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こどもたちが挑戦!オンラインミュージカル🎶の全容

三重四日市リトル・ミュージカルです。

2020年9月5日、2年ぶりに「こどもたちが創り・歌い・踊り・演じる」舞台公演が中止になり、立ち上がった企画「オンラインミュージカル公演やってみた!」を行うことになったその全容をここに綴ります。

あ、最初に断っておきます。公演という名称を使っているのは、名前は私たちの気持ちがのせられて、のことです。


1幕:公演を諦めない道を探る

オンラインでのワークショップをはじめた。チームで肩を寄せ合い話し合ったり、みんなの体を使って一つの形を作ったり、一緒に叫んだり歌ったり、そんな遊びも表現もできない。しかしオンラインでの活動(Zoomでの活動)には別のいいところがある。

(1)Zoomの仕様上一人一人が表示される大きさが同じであり、一人ずつしか話せない、その制約がフラットな関係を構築し、ゆっくり一人一人の声に耳を傾けられる。

(2)お家にいて繋ぐというオンラインの環境は居心地がよく好きなものに囲まれた部屋だからこそ現れる個性が見えてくる。

(3)ワークショップが終わってからもすぐにお家にあるもので創ってみることができる。

これは四日市リトル・ミュージカルの大人の代表であるガッキーが、3月の休校中措置に立ち上げたオンライン学びの旅 Yoka-Yoka(https://www.yoka-yokaonline.com/)に参画させていただいたご縁で、生きる力を育む親子のオンラインコミュニティを主宰されているCo-musubiの井上さんから教えていただいたこと。一人で考える時間、生み出す時間にフォーカスし、映像を作ってみたり、家のものから想像を膨らませて、みんなで共有する。自分の新たな興味に気づき、仲間の興味から世界を広げ、それも公演に繋げよう。きっと4月には活動再開できるだろう、9月は公演できるだろうとゆるく考えていたのです。

高校生たちには、公演で実現したいシーンがあった。リトル・ミュージカルでは、できることできないことに関係なく、持ち味やアイデアを活かすというベースがあるが、経験を積めば積むほど、様々な表現方法に興味が出てくるもの。
・キレキレダンス&アクションのような動きを取り入れたい
・掛け合いやハモりのある歌をしっかり歌いたい!
こうしてアクション部ギター&ハモり部(将来的にシンガーソングライター部)が立ち上がることに。休校が続く4月の中旬から、オンラインでその準備を始めることに。やりたいものを選べる精神を大切にするため部活動ということにした。

2幕:オンラインでの安心安全な場づくり

STAY HOME期間のゴールデンウィーク中には、渋谷・板橋リトル・ミュージカルのイベントに参加させてもらって、渋谷・板橋の素敵な講師のみなさんとメンバーと一緒にZoomを使ってとにかく遊ぶ!心臓がドキドキ・バクバクする経験をたくさんさせてもらった。

心がほぐれ、オンラインでの話し方も自然と習得した小学生・中学生たち。遊びの中から個性がおのずと伝わる。雑談がところどころに生まれる空気。話したい!やりたい!気持ちが上昇している。この関係が築ければ、オンラインでもみんなで創作ができそうだ。

3幕:オンライン公演決定!まさかの前倒し!

政府から5月中の緊急事態宣言の延長。教育委員会や学校から夏休みの短縮が発表。その状況から9月の公演は中止とした。せっかく1年ぶりに集まったメンバーたち。創作ミュージカルを舞台で行うことも自分らしい人生を歩くための一つのツール。オンラインでもきっと面白いことができるはず。よし、オンライン公演やってみよう、と決まった矢先のこと・・・。

2週間で作品をつくり、1週間で練習。本番は5/31(日)今その場で生まれることにこだわるため、生配信という計画だった。

しかし、感染者0人が続く三重県。創作を始めた次の日、翌週の5/18(月)から急遽学校が始まることになったメンバーたち。同時に、Youtubeでの13歳以下のみのライブストリーミング配信は規約上NGと判明。結果、ターゲットを2週間前倒しし、3日で物語を作る。前日に一発どり収録。5/17(日)にYoutubeでプレミア配信(時刻になるとスタート)することに。さて、できるのか!?

「やりたいことじゃないかもしれない」関わり方の多様性

オンライン公演の前に気づいた子がいた。話すと、夜な夜な絵を描いていると。絵に向かっている彼女が、演技をしたり歌ったり踊ったりでの表現を自分は求めていないのかもしれない、でもみんなに申し訳ない、ぼんやり気づき始めたそんな想いに苦しんでいた。この活動に没頭する期間から個性や進むべき道が見つかるなら、離れることが一つの答えになる。「自分の道を行けばいい。離れることも人生にとって大切なこと。でも、その絵をみんなの創作に使いたい」と話すと「それを聞いて安心しました」と制作していた絵を送ってくれた。彼女の絵をみてのストーリー創作。そしてタイトルビジュアルも彼女が書いてくれた。彼女の絵も作品の一部になった。

4幕:当たり前を疑うことから生まれた「Goom」

それ、面白いじゃん、を探り合う。あっという間にすぎる時間。こどもたちだけで白熱する時間。

カメラを目の前にすると擬人化してモノが話し出したら?
架空の存在が会議をしているとしたら?
繋がっていないような繋がっているようなこの感覚。現実の動きが伝わったとしたら?
その間に流れ出す、雑談、今はまっているものの話。こどもたちの今が見えてきた。

オンラインで繋ぎながら、外に出て伸びをしようとみんなで伸びをした時のこと。多くのこどもたちが、外にいる人の視線を気にしていた。こんなにも周りの視線を気にしているのかと驚いた。自分を解放して表現できる場所はきっと大切だ。

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生まれたのは「Goom」。パソコンやスマホから飛び出す未知の現象に襲われる。パソコンからパンチのようなものをくらうような?殴られる訳ではないのだが。よけられる人もいるみたい。もしや、オンラインのアクション?そもそも本当にあるの? どうやってくいとめるの?

今度は、その現象は現象から遡る。どこから生まれたのか?「Goom」は、未来の神様と過去の神様のいざこざから生まれる

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未来は過去をどう捉えている?過去は未来をどう捉える?なかなか深い問いだ。そして「Goom」とどう向き合うかを想像することで、今のみんなの思いが現れていく。

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小学生高学年チーム:Goomを倒しにいく、でもそこで仲間との考えの違いが浮き彫りになる。

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小学生低学年チーム:Goom撃退部に紛れ込んだり、Goomにあっても避けてしかも変顔で対抗!?

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中学生チーム:見えない存在が言葉を持つとしたら?過去や未来という大きな枠で対立するとしたら?どうやってこのGoomを阻止する?それぞれのアイデアが光る。

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高校生チーム:そんなことより現実問題!課題・恋つづ・課題・恋つづ(笑)高校生には実質時間が全くなかったーーー!

「Goom」現象は全く何も解決していないながら、最後みんなが共通に思っている「会いたいね」が響く。♫笑い声がハモる瞬間が好きなんだ。高校生が自作した曲でほろっとくる締めくくりになった。

5幕:見つかった言葉と見つからない結末

「会いたいね」という今の一番の思いがこだまする。しかし、「Goom」現象は未解決のまま流れたエンドロール。そんな見つからない結末も含めて、「今」にフォーカスしたものとなったが、これにはまだ続きが必要だ。

●一緒に(同時に)歌えないけど 歌もつながり、みんなでひとつのうたをうたえて、感動した(中2)
●(オンラインでは、演じている空間は一人なので)相手と会話できなくて、どうしよう?と相談できなくて、一人でやっている感覚で不安が多かったが、途中から楽しくなってきて、見ている時は、楽しいという気持ちしかなかった、終わってみるとよかったな、と思った。(小6)
●最初はどうなることかと心配だったけど、いざやってみると楽しくて、昨日の夜は、楽しみすぎて眠れなかった(小5)
●直接会えないことで、いつもやれていることができないから、どうなるかなと心配だった。それから、チケットを買った人だけに見てもらうっていういつものスタイルが、youtube配信で全世界の人が見れると思うと緊張するし、それがまた面白いとも思った。(中1)

直接会えないという制約を、楽しさに変える力。制約があるからこそ面白がれることって大切だよね。

●今回は、初めての挑戦、ということで、ちゃんとできてるか不安だったけど、みたらちゃんとできてて安心しました(小5)
●とにかく、「オンライン公演」をみんなで、できたことがすごい。(中2)
●小中高生がであつまってやるって、どの時代もなかなかなかできないことなので、いい経験だなと思う。オンラインでも、集まってひとつのことをする、っていうのは、よかった。(高1)
●いつもより練習期間がめっちゃ少ないしつながってできていて、かけあいもできてすごくよかったな。オンラインで初めてだけど、表情や、喧嘩シーンのピリピリ感も伝わってきたのがとてもよかった(高1)


初めての挑戦を讃える気持ち。舞台との違いを面白さとして味わい、初めての挑戦をしたと心に刻んでいたこと素晴らしかった。こどもたちは、舞台だから、オンラインだからとあまり差がないように感じられ、大人の方が四苦八苦しているようにも思う。素直に環境に順応し、それを楽しんでいた。

まとめ①「個人の創作」にフォーカスできたオンライン

3日でストーリーを作り、収録・本番の濃密な5日間。その間にも2人のメンバーが劇中の曲を作った。「こんな曲を作りました、本番でもこんな感じで歌います」という宣言つき(笑)の動画。それを聞いた他のメンバーも「実は歌詞を書き溜めている」と言う。作曲も始めたようだ。ワークショップが終わってもオンラインで繋がれるのはこういうやり取りができることだ。
曲を作っているメンバーがいると聞いて、ペープサートを用意するメンバー。刺激を受けたり、刺激をもらって何かできないか?は、仲間がいてこそ。自分だけではやらなかっただろう挑戦、また自分だけでは完成できなかったことに挑戦することが協働する醍醐味。いつもの稽古場は、家に帰るとリセットされることも多いけど、家から繋がっていた彼女たち。Zoomから退出したら、すぐに取り掛かれる距離感もよかったのかもしれない。

まとめ②「小作品」でトライ&エラーできるオンライン

舞台公演は会場や舞台装置は小規模でも大掛かりになってしまう。そのため続編の構築もやり直しもなかなか難しい。充足感と疲労感が半端ないお祭り。だからその後は余韻を味わいたい。反省会はするも、作り上げた大作の作品をもう一度討論したり、考えることはやってこなかった。今回のオンラインでの取り組みは、次に取りかかれる余韻がある。日常との地続き感もある。期間も短くほやほやで配信したという状況もあるが、細やかにまとめて、またやり直すといったことが小刻みにできるは、デザイン思考的な考えからいっても、良いのではないだろうか。
未解決な不思議な現象Goomに対して、どうだったんだろう?改めて問いかけると小学生・中1生たちの反応は・・・。

Goomはなんだったのか?

●人間に協力することは大事と教えるために生まれた
●友達とか仲間が大切と思わせるもの
●いろんな大切なことに気づかせてくれる。体が進化したり、いろんな体の形や大きさに変わったりするのでは
●みんなで協力する、息を合わせることを知ってもらうため。逆に友情を壊すことで気づかせる。
●Goodのぐー。もともとはいいものだったけど、危険なものにも感じられる
●Goomがなかったら、本物の友情に気づかない。ある意味、必要なもの。必要悪。

一人として同じ意見はなく、そうそうと同調もありながら、一人一人の洞察が出てきた。

Goomとこのあとどう付き合っていく?どんな結末が待っている?

●一人で対処できる方法があるかもしれないから、研究を続けていく
●Goomを制御できるようになり、コントロールできる。Goomが出てきてほしいとなったら出てきて、出てこないでとなれば出てこない。
 →喧嘩したら、出してもらう →逆手にとって使えるようになる
●未解決現象ラボ(物語の登場人物たちのグループ)のへっぽこたちもプロになってるかも。とにかくこの話を伸ばしたい。
●小学生チームは4人で戦うってことになり、戦うんだけど、失敗する。そしてGoomが今度はパラパラを踊り出して、キレのいいパラパラで戦う!
●研究が進んで、Goomが見えるようになってきて、うまく付き合っていける
●Goomは話し合いすれば、よくなってくれる。仲良くなれる存在。
●このままでいい。Goomがいつくるかもわからない状態でいい。その方が役に立つ。このまま。コントロールはできないまま。

同じストーリーを演じた体験が根付いており、話が深まる。役の立場、作品創作の立場、それぞれの視点に置き換えての発言。続きに迎える感覚。それぞれの希望や意義が生まれたように思う。

まとめ③ オンラインでもオフラインでも大切なこと

学校の友達には言えないモヤモヤ、親には話せない素直な気持ち、挑戦したいことを吐き出せる場であるだろう。家の外で伸びをするだけで周囲の視線を感じるこどもたちだ、自由に発言し表現できる場所としての機能果たせしているかもしれない。

でもきっと、まだ"表層的"な彼らの思いやアイデアと向き合っている。彼らの奥底にある思いから何が生まれるだろうか?深く没頭して取り組むこと、議論すること、表現すること、創造することから生まれてきそうだ。

「どんなこどもたちも持ち味を生かしながら創り演じる舞台作品とは何か?」というのは、私にとっての大きな問いだ。世界に一つしかない作品であるというものすごい価値はすでにある。どんな世界に一つしかない作品なのか。新しく独創的でありながら、普遍的で示唆に飛んだもの?それともプロには出せない味のあるもの?こどもたちが本当にやってみたいことにトライすれば良い?形づくることを目指す中に、自分の視野を広げたり視点を変えるきっかけに出会い、そこから自分はどこに注目するのかを知る。そうして自分らしい視点の持ち方に出会っていくのだろう。それが強烈な個性となる。改めて、今度の公演はそういう眼差しを持って始めたい。オンラインというこどもたちの生活を根ざす場所である自宅と地続きの場所で創作したことが、これからの彼女たちとの創作に力をくれた。

最後に!劇場公演を諦めない!

9月の公演のキャンセルのため、舞台さんへご連絡したとき、活動の制限を受け大変な状況ながら、快くキャンセルを受け入れてくださった。何かできることはないかとこの公演では、参加費の経費を差し引いた金額と視聴いただいた方からの寄付を合わせて、公演を支えてくださっている株式会社アトリエ様へ総額56,514円の寄付を申し出たところ、リトル・ミュージカルの資金としてくださいと丁寧にお断りされてしまった。それで、照明スタッフの方が個人的に立ち上げられた「三重県の文化芸術を守るためのアーティスト・文化事業及び事業従事者の支援を求める会」の活動の資金として使って欲しい旨を申し出たがこちらも丁重に断られた。そのため集まった支援のための資金は、リトル・ミュージカル基金としてこの費用はプールし、スタッフのみなさんと相談しながら然るべき使い方をしたいと思います。心を寄せてくださったみなさん、本当にありがとうございます。




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