきょんが控えてるから」とスッと言葉に出せるくみてんに胸が熱くなりました。
約束の卵
目標だと言ってる誰もが行けるわけじゃない東京ドーム
ついに2022年3月30日31日彼女たちは5万人のおひさまが見守る中、そのステージに立つ。
しかし現実は残酷で、濱岸ひよりの新型コロナウイルス陽性の知らせがリハ中のメンバーに届く。
『3回目のひな誕祭』のOP映像にも映し出されてたように、泣き崩れる美穂。
きっと他メンバーも検査を受けて「自分も陽性ではないか」という不安や、美穂卒業前に全員でドームに立つという夢を挫かれた悔しさ…
しかし、度重なる延期や無観客配信、過酷なケヤフェスを乗り越え、ツアーを通して更に強くなった日向坂46は、皆さん御存知の通り、皆の夢であった東京ドームでの公演を25人で迎え、大成功させる。
ビッグサプライズ
何人かのメンバーのブログやトークで、先に卒業した長濱ねる、柿崎芽実、井口眞緒が現地に見に来ていた事が伝えられている。
まさかそれが映像として映し出されるとは…
言葉こそ無いけれど、特に卒業とともに芸能界を引退した芽実の姿が見えるとは思っていませんでした…
エンドロール
1作目と同じく、エンドロールにはメンバー一人ひとりのカットと自筆の名前がクレジットされています。
当然利権的な問題で使用できる映像に制限があるのは百も承知ですが、なっちょとすーじーのクレジット映像に舞台『フラガール』と『ラヴィット!』の映像がそれぞれ使われていたのが印象に残りました。
ふたりともとても大切にしていた仕事のシーンが使われてて良かったな…
これからの道
まさかのポストクレジット有り。
この映画用のインタビューを取り終えた直後のくみてんと美穂が言葉を交わします。
大きな2本柱となって日向坂46とその周りを支え続けてきた2人の想いを、願いを聞いて泣きそうになりました…
「映画」としての『希望と絶望』
ここからは技術的だったり映画そのものについての感想です。
今作ではひなリハなどで見ることができる例のダンスレッスンスタジオでのインタビューが多いです。
属に“制作カメラ”と呼ばれるようなハンディタイプの小さなカメラで撮影しているせいか、顔にフォーカスが合っていないカットがあまりにも多く見づらい。
鏡の反射にオートフォーカスが持ってかれてメンバーの表情がちょっとだけぼやけていて、インタビュー、特にアイドルのドキュメンタリーとしては致命的。
そしてインタビュー対象のメンバーが極めて限られている。
正確にはカウントしていないので、あくまでも体感的な話ですが、1作目より映るメンバーに偏りがあるように感じました。
満遍なく撮影はしてるのだとは思いますが、実際にスクリーンに出ていたメンバーは限られ、繰り返されていた。
しかし、後の円盤化にディレクターズカットなどが収録されれば、ちょっとバリエーションが増えるかな…?
この映画における渡邉美穂の扱い。
今作はコロナ禍の苦悩から東京ドーム公演に至るまでのストーリーを中心とした軸になっています。
それに並行するように“渡邉美穂の卒業”という軸が並行して走っていると思います。
加えてメンバーからも次期キャプテンを期待されていた人物でもありますし、客観視できる聡明な人物でもあります。
うがち過ぎた見方をすれば、ある種の苦言や棘のあるトークを彼女に背負わせすぎている様にも感じました。
もちろん制作陣に陥れるような意図など無いのは分かってますが、ここまで背負わすくらいなら、もっとメンバーを変えてインタビューすればよかったのではないかなぁと思います。
と同時に、これもディレクターズカットなどがあれば多少軽減される問題であるとも思います。
東京ドーム公演での様子で、長々とパフォーマンスの様子を映し出すが、果たして必要だったか?
もちろんこの公演見ていない人もいるだろうけれど、せっかくドキュメンタリーで忖度なしで描くと言い切っているのなら、もっと他へのインタビューや裏側などにあの長い時間を割くべきだったのではと思います。
しかしこれもライブBlu-rayの特典などとの兼ね合いがあるかもしれませんね。
特にライブ後のひよたんへのインタビューが無いなど、ドキュメンタリーとして押しに欠ける。
くみてんやその他メンバーから「ここ最近の2年間はあまり観てほしくない」などのコメントから身構えて劇場に行きましたが、(当時のメンバーの気持ちはさて置き)そこまでの“絶望”は感じませんでした。
望みが全く絶たれてしまうような姿ではなく、今まで体験したこと無い環境や困難にぶつかり、今まであった一体感が揺らぐも持ち直し、乗り越え新たな道を作り進む姿が描かれている真っ直ぐな“ドキュメント”でした。
「『希望と絶望』の並び自体に意味はない」と竹中監督が答えてらっしゃいますが、キャプテンに相談して名付けた割にはそこにこだわりがないなど、単純に映画の売り込み方として方法が間違っていると個人的には感じます。
なんだかんだ言ったけど…
ああだこうだ言ってきましたが、結論「おひさまはマストで観たほうが良い作品」であることには間違いありません。
特に「コロナ禍を描く」という難題の中、制作陣も相当に苦労と工夫を重ねたものであると思いますし、文字通り彼女たちの「裏側」をちょこっと垣間見える作品でした。
特に1作目『3年目のデビュー』を履修済みであれば、より理解することができ、日向坂46を応援したい気持ちが高まります。
宣伝番組でサトミツさんがおっしゃられてたように複数回観ることで、より深く愛せるような気がします。
その為にもBlu-rayのリリースとディレクターズカット版の収録がされると良いなぁ…
最後に
今作『希望と絶望 その涙を誰も知らない』を観て、特に印象に残ったメンバーがいます。
3期生の上村ひなのです。
作中でクローズアップされるシーンは多くはないですが、他のメンバー越しや、背景で写っているひなのの表情は常に笑顔でした。
たまにニュートラルな表情の瞬間も有りましたが、少なくともスクリーンに映し出されている分には常に明るい表情でした。
それが彼女の持っている独特な感性が為せる技なのか、強く抱くアイドル像からなのかは計り知れませんが、彼女のそのスタンスにもプロフェッショナルを強く感じました。
それでは、また次の機会に…
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