場がつくれない今、場について考える。
コロナのおかげで変わってしまったことはたくさんある。その中でも「人が集まる場」をつくれなくなってしまったことは大きな事件だ。生まれてこの方「集まってはいけません」という指示が出たこともなければ、従ったこともない。だけど、いまはそうせざるを得ない。
リアルな空間に集まれなくなり、オンラインの会話が中心になったことでこれまで享受していた「当たり前」に気づくことは多い。画面越しの会話では言葉以上の微妙なニュアンスを汲み取ることは難しく、人間関係を深めることも難しい。コミュニケーションは途端に「機能的」になってしまう。そして、何より人と会って話せないというのは、ここまで退屈な日々になってしまうということも知ることができた。
この4月にグリーンズ出版から「場づくりという冒険」という書籍が発売された。著者は藤本遼。彼は生まれ育った尼崎という地域で暮らし、福祉、文化を混ぜながら「場」をつくってきた天然パーマの男だ。
この本には全国の「場づくり」の実践者のインタビューが12篇も収録されている。それもちょっとやそっとの「場」ではない。
はっぴーの家ろっけん、前田文化、週間マガリ、ほっちのロッジ等。 どれも単純な「カテゴリ」で語れないような場ばかりだ。福祉、医療、住宅、飲食、地域、アートといった様々な領域を複雑に取り込みながらひとつの「世界」になっている。
そしてどの場所も実践者の生い立ちと価値観とは切っても切り離せない。「どうしてそんな場がつくれたの?」という僕たちの素朴な疑問には、彼らの根底に流れる物語が答えてくれる。
コロナウイルスの感染拡大が収束し「場づくり」が再開ができるようなったとしても「場づくり」のアプローチはどうしても変わってしまうだろう。ウイルスは常に僕たちの社会の中でその存在をチラつかせ、物理的な人と人の接触については一定の警戒と配慮が必要になる。
だけど、アフターコロナの世界でも場がもつ価値や場をつくる人に求められる態度(Attitude)は決して変わることはないだろう。
その場にいる人の尊厳に眼差しを向け、人と人が関わり、いかしあうことで生まれる可能性を育む。
「場づくりという冒険」は、こんな世の中になってしまう前に「場」が持っていた力や、場をつくる上で大切にすべきことをタイムカプセルのように閉じ込めてくれた一冊だと思う。
いま全国の場づくりニストにとって「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」な状況ではあるが、この本がエールとなればと思う。
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