見出し画像

『「型」で学ぶ はじめての俳句ドリル』:初心者が俳句の奥深さや作句のきっかけに触れられる本

2人の俳人、岸本尚毅さんと夏井いつきさんによる、初心者向けの俳句入門書。

俳句を作りたい人向けに、鑑賞の際の目の付け所や、作句のポイントを解く。2人の会話やコラムを読みながら学べて、すぐに取り掛かれそうなドリルも用意されている。

本のタイトルがいまいちな気もするが、中身は良書。

俳句の鑑賞と創作について興味深かった話

印象に残った部分のメモ(直接引用ではなく要約)。

「書斎派と吟行派」:前者は想像も含めて自分で考えて俳句を詠む。後者はいろいろなところに出かけていって観察して俳句を詠む。(p. 43)
「音俳句」「ムービー俳句」:音を聞いて/映像を視聴して俳句を作る。子どもたちは吟行だと遊んで終わってしまうが、教室で音を聞きながら/映像を視聴しながらなら発想を飛ばせる。(p. 55~)
「写生」:絵のデッサンのように、実際に見たものを写し取って俳句に詠むこと。(p. 57)
「一句ササイズ」:4つのステップで俳句が作れる。(1) 1つの言葉を見つける、(2) その言葉と助詞を組み合わせるなどして五音を作る、(3) その五音に七音を組み合わせて十二音を作る、(4) 作ったフレーズに合う五音の季語を句の最後に入れる。(p. 58~)
素人は「俳句には裏の意味があってそれを読み取らなくてはいけないのではないか」と思いがちだが、子規以降の俳句の歴史では、「裏に意味がある俳句」から「ただ見たままを述べる俳句」へと切り替えが起こった。俳句には、メッセージ性が強いものと、淡々と描写しているように見えるものと、2種類ある、と考えてしまうのも手ではある。(p. 69~)
「ピンポイント理論」:「行く秋」などは幅広く使える代わりに、すごく「当たる」こともない、「配当の低い」言葉(季語)。「たんぽぽ」の方が具体的な言葉で大当たりする可能性があり、「倍率が高い」。(p. 96など)
句を脳内で映像化するのが大事。「盲導犬」の情けない姿が詠まれていれば、句が「接写」になるので、「たんぽぽ」を組み合わせるのがふさわしい。「葉桜」を入れてしまうと、葉桜を背景に犬が存在することになるので、犬の姿が小さくなってしまう。(p. 97)
「付かず離れず」:因果関係が丸見えの言葉を組み合わせるのも、逆にあまりに関係なさ過ぎてイメージが浮かばないのも駄目。ほどよい距離の言葉を組み合わせる。(p. 100~)
「捨て石」効果:一見、言わずもがなの無駄に思える言葉も、実は句の収まりをよくしたり余韻を残したりする働きがある。例えば、「白牡丹といふといへども紅ほのか」(虚子)の「いふといへども」がなければ、句の「滞空時間」の長さが消えて魅力がなくなってしまう。(p. 110~)
中七に生の感情語を入れる:「うれしい」「悲しい」などの感情語は俳句に入れるなと言われるが、言わないとどんな感情かが伝わらない場合などは使ってよいし、使った秀作もある。例:ふうれしつまづき入りし露の木戸(高田つや女)。(p. 141~)
題詠は通常一つの題だが、二つにしてみると作りやすい。例:「天の川」の一つではなく、「天の川」と「島」の二つ。(p. 156~)

「ドリル」で俳句に挑戦

本書の「ドリル」をいくつかやってみたが、もっとじっくり考えないと、というところ・・・。難しいが、初心者でもやってみようかなという気になるドリルになっている。

【ドリル9】体言止めは、安定感のある形(p. 106)
やってみよう/「踊髪おどりがみよべのまゝなる〇〇〇〇〇」
踊髪よべのまゝなる空きっ腹
※元の句は「踊髪よべのまゝなる選炭婦」(房山)
【ドリル10】下五の「かな」止め 三音の季語(p. 113)
やってみよう/「ふるさとの色町いろまちとほる〇〇〇かな」
→ ふるさとの色町とほる牡丹かな
※元の句は「ふるさとの色町とほる墓参ぼさんかな」(皆吉爽雨みなよしそうう
※本書に「椿かな」「桜かな」の例が出ていたので、思い付いたのもその系統(植物、花)
【ドリル12】「や」は便利。中七の「や」はバランスを取りやすい形(p. 122)
やってみよう/「石段に立ちて〇〇〇や京の春」
→ 石段に立ちて団子や京の春
※元の句は「石段に立ちて眺めや京の春」(野村泊月のむらはくげつ
※「団子」は本書で挙がっていた。春→花見→団子、という安易な発想
【ドリル18】一つの題より、二つの題のほうが作りやすい(p. 156)
やってみよう/「島」と「天の川」で一句
置きざれにされし島に天の川/天の川置き去りにされ星を食べ
※元の句は「銀漢ぎんかんや島にもありし峠茶屋」(田畑比古たばたひこ
※銀漢=天の川
※何が言いたいかよくわからず、きっと情景も浮かばない・・・。このドリルはもっといろいろ考えてみたい
【ドリル19】自由に絵を思い浮かべて、その映像を写生する(p. 159)
やってみよう/「こがらし」と「鏡」で一句
木枯らしが逃げて鏡に跡もなく
※元の句は「凩の夜の鏡を怖れけり」(禅丈)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?