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June夏の香り-2 One of Your Girls

夜中の2時、線香の香りと自分の汗の香りが混じり、無我夢中で彼にキスをしていた。こんなはずじゃなかったのに・・・と思いながらもキスを止めることはできなかった。キスをした時、付き合っていた彼氏には感じられなかった、彼には何でも許せる安心感と、とろけてしまうような魔法を感じた。もしかして、体の相性はいいのかも?でも、ダメだ。今夜は帰ると決めていたのに、何やってんだよ。。

「ごめん、やっぱ無理。」キスをやめた。彼は微笑み、「じゃあ、今まで何でやめなかったの?」とこちらを見ながらまた唇を重ねてきた。私の後頭部に手を置き、ベッドに倒した。彼のキスにもう我慢ができず、私は身を委ねた。気づいたら、朝になっていた。やっべ。初ワンナイト。。早く帰って、この場から離れなければ。とスマホで帰りの電車の時刻を調べていると、彼は起き、「もう帰るの?まだ離れたくない」とベッドへ連れ戻された。2回目のエッチもしてしまった。ピロートークで、恐る恐る、「変な質問していい?経験人数何人?」と聞いた。すると、彼は顎に人差し指を置き、う〜ん、と考え始めた。

おい!!!!

数えられないほどいんのかよ!「え、何人?」ともう一度尋ねると、「多分、10人くらいかな。いちいち数えてないよ。数えてる人なんて馬鹿らしいじゃん」

「。。。」
時が止まった。まあ、そうだよね。この顔面なら数えきれないほどの女と夜を共に過ごしてきたんだろうね。驚きはしなかったが、私もその中の「チョロい」女認定されたという事実にショックを受けた。頭の中で、Troye Sivanの"One of your Girls"が流れた。キャッチーなメロディで、Troyeが美女になりきり、「あなた好みの女性に変わるからいつでも連絡して」って歌うPVが自分と重なった。
うん、私は今日からTroye Sivanなんだ。笑。ダメよーダメダメ。そんな都合のいい女にはなりたくない!自分、なんて愚かなんだろう。尻軽女になるつもりはなかったのに。

遠距離中に別れ、肌のふれあいが恋しかったせいもあるが、彼はとても話がうまったけど、女性の扱いに慣れているとか、そういうのではなく、ただ単純に彼の体の匂いや、密着した時の安心感に惑わされてしまった自分がいた。まあ、体の相性がただ単によかったのかな?

事を終えた後、彼はスムージーを作ってくれて、こないだ買った線香の香りを嗅がせてくれた。朝一番のスムージーは最高。日の光、観葉植物の影から見える彼の姿、木漏れ日の光に輝く、金髪。彼は漫画から出てきた、そう、まさに私が思い描いてきた白馬に乗った王子様そのままだった。なんなんだろう、今、自分は夢の中にいるのか。こんな完璧な1日の始まり、人生で経験したことないし、今、自分が体験してきたことを頭で追いついていなかった。

「おすすめのビーガンレストランがあるから、連れて行きたい!」と誘われ、表参道にランチに行くことになった。ここで、一旦話を中断。彼は生粋のビーガンであるのだ。ビーガンとは、動物性のもの全般、口にしない主義の人を指す。なので、お味噌汁も、出汁などが魚成分を含んでいれば、飲むことができない。私には理解できない。話に戻ろう。家を出る前、彼はケネディのようなサングラスにArmaniの香水を付けた。バニラのようないい香りがした。これは彼が高校生から使っている香水だそうだが、もう販売してないそう。なので、彼は大事に最後の一瓶を使っているのだそう。

元カレと比べたくないが、元彼は、香水もつけなければ、洋服も、破れていても、切れれば問題ないというスタンスであったので、服や香水などにこだわりがある男性は素敵だなと思う。バニラのような甘い香りにメロメロになりながら、山手線へ向かう。みんなジロジロ彼の方を見る。隣に立っていて、恥ずかしくなってきた。しかし、彼は周りを気にせず、私の顔から目を離さなかった。距離感の近さよ!やっぱりこいつ、ヤリチンだよ。もう、会うことはないだろうなと心に留めた。

彼が行きつけのビーガン料理屋へ案内してくれ、楽しいひとときを過ごした。その後は明治神宮の奥の公園を案内してくれた。雲ひとつない空を見上げ、二人で芝生に座りながら、雲の形や、こういう緑と過ごす時間はどれだけ大切かという話をした。顔も美しいだけでなく、意外とピュアで、心も美しく、私は彼に惹かれてしまった。もう会うことはないと心に誓ったが、この日から私の運命は大きく動き出す。

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