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ドクターノージンジャーの独り言第一話〜三十路〜
30歳になってしまいましたとさ。
大変ご無沙汰してます。ドクターノージンジャーの中の人でございます。
僕はロックスターになる予定だったので、てっきり27歳で死ぬかと思っていました。
不覚にも生きながらえましたが、そりゃそうですよね。白衣にふんどしで歌ってれば。
自分が30歳になる未来なんて、全く想像していなかった。さらに無職とは恐れ入った。
そう、無職なんです。
知っている人は知っているが、僕は無職になってしまったのです。自ら望んだわけだけども。
ここに、無職の30歳が爆誕したわけです。
めでたいめでたい。
高校を卒業してから今まで働いてきましたが、とりあえずやめてみることにした。
ビール頼む時みたいな感じで、とりあえず。
一般的な感覚で言うと暴挙らしいです。
世の中の皆さんは真面目なので次が決まってから辞めるらしいですね。エライ!
理由は色々とあるにしても、僕なりに悩んで悩んで悩み疲れた結果、一旦辞めてみるということになった。
最初こそ会社への不満だとか、気に入らない奴の悪口とかいろいろあった。でも、考えてるうちにそれはそんなに大したことじゃないと気づいた。
漠然としているが、僕がそこにいることへの違和感を感じてしまったのだ。それはもう拭い切れないくらいの違和感だ。
恥ずかしい話、僕は自分が真面目な人間だと自負していた。定年まで働くと思っていたし、そこそこ偉くなって、そこそこ良い人生が歩めると思っていた。
「ステージ上ではふざけてるけど根は真面目なやつ」みたいな。
まぁ、要するに気取ってたわけだ。
真面目だねとかなんとか、人から評価されて気をよくして、真面目な人間を演じようとしていたのだ。
結構失礼なことを言うし
人の話はあまり聞いていない
空気読めないし
本当は全然働きたくない
そんな僕の本当の部分と向き合った時に、とてつもない違和感を感じてしまった。
とにかく、今の環境から逃れたくなってしまったのだ。
結局僕は何をしたかったんだろう。
音楽も仕事も中途半端な自分が情けなかった。
休みに入ってからは、とにかくいろんな人に会った。今までなら断っていた誘いも全て行くようにした。
ライブはでれるだけ出てみた。
たくさん本を読んだ。
当てもなく海辺を散歩したりした。
やりたいことリストを作ったりした。
最初は時間を持て余してしまったけど、だんだんと楽しくなってきた。
本当は、こんなにやりたいことがあったんだなと痛感する日々だ。
無職になったら終わりだと考えていた。絶望みたいなものを感じると思っていた。
しかし、実際はただ、働いてないだけの自分がいるだけだった。
思ったより、世の中は冷たくも温かくもなかった。いつも、自分を苦しくしているのは自分だった。
ある種、憑き物が取れたみたいな感覚で、自分の薄っぺらいプライドとか頑固さみたいなものが無くなっていくのを感じた。
いつも何かと競っていた。そのうちそれが自分のやりたいことのように錯覚した。全く恐ろしい勘違いだ。
僕は無職だが、今の自分が好きだとはっきり言えるだろう。
働いてないことを自慢したいんじゃなくて、正直に生きている自分が好きだと言いたい。
本当のところ、無職であることを公言するのにためらいがあった。が、ここはあえて書かせてもらおうと思う。
迷ってたっていいんだぞ。と。
長々と書いてしまったが、しっかりと伝えておきたいことがある。
僕は何も、無職を薦めている訳ではない。
手放しに労働者が偉いとは言わないが、誰かの役に立つことは素晴らしいことだ。
むろん、働きながらにして自分の喜びを見出せるのが1番いい。
でも、そうじゃない人もいる。
当たり前だけど、人間はみんな違う。
いろんな人間がいる中で、
たまたま僕はそうだっただけだ。
長い人生の中の、ほんの一部かもしれない。
でも、最高の寄り道になるよう、明るい無職のおじさんになりたいと思う。
いずれ僕は、何かしらの仕事をしなくてはならないだろう。
だからこそ、僕にとって何が大事なことなのか確かめる期間にしたい。
人生には余白が必要だ。
30歳。決して若くはない。
手放しにおめでとうと言えない誕生日。
何がめでたいものか!
と思うが、コンビニでケーキでも買おうかな。
おめでとう。僕。
産んでくれてありがとう。母。
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