『セックスロボットと人造肉 テクノロジーは性、食、生、死を“征服"できるか』

イギリスのジャーナリストによる本。「セックスの未来」「食の未来」「生殖の未来」「死の未来」の4章から成る。「セックス」と「死」の章だけ読んだ。

根気強い取材のルポが興味深い。安楽死が合法化されているオランダ、ベルギー、ルクセンブルクでは、身体的苦痛だけでなく精神的苦痛のある人、すなわちアルコール依存症やうつ病の人(身体的苦痛も伴いそうではあるが)も合法的に死の幇助を受けられる(p. 337)ということは知らなかった。苦しい思いをして自死するくらいなら少しでも楽に死ねるようにしましょう、という制度なのか・・・。

セックスロボット、人工培養肉、人工子宮、安楽死のための装置が「開発」されるとき、人間性に対するどのような倫理的な問題や根本的な課題が突きつけられるのか?ということを扱っている。

著者の主張は、人間の欲望を技術で「解決」したように見せかけてごまかすのではなく、その欲望自体をどうするのかということに向き合うべきだ、ということのようだ。

どれも究極的には、「他者に左右されずに自分の思うとおりにしたい」という欲望を利用したビジネスなのだろうか。他者は自分の思いどおりにはならないから面倒だし、他者と関わっていると自分にも対峙しなければならなくなるから厄介だが、だからこそ人付き合い、人間関係は面白いのに。各自の言いなりになる道具のみに頼って生活するようになると、人間同士のぶつかり合いから新しいものが生まれなくなり、多様性が失われ、人類が滅んだりしないのだろうか。


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